改正障害者雇用促進法施行に向けて検討開始

改正障害者雇用促進法の概要

厚生労働省に設置された労働政策審議会障害者雇用分科会では、2019年8月7日より、改正障害者雇用促進法施行に向けた検討が始まります。
改正障害者雇用促進法は、正式名称を「障害者の雇用の促進等に関する法律の一部を改正する法律」といい、2019年6月14日に公布されました。
改正概要は以下の通りです。

1. 障害者の活躍の場の拡大に関する措置
(1)国および地方公共団体に対する措置
(2)民間の事業主に対する措置
2. 国および地方公共団体における障害者の雇用状況についての的確な把握等に関する措置

このうち、企業で働いている方に大きく関係してくるのは、1.(2)であり、具体的に以下のような措置が盛り込まれています。

① 短時間であれば就労可能な障害者等の雇用機会を確保するため、短時間労働者のうち週所定労働時間が一定の範囲内にある者(特定短時間労働者)を雇用する事業主に対して、障害者雇用納付金制度にもとづく特例給付金を支給するしくみの新設
② 障害者雇用の促進等に関する取り組みに関し、その実施状況が優良など、基準に適合する中小事業主(常用労働者300人以下)を認定するしくみの新設

今回は上記①、②に関する改正の経緯、および今後の見通しなどをご説明します。

障害者雇用をめぐる現状と課題

民間企業において、障害者の雇用数は15年連続で過去最高を更新しています。
実際、2008年の障害者雇用数が32.6万人であるのに対し、2018年には53.5万人と飛躍的に増加しています。
また、ハローワークを経由しての障害者年間就職件数も9年連続で増加しており、2007年に45,565件であったところ、2017年には97,814件と2倍近くなっています。
一方で就労時間が短い障害者や、および中小事業主における障害者雇用にはまだまだ課題があるのが実情です。

<就労時間が短い障害者に関する課題>

前述のとおり、ハローワークを経由しての年間就職者件数は増加しており、それに伴って精神障害者の就職件数も年々増加していますが、実際の雇用者数はまだまだ少ないという課題があります。
加えて、精神障害者は、身体障害者や知的障害者にくらべて短時間労働者の割合が多いという実情があります。

※ 短時間労働者の割合(2018年)
・精神障害者:3割
・身体障害者:1割
・知的障害者:2割

このような実情を鑑みると、短時間の就労が可能な障害者の雇用機会を確保する必要があります。

<中小企業での雇用に関する課題>

雇用する側を見てみますと、大企業にくらべて中小企業での障害者雇用が進んでいないという課題があります。

・全体での障害者雇用率:2.05%
・従業員数100人以上300人未満の企業での障害者雇用率:1.91%
・従業員数45.5人以上100人未満の企業での障害者雇用率:1.68%

改正の具体的な内容

今般の改正では、就労時間の短い障害者の雇用支援、および中小企業での障害者雇用を促進する点に重きが置かれています。

就労時間の短い障害者の雇用支援

現行制度などにおいては、週所定労働時間が20時間未満の働き方は支援枠組みに含まれていません。
一方で、障害者のなかには、20時間未満であれば就労可能な方も一定数います。
そこで、今般の改正では、20時間未満の就労が可能な障害者の雇用機会を確保するため、これら障害者を雇用する事業主に対して、特例的な給付金を支給するしくみを創設することとなります。

中小企業での障害者雇用の促進

中小企業では、障害者の法定雇用義務が課されている一方で、まったく雇用していない企業が多いなど、障害者雇用への取り組みが停滞している状況があります。
そこで、先進的な取り組みを進めている事業主が社会的なメリットを受けることができるよう、障害者雇用について、優良な事業主を認定する制度を創設することとなります。

今後の見通し

改正障害者雇用促進法のうち、上記改正内容は2020年4月1日に施行されます。
今後、労働政策審議会障害者雇用分科会においては、中小企業の認定基準などについて具体的な検討を行っていく見通しで、厚生労働省令が2019年11月末ごろに公布される予定です。
給付金や中小企業認定制度の具体的内容は、省令内であきらかになると考えられます。

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蜂谷未亜株式会社ドクタートラスト 編集長

投稿者プロフィール

出版社勤務を経てドクタートラストに入社。産業保健や健康経営などに関する最新動向をいち早く、そしてわかりやすく取り上げてまいります。
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