2018年に日本語版が発行された『ティール組織 マネジメントの常識を覆す次世代型組織の出現』(原著:Reinventing Organizations・Frederic Laloux著、以下「本書」といいます)では、「ティール組織」という組織形態が提唱されています。
「ティール組織」とは?
一般的な組織は、社長をトップとするヒエラルキーの中で、肩書による上下関係が存在するのが一般的です。
しかし、ティール組織では従業員1人ひとりに決定権を分散し、フラットな関係性を持って組織を運用するのが大きな特徴です。
従来の組織モデルの問題点とは?
本書では、従来の組織の在り方を「達成型組織」と定義し、この形態が大きな成果を生み出す一方で、見過ごせないデメリットが複数あることを指摘しています。
・ 恐れによるマネジメントという弊害
安定的な業績を上げ続けなければ同業他社に淘汰される・倒産のリスクがある・顧客に対して存在価値を失うなどの考えにより、生産的な活動を喚起するのは用いられやすい方法だと思いますが、そのように行動原理が「恐れ」であることは人を疲弊させるリスクを持っています。
・ 上下関係が生む弊害
役職が付与されることにより、上位の人間が偉い、下位の人間は劣るという暗黙裡の共通認識ができ、下位の者は自分をよく見せたいという心理が生まれ、その競争意識により疲弊してしまいます。
また、上位者も役職への適応に要する労力が大きいと指摘されています。
・ 業務能力を日々研鑽、それに基づいた人事評価を行うことが生み出す個の分断という弊害
仕事で求められる人格の部分だけを職場で発揮する、つまり職場で不必要と思われる部分を表現しないことにより、個人や職場の雰囲気が活気を失う点が指摘されています。
「ティール組織」の特徴3つ
① 存在目的
トップダウン式な目標設定ではなく、企業の存在意義に対し個人がどう貢献できるか、という形でモチベーションを作ります。
また、個人の存在目的が企業の存在意義と共通項を持てた時、最大限に力を発揮できるようになります。
② 自主経営
指示系統がない組織であるため、個人が課題やアイデアを模索し周囲を巻き込んで具現化するプロセスを取ります。
③ 全体性
仕事用の人格を作るのではなく、お互いが人格のすべてを出して仕事をすることにより心理的安全性が生まれ、お互いの能力が引き出されるようになります。
全体性については、以前の記事でもご紹介した通り、Google社が行った生産性と心理的安全性の調査でも、仕事に関係あるなしに関わらず、職場で個人の考えや思いをアウトプットできる雰囲気作りにより、結果的にストレスがなくなり生産性も上がることが結果として示されています。
5段階の組織概念
「ティール組織」では、5段階の組織概念があります。
1.Red組織
特定の個人の力で支配的なマネジメントを行う
2.Amber組織
個々に明確な役割がある、軍隊的な組織
3.Orange組織
Amber組織と比較してヒエラルキー内での流動性があり、外部の変化にも適応できる
4.Green組織
目標達成のみならず、組織内の個人が持つ多様性への尊重が求められる
5.Teal組織
組織を「ひとつの生命体」として捉える
ティール組織の要素全てを備える会社はまだ存在しない、と本文中でも記載がありますが、パタゴニア社やオランダのビュートゾルフ社の取り組みが紹介されています。
また、一つの形態として、「ホラクラシー経営」がありますが、日本国内でもダイヤモンドメディア社の「役職なし」、「給与は皆で話し合って決める」など、新しい組織のあり方として非常に興味深いものがあります。
最後に
従来の組織形態の課題として指摘されている3点について、働く誰もが多少は経験する部分ではないでしょうか。
今すぐにティール型の組織に変える、というような見方でなくても、これからの働き方を考える上で、ぜひ参考にされてはいかがでしょうか。