近年、職場でのさまざまなハラスメントが問題とされており、労働施策総合推進法(パワハラ防止対策義務化)が改正されたことなどで、企業がハラスメントを防止するための措置を取ることが義務付けられました。(2021年6月1日に大企業、2023年4月1日に中小企業に対して義務化)
また、12月は「職場のハラスメント撲滅月間」でもあります。
そこで今回は、職場におけるさまざまなハラスメントについて、既に有名なハラスメントから、聞き馴染みのないハラスメントまで幅広く解説します。
職場のハラスメント撲滅月間
厚生労働省は12月を「職場のハラスメント撲滅月間」と定めました。
ハラスメントのない職場づくりをするために様々な広報・啓発活動を実施しています。
2023年12月7日には<職場におけるハラスメント対策シンポジウム>を開催し、ハラスメント対策のポイントを講演します。
また、中小企業が取組むハラスメント対策の実務について有識者がパネルディスカッションを行います。
出所:厚生労働省「12月は「職場のハラスメント撲滅月間」です」
そもそもハラスメント(Harassment)とは、相手の意に反する行為によって不快にさせたり、相手の人間としての尊厳を傷つけたり、脅したりすることで「いじめ」や「嫌がらせ」と同じ意味をもつ行為です。
ハラスメントを受けることにより、人格や尊厳を傷つけられ、意欲や自身をなくします。
加えて、心の健康の悪化にもつながり、休職や退職に追い込まれたり、生きる希望を失ったりすることもあります。
職場におけるハラスメント
3大ハラスメント
3大ハラスメントは耳にしたことがある人も多いのではないでしょうか。
・ パワーハラスメント(パワハラ)
・ セクシュアルハラスメント(セクハラ)
・ マタニティハラスメント(マタハラ)
この3つです。
厚生労働省が2020年に調査した結果によると、過去3年間にパワハラを受けた割合は全体の31.4%。セクハラは10.2%、マタハラは26.3%と多くの方に経験があるハラスメントとなっています。
新しく生まれたハラスメント
上記の3大ハラスメントとは違い、聞きなじみのないハラスメントや時代により新しく生まれたハラスメントもあります。
● 不機嫌ハラスメント(フキハラ)
口調や態度で自分が不機嫌な気分であると示し、相手に不快感や威圧感などを与えること。
● スメルハラスメント(スメハラ)
自らが放つ臭いによって、周囲の人々に不快感を与えること。
● ハラスメントハラスメント(ハラハラ)
同僚や上司の言動に、不快感・嫌悪感を覚えた際に、過剰な反応をして「ハラスメントだ」と主張したり、ハラスメントの概念を逆手にとって嫌がらせを仕掛けたりすること。
● 時短ハラスメント(ジタハラ)
残業の削減に関する具体的な方策がないまま、会社の上層部が社員に対して「残業をせずに早く帰れ」と定時退社を強要すること。
● ノイズハラスメント(ノイハラ)
大声での会話や強くキーボードを叩いて大きな音を出すなど、「音」に関する迷惑行為のこと。
● コモンセンスハラスメント(コモハラ)
コモンセンス=常識のことで、主に自分や会社の常識が世の中の常識と勘違いして、それを部下や同僚に押し付けること。
● イメージ先行ハラスメント(イメハラ)
外見や第一印象で人のイメージを固定化させてしまうこと。
この他、カスタマーハラスメント(カスハラ)・モラルハラスメント(モラハラ)などもあり、カスハラはニュースで取り上げられることもあるので、徐々に認知されてきているように思います。
ハラスメントはお互いの認識のズレから生じることもありますが、明確な防止規定がないことから、何がハラスメントに当たるのかが分かりにくくなっています。
もしかしたら、あなたが知らない間にハラスメントをしてしまう可能性も……。
ハラスメントの多い職場の特徴
ハラスメントが多い、ハラスメント発生の可能性が高い職場の特徴として、以下があげられます。
■ 上司と部下のコミュニケーションが少ない、またはない
■ ハラスメント防止規定が制定されていない
■ 失敗が許されない職場の雰囲気
■ 残業が多い
■ 休暇を取りづらい
ハラスメントが起きる理由には、個人の意識だけでなく組織風土や職場環境にあることが多いです。
達成不可能な高い目標設定や、責任者に実質的な権限を与えすぎることはストレスを感じやすくなってしまいます。
また、コニュニケーション不足や閉鎖的な環境ではお互いを尊重する気持ちがなくなり、ハラスメントが起きやすくなってしまう可能性もあります。
職場でのハラスメントを起こさないためにも、企業全体でハラスメントを許さない職場づくり、研修や啓発活動、周囲との円滑なコミュニケーションを図ることが必要です。
ハラスメントをしないためにも個々人の知識や意識を高め、お互いを尊重し合い、皆でハラスメントのない職場にしていくことを心がけましょう。