30名規模の企業にも産業医選任義務の可能性

「50名以上」は産業医が健康管理

産業医の選任義務は、常時50名以上の従業員がいる事業場にあります。
そのことは、ストレスチェックの義務化により産業医の存在が改めて認知されてきたこともあって、このところ一般の人たちの間にも、浸透してきたように思います。

(労働安全衛生法施行令 第5条)
法第13条第1項の政令で定める規模の事業場は、常時50人以上の労働者を使用する事業場とする。

(労働安全衛生法第70条の2第1項の規定に基づく健康保持増進のための指針に関する公示)
労働安全衛生法第70条の2第1項の規定に基づき、健康保持増進のための指針公示第1号(昭和63年9月1日)として公表した事業場における労働者の健康保持増進のための指針について、労働安全衛生法の一部を改正する法律(平成26年法律第82号)の施行に伴い所要の改正を行うものである。

50名以上の従業員規模の企業数は、総務省・経済産業省「平成24年経済センサス-活動調査(企業等に関する集計 産業横断的集計)」によるとおおむね12万社。
それらの企業では、産業医が従業員の健康管理指導を行っているはずです。

「30名以上」の産業医選任義務を検討中

日本医師会が平成28年3月にまとめた「産業保健委員会答申」には、産業医選任義務がある事業場の対象人数を、「30名以上」と現状より引き下げることが提言されており、厚生労働省での「産業医の在り方に関する検討会」でも議題に上がっています。
理由としては以下を挙げています。

① 有効な認定産業医の資格を有する医師は6万人以上おり、仮に30~40名規模の事業場で選任義務が発生しても対応しうること(30~49名規模の会社数は、約9万社と全体の約2.2%)
② 小規模事業場においては、労働災害や業務上疾病の発生率が高いなどの労働安全衛生上の課題が多く、産業医が管理指導することで、課題を解決に導ける可能性があること
③ 事業場規模の小さい企業が増えてきていること
④ 地域産業保健センターで小規模事業場の個別訪問や相談窓口を受け付けてきたが、小規模事業場の約1%しか支援できていないこと

たしかに、事業の多様化が進み、会社の規模もダウンサイジングの傾向にあるなかでは、「50名以上」という基準は、現状に則していないようにも感じられます。
これからの日本の労働力人口は大幅な縮小傾向にあり、高年齢化にあることからも、労働者一人ひとりにかかる負担はより大きくなることが考えられます。
産業医による健康管理指導がすべてではありませんが、選任義務となる対象人数を引き下げることは日本の労働力確保の有効な手段の一つであると思うのですが、皆さんはどう思われますか。

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