政府主導の働き方改革がニュースで頻繁に取り上げられ、
以前よりも世の中の働き方への意識が変化してきたように感じられる中、
飲食業界にも変化が見え始めています。
「聖域」だった飲食業界
これまで大手企業を除き、特に小規模事業場においては、
ある意味では「聖域」として、暗黙の了解がまかり通ってきた飲食業界にも、
厳しい目が向けられるようになってきました。
槍玉に挙がった大手企業では営業時間の見直しなどがなされ、
就業時間短縮の動きも本格化してきた今だからこそ、
小規模事業場においても、就業規則や労使協定について改めて確認すべき時期かもしれません。
鹿児島県内飲食店の6割が安衛法違反
つい先日、鹿児島労働局により、県内飲食店に対して「労働条件に関する自主点検」が実施され、
結果が公表されました。
その結果、対象218事業場のうち、回答した156事業場の実に6割が
労働安全衛生法などに関する何らかの違反をしていることが発覚しました。
そのうち、就業規則に関する違反は2割を超え、
「作成して労働基準監督署に届け出ているが、内容が実情に合っていない」
「作成しているが、労働基準監督署に届け出ていない」
「そもそも作成していない」
といった事例が多くありました。
また、俗に「サブロク協定」と呼ばれる労使協定についても、3割は、
「締結していない」または「締結していても届け出ていない」と回答。
残業のある事業場においても3割が同様の回答をしており、
残業代や過重労働についての問題も合わせて浮き彫りになりました。
就業規則や労使協定を作成し、届け出ている事業場においても
2割強が「周知していない」もしくは「周知の方法が不適切」であったようです。
労基署への届け出を確実に!
すでにご存知の方が大半かとは思いますが、就業規則や必要に応じて締結する労使協定は
作成の上、労働基準監督署への届け出、そして、従業員に対する周知が義務付けられています。
残念ながら、せっかく時間を割いて就業規則や労使協定を作成・締結しても、
届け出を怠ると労働安全衛生法違反と判断されてしまいます。
また、一度作成するとそのまま放置してしまいがちなのが「就業規則」です。
実情に沿ったかたちへ定期的に見直していくことが必要でしょう。
「自主点検」で「自己防衛」を
上記の鹿児島県内の事業場については、労働局の各管内監督署によって
労基法等の説明会を実施することが決定し、自主点検をしなかった事業場や
説明会に参加しない事業場に対しては監督指導を実施するなど、
少しずつですが本格的なテコ入れが始まる見込みです。
罰則や罰金など実刑がないとしても、特に小規模店舗の事業者にとっては、
貴重な時間や人員を割かなければならず、厳しい対応が求められるといえるでしょう。
今回は鹿児島県で、あくまでも「自主点検」という名目での実施でしたが、
これまで大手飲食店のみに矛先が向けられていた飲食業界にも、
少しずつ「働き方改革」が浸透していくようです。
今後ますます人材の確保が難しくなると予想され、
いかに働きやすい職場環境を作っていけるか?
従業員の離職を防ぐことができるか?
が重要となる飲食業界では、これから大きな転機を迎えそうです。
参考:働き方・休み方改善ポータルサイト http://work-holiday.mhlw.go.jp/