中小企業も対策が急務 ~パワハラ防止対策に向けた具体的スケジュール~
- 2019/12/17
- 産保新聞ニュース
2019年12月11日、厚生労働省主催で「職場のハラスメント対策シンポジウム」が開催されました。
厚生労働省では12月を「職場のハラスメント撲滅月間」と定めており、本シンポジウムは啓発活動一環として実施されたものです。
なかでも厚生労働省雇用環境・均等局雇用機会均等課ハラスメント防止対策室長の溝田景子氏から説明された、パワハラ防止法に関連した今後のスケジュールに注目が集まりました。
以下は、本シンポジウムにもとづき、パワハラ防止法のスケジュールを解説いたします。
主な改正規定の施行期日は?
労働施策総合推進法
被改正法律・項目 | 施行期日 |
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国、事業主および労働者の責務 | 公布後1年以内の政令で定める日 |
雇用管理上の措置義務の新設 | 公布後1年以内の政令で定める日 ※中小事業主は、公布後3年以内の政令で定める日(2022年3月31日)までは努力義務 |
事業主への相談等を理由とした不利益取扱いの禁止 | 公布後1年以内の政令で定める日 |
紛争解決援助・調停、措置義務等の履行確保(報告徴収、公表規定整備) | 公布後1年以内の政令で定める日 ※中小事業主は、措置義務については、 公布後3年以内の政令で定める日までは対象外 |
女性活躍推進法
被改正法律・項目 | 施行期日 |
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行動計画策定・情報公表義務の対象拡大(301人以上 → 101人以上) | 公布後3年以内の政令で定める日(2022年4月1日) |
その他(情報公表の強化・勧告違反の公表、プラチナえるぼし、報告徴収等の対象拡大) | 公布後1年以内の政令で定める日(2020年6月1日) |
男女雇用機会均等法
被改正法律・項目 | 施行期日 |
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・ 国、事業主および労働者の責務 ・ 事業主への相談等を理由とした不利益取扱いの禁止 ・ 他社措置義務の実施への協力(努力義務)※セクハラのみ ・ 調停の意見聴取の対象拡大 ・ 男女雇用機会均等推進者の選任努力義務 | 公布後1年以内の政令で定める日 |
育児介護休業法
被改正法律・項目 | 施行期日 |
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・ 国、事業主および労働者の責務 ・ 事業主への相談等を理由とした不利益取扱いの禁止 | 公布後1年以内の政令で定める日 |
これまでパワハラ防止法の施行期日は2020年6月1日、中小事業主は2022年3月31日までは努力義務という見込みでした。
しかし、本シンポジウムで公表されたなかには、企業規模による関係なく施行期日を揃えるものがいくつか存在します。
中小事業主は要注意!
特に、各改正項目に盛り込まれた「事業主への相談等を理由とした不利益取扱いの禁止」は2020年6月1日施行となる見込みで、これまで「うちは中小事業主だから2022年4月までは大丈夫」と余裕を持っていた事業主も「不利益取扱いの禁止」については、早々に就業規則やハラスメント防止規定等に盛り込む必要が出てきました。
あわせて、事業主及び労働者の責務の履行も求められることになります。
労働施策総合推進法30条の3第2項には、次のように示されており、パワハラ研修の実施は最低限必要になります。
<労働施策総合推進法30条の3第2項>
事業主は、優越的言動問題に対するその雇用する労働者の関心と理解を深めるとともに、当該労働者が他の労働者に対する言動に必要な注意を払うよう、研修の実施その他の必要な配慮をするほか、国の講ずる前項の措置に協力するように努めなければならない。
また、続く第3項でも事業主の責務に言及しています。
<労働施策総合推進法30条の3第3項>
事業主(その者が法人である場合にあっては、その役員)は、自らも、優越的言動問題に対する関心と理解を深め、労働者に対する言動に必要な注意を払うように努めなければならない。
企業の社長や役員はパワハラの問題に関心と理解を持って、労働者に対する言動を注意するように求められています。
さらに、第4項では労働者の責務に言及しています。
<労働施策総合推進法30条の3第4項>
労働者は、優越的言動問題に対する関心と理解を深め、他の労働者に対する言動に必要な注意を払うとともに、事業主の講ずる前条第一項の措置に協力するように努めなければならない。
労働者側もパワハラへの関心や理解を持って他の労働者に対する言動に注意を払わなくてはなりません。
つまり、事業場規模を問わず、2020年6月1日以降には義務として、最低でも研修実施などが求められ、社長から一般社員まで全員がハラスメントへの関心と理解を深め、他の労働者に対する言動に注意することが求められ、「不利益取扱いの禁止」について規則や規定に定めることが求められることになりそうです。
中小事業主も2020年6月の施行期日にまとめて対応を!
2019年末に正式リリースされる見込みの「事業主が講ずべき措置指針」の中小事業主の義務化は、2022年4月1日となる見込みではありますが、前述したように就業規則や規定類に不利益取扱いの禁止を盛り込み周知・教育する必要は2020年度には義務となるようです。
就業規則や規定類は都度変更をするにも手間がかかるもの、セクハラ防止対策の指針が出された2006年に、セクハラ防止に関する規定を定めて以来、変更をしていないという企業も存在します。
今後発表される指針では、事業主として就業規則や規定類に盛り込まなければならない項目が多く存在します。
ぜひこの機会にまとめて見直しをはかってください。
また、中小事業主は2022年3月31日までは努力義務ではありますが、努力義務ということは指針に示されている窓口の設置や相談対応後の再発防止措置などの整備が行われていなくても行政指導や勧告の対象とならないだけで、実際にハラスメント事案が発生をしてしまえば、事業主として対応していなかったことを問われることに変わりはありません。
中小事業主では人的リソース的にも一気に取り組むことは難しいというお話をよく耳にします。
努力義務期間中に教育研修などの機会を徐々に増やし、組織内の体制整備を段階的に進めながら施行日を迎えてはいかがでしょうか。