仕事と介護の両立支援制度ご存知ですか?
- 2020/2/10
- 働き方改革
日本における人口構造の問題として、超少子高齢化が存在することはいまさら改めてお伝えするまでもないことですね。
2020年以降、「団塊の世代」が順次75歳以上の後期高齢者となり、2025年には75歳以上の人口比率が18%を超える試算が総務省より発表されています。
日本の国民皆保険制度の存続が危ぶまれていますが、合わせて今後顕在化すると予想されるのが「介護」の問題です。
日本の介護と仕事の両立の現状
現在、育児介護休業法など諸制度の整備や国の支援策の充実などが進み、平成18年に約144,800人(うち男性比率17.7%)存在した介護を理由とした離職者数が平成29年には約99,100人(うち男性比率24.2%)と、約45,700人減少していますが、男性の比率が6.5%増加しているのも特徴的です。
また、離職者のうち40~60歳代が85%占めており、組織内でも経験や知識が豊富で管理職として主戦力となり得るような労働力が介護を理由に離職してしまっていることになります。
一方、制度等を利用して介護を行いながら働き続ける労働者数は合計2,999,200人・
内訳としては男性が42%、女性が58%で、構成年齢層のピークである55~59歳の21%を筆頭に、離職者と同様に40~60歳代が84%を占めています。
2025年頃には「団塊の世代」と呼ばれる人口過密世代が後期高齢者となり、要介護者の総数が一気に増える蓋然性が高くなります。
また、同時に労働力のボリュームゾーンである「団塊ジュニア」世代は介護者となり得る年齢層となり、新規の労働力の確保が難しい現状に重ねて、既存労働力の中でも経験や知識も主力ということのできる世代が介護のために離職してしまい、貴重な労働力を急に失いかねないリスクが高まっています。
介護に関する諸制度と支援策
以下では介護に関する諸制度、支援策を見ていきます。
法制度
平成7年に努力義務として介護休業が法に定められてから、段階的に拡充をしつつ法改正が続き、平成29年1月1日改正施行では以下の内容が法に規定されています。
1. 介護休業:介護の始期、終期、その間にそれぞれ対応するという観点から、対象家族1人につき通算93日まで3回を上限として、介護休業の分割取得を可能とする
2. 介護休暇:年5日を半日(所定労働時間の1/2)単位の取得を可能とする
※令和3年1月1日施行改正法にて、中抜けなしの時間単位取得が可能になる
3. 介護のための所定外労働の免除:介護終了までの期間について何回でも請求(取得)可能(1回の取得単位は1か月以上1年以内)
4. 介護のための所定労働時間の短縮措置等(選択的措置義務):介護休業とは別に、利用開始から3年間で2回の利用が可能
事業主は以下のうちいずれかの措置を選択して講じなければならない
① 所定労働時間の短縮措置(短時間勤務)
② フレックスタイム制度
③ 始業・就業自国の繰り上げ・繰り下げ
④ 労働者が利用する介護サービス費用の助成その他これに準じる制度
5. 介護休業給付の給付率の引上げ:67%に引き上げ(平成28年8月1日施行)
6. 介護休業等を取得したこと等を理由として解雇その他の不利益取扱いをすることを禁止
7. 上司・同僚等からの介護休業等に関するハラスメントの防止措置を講ずることの義務づけ
※合わせて、介護休業等の対象家族の範囲の拡大(省令)と「常時介護を必要とする状態」の見直し(通達)が行われています。
支援策
介護離職ゼロの実現のため、「介護支援プラン」を策定し、プランに基づき労働者の円滑な介護休業の取得・復帰に取り組んだ中小企業事業主、または仕事と介護の両立に資する制度を導入し、利用者が生じた中小企業事業主に助成金が支給されます。
介護休業:取得時および復帰時28.5万円(36万円※別途要件充たす場合)
※1事業主当たり1年度5人まで
① 休業取得時:介護支援プランを策定し、プランに基づき対象労働者に合計5日以上の介護休業を取得させた中小企業事業主に支給
② 職場復帰時:①の対象労働者を同プランに沿って原職等に復帰させ、3か月間継続雇用した中小企業事業主に支給
介護制度 28.5万円(36万円※別途要件を充たす場合)
※1事業主当たり1年度5人まで
以下に挙げる介護両立支援制度を導入し、介護支援プランに沿って利用(合計20日以上)をさせた中小企業事業主に支給
① 所定労働時間制限制度
② 時差出勤制度
③ 深夜業制限制度
④ 短時間勤務制度
⑤ 介護のための在宅勤務制度
⑥ 法を上回る介護休暇制度(有給活時間単位取得可)
⑦ 介護のためのフレックスタイム制度
⑧ 介護サービス費用補助制度
両立支援等助成金 再雇用者評価処遇コース(カムバック支援助成金)
妊娠、出産、育児、介護や配偶者の転勤(転居を伴う転職も含む)によりやむを得ず退職した者が、就業が可能になった時に復職でき、その経験や能力が適切に評価される再雇用制度を導入し、希望者を再雇用した事業主に対して助成金を支給(継続雇用6か月後・継続雇用1年後の2回に分け、半額ずつ支給)
再雇用者1人目:中小企業 38万円(48万円※)、中小企業以外 28.5万円(36万円※)
再雇用者2~5人目:中小企業 28.5万円(36万円※)、中小企業以外 19万円(24万円※)
※生産性要件を満たした場合は()内額支給
仕事と介護の両立支援への取り組みを!
介護休業に代表される諸制度は、「介護者自身がどっぷりと介護をするための休み」ではなく、あくまでも「仕事と介護を両立させる準備をしっかりするための休み」として休業制度は設けられており、介護による離職で貴重な労働力を損なうことのない様に整備されたものです。
介護休業と介護休暇のそれぞれの制度をうまく組み合わせて活用して、介護自体への備えと就業環境の整備を行うためには、制度自体をしっかりと理解していく必要があります。
それはなにも介護者となった労働者に限られた話ではなく、企業担当者は労働者に制度の案内を行い、両立支援を行なうことで離職を防ぐ必要がありますし、ハラスメント等を防ぐためにも直接制度を利用しない労働者にも制度がどういったものであるか、また介護とはどういったものか周知しなければなりません。
令和2年6月に施行される労働施策総合推進法によって義務化されるハラスメント防止措置への対応とともに、ハラスメントの要因となり得る「両立支援諸制度」の知識不足を補い認識をアップデートさせ、ひいては貴重な労働力確保のためにも自社に合った両立支援への取り組みを検討し始めましょう!
<参考>
・ 総務省「国勢調査(年齢不詳を按分した人口)」
・ 総務省「人口推計」
・ 国立社会保障・人口問題研究所「日本の将来推計人口」(平成29年推計)
・ 総務省「就業構造基本調査」(平成19年、平成29年)
・ 総務省「就業基本調査」(平成29年)
・ 厚生労働省「仕事介護の両立支援」