平成29年3月13日、厚生労働省は「産業医制度等に係る見直しを行う」ことを発表しました。
労働安全衛生規則等の一部が改正される予定(平成29年6月1日施行予定)です。
改正の背景 ~産業医業務の変化と増加~
過労死対策、メンタルヘルス対策、疾病・障害がある等、働く人々が多様化することに伴い、労働者をとりまく健康問題が重要性を増している昨今。
平成27年12月からストレスチェック制度が新たに導入され、面接指導業務が新たに産業医の職務に追加されるなど、産業医が対応すべき業務が増加してきています。
また、労働安全衛生法が制定された当初と現在では、産業構造や、産業保健における主要な課題が変化してきており、事業場において求められる労働衛生管理の内容や産業医に求められる役割等が変化してきています。
このような背景から、産業保健現場のニーズを踏まえつつ、改めて産業医の位置づけや役割などについて検討する必要があることから、有識者の参画を得て「産業医制度の在り方に関する検討会」が開催されていました。(平成27年9月より、労働基準局において全7回)
その結果、産業医制度に係る省令改正が行われることが決定しました。
改正内容は3つ ~より具体的で実態に即した対応を~
(1) 産業医の定期巡視の頻度の見直し(労働安全衛生規則第15条関係)
少なくとも毎月1回行うこととされている産業医による作業場等の巡視について、事業者から毎月1回以上産業医に所定の情報が提供されている場合であって、事業者の同意がある場合には、産業医による作業場等の巡視の頻度を、少なくとも2月に1回とすることを可能とする。
【これまで】 産業医は、少なくとも毎月一回作業場等を巡視し、労働者の健康障害防止のために必要な措置を講ずる。
(2) 健康診断の結果に基づく医師等からの意見聴取に必要となる情報の医師等への提供(労働安全衛生規則第51条の2ほか8省令8条文関係)
事業者は、各種健康診断の有所見者について医師等が就業上の措置等に関する意見具申を行う上で必要となる労働者の業務に関する情報を当該医師等から求められたときは、これを提供しなければならないこととする。
【これまで】 事業者は、健康診断の結果、異常の所見があると診断された労働者について、当該労働者の健康保持に必要 な措置について、医師等からの意見を聴取する。
(3) 長時間労働者に関する情報の産業医への提供(労働安全衛生規則第52条の2関係)
事業者は、毎月1回以上、一定の期日を定めて、休憩時間を除き1週間当たり40時間を超えて労働させた場合におけるその超えた時間の算定を行ったときは、速やかに、その超えた時間が1月当たり100時間を超えた労働者の氏名及び当該労働者に係る超えた時間に関する情報を産業医に提供しなければならないものとする。
【これまで】 事業者は、休憩時間を除き1週間当たり40時間を超えて労働させた場合におけるその超えた時間が1月当たり100時間を超える労働者について、当該労働者からの申出に基づいて医師による面接指導を行う。
産業医の職務内容 ~その実態はいかに~
参考までに、産業医がどのような活動を実施しているか、調査結果を掲載します。
その他の検討事項は
「産業医制度の在り方に関する検討会」では、以下の事柄についても検討が行われたようです。
(1)産業医の職務の範囲
(2)保健師等の医師以外の産業保健スタッフの役割
(3)小規模事業場における労働衛生管理体制の強化
(4)事業者と産業医の関係
いわゆる「名義貸し」のような実態を伴わない産業医選任も横行していますが、目指すべきは「元気にはたらく人を増やす」ことです。
働く人の健康問題に寄り添い、より有用性のある制度となることを今後も期待します。