メンタルヘルス不調による休職から復職の流れ

産業保健業務に従事していると、メンタルヘルス不調者を対応する場面は必ず訪れます。質・量ともに高負荷な業務の増加やグローバル化、IT化など急激な変化が一因です。また、人間関係で悩む方も多いです。
私たちは解決が容易ではない悩みに取り囲まれています。さまざまなことが重なりメンタルヘルス不調となり、休職を余儀なくされることは誰にでもあり得ることです。
そして、事業者は安全配慮義務というものが課せられているため、従業員の健康や安全を考えることは非常に重要です。
今回は産業保健に携わる方々にとって避けて通れない休職の概要を解説します。

メンタルヘルス不調者が出たら?

精神的な体調不良を自覚した従業員は、上司や産業医、保健師、健康支援担当者などに相談することが多いですが、相談なく急に診断書を提出して休職される方もおられます。
私も保健師として企業で働いていますが、メンタルヘルス不調者の面談を対応することがあります。傾聴していく中で、本人が医療機関への受診を迷っていれば後押しをしたり、休職についても必要があれば案内したりします。面談の内容については、緊急度が高い場合や休職しそうな状態であれば、上司や健康支援担当者などに共有して良いかどうか本人に了承を得てから共有し、今後の対応を考えます。(生命の危険がある場合はその限りではありません)

メンタルヘルス不調者に気づく方法はいくつかあります。

・ストレスチェックで高ストレス者と判定された方
・長時間労働者
・上司や同僚から見て様子が変化している
例)明らかに落ち込んでいる、遅刻や欠勤が増える、ミスが増える、身なりが乱れる(メイクをしている人がしなくなった、清潔感がなくなったなど)

上記の方法で気づく、不調者本人からの相談が比較的早かった場合など早期に対応すれば、周囲がサポートをして休職せずに回復することもあります。早期に対応しても体調悪化する場合や、対応が間に合わず休職を選択することもあります。

休職の一般的な申請方法

・医療機関へ受診勧奨する
・受診してもらい、休職について記載のある診断書を取得し提出する
・会社の就業規則や休職中の対応方法などの必要事項を確認し休職に入る

休職中の対応は?

休職は法律上で定められているわけではなく、各企業の就業規則に基づいて行われている従業員に対する支援になります。どの程度の期間、休職できるのか企業によってまったく違い、無限に休職できるわけではないため就業規則の確認が必要です。
休職中の従業員に対する支援も企業によって非常に差が大きいので、ここでは私が関わってきた中での対応を紹介します。

休職をする理由は従業員によってさまざまですが、多くは社内での困りごとで休職される方が多いです。そのため保健師がいる場合、体調確認や問い合わせの窓口は保健師にして、復職準備に本格的に入るまでの連絡は必要最低限にとどめます。連絡をこまめにするような状況だと、結局仕事から離れられなくなってしまうため距離感をもって対応しましょう。例えば診断書が切れるタイミングや月1回体調確認をするなどです。連絡方法は電話やメールなどが多いです。

体調確認の具体例

・通院状況、受診時の様子や医師からの説明内容
・精神的な症状の有無
・食事や睡眠がとれているか
・日常生活がどの程度送れているか
・不安や悩みの傾聴
・(明らかな体調回復がみられて本人や主治医もそろそろ復職を考える段階に入れば)復職に向けたスケジュールや必要書類などの案内 など

また、休職が長期間になってくると、経済的な問題や不安が出てきます。会社が加入している健康保険組合から傷病手当金の支給をしてもらえる制度もあるため、適切に案内、対応する必要があります。

復職に向けて

休職者の体調がある程度回復し復職の意思が出てきたからといってすぐに復職にはなりません。本当に回復してきているのか、復職して良い状態なのかを第三者である主治医にまずは確認してもらわなければなりません。無事に診断書を取得できてから本格的に復職に向けて動きます。
診断書はあくまで医学的観点での意見となるため、診断書を取得後は産業医面談が必要です。産業医は体調確認の他に就労可能かどうか、「職場において以前と同程度の職務を遂行できるか」を判断します。そのため、主治医の意見と産業医の意見が相違することがあります。

復職判断のポイント

(1)仕事に対する意欲があるか:主体的に仕事に取り組める状況になっていないと、職務を全うすることが難しいため、復職は難しいと判断されることもあります。
(2)生活リズムが整っているか:例えば2週間程度どのように1日を過ごしているか記録してもらい可視化することで、従業員本人も会社側も把握しやすくなります。夜はしっかり寝て朝は通勤に間に合う時間に起きているかは非常に重要です。
(3)出勤できるかどうか:日常生活は問題なく送れていても、休職中は気力も体力も落ちていることが多く、いざ出勤するとなると難しかったということもあります。
(4)再発しないか:メンタルヘルス不調は再発リスクが高いといわれています。試し出勤やリワークの制度を推奨している会社もあります。今回なぜ休職しなければならない状態になったのか、従業員本人にふり返ってもらい、対策を考えてもらうことは大切です。

産業医面談にて復職可能と判断された後はその結果をふまえて、いつ、どこの部署に復職するかなどを人事や上司、本人と打ち合わせをして決定することが多いです。最終的な判断は主治医や産業医ではなく企業となります。

今回は休職から復職までを簡単に流れで解説しました。保健師や健康管理担当者は、企業と従業員をつなぐ架け橋のような存在になることが多いのではないでしょうか。従業員が安心して休職し、また仕事に復帰できるようになるために、メンタル面のサポートを最大限することが大切な役割だと日々感じます。
企業のメンタルヘルス防止対策は安全配慮義務を果たすために非常に重要なので、しっかり体制を整えていきましょう。

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保健師 大島かよ

投稿者プロフィール

病棟・クリニックでの患者さんとの関わりの中で、「もっと早く治療開始できていれば」、「病気になる前に何かできないか?」と考えるように。その思いから次第に予防に興味を持ち、「働く世代」に対するアプローチがしたい!と、産業保健の世界へ飛び込みました。
現在産業保健師として数社訪問、健保で特定保健指導を担うフリーランスの保健師です。
自分の経験なども盛り込みながら、産業保健に関連する情報を発信していきます。
【取材、記事協力依頼、リリース送付などはこちらからお願いします】

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