みなさんの会社では働き方改革について議論は進んでいますでしょうか?
働き方改革については「産業保健新聞」でも数多く取り上げてきたテーマですが、今回は実務に密接したより細かな点についてみていきます。
テーマは健康情報の取扱いについてです。
健康情報取扱規程を定めることが必要
健康情報とは健診結果や心身の状態などのことで、そのほとんどが機微な個人情報です。
2019年4月1日施行の労働安全衛生法では、この健康情報に関連して、以下の条文が新設されました。
労働安全衛生法第104条
2項 事業者は、労働者の心身の状態に関する情報を適正に管理するために必要な措置を講じなければならない。
3項 厚生労働大臣は、前2項の規定により事業者が講ずべき措置の適切かつ有効な実施を図るため必要な指針を公表するものとする。
3項にある「必要な指針」として、厚生労働省から2018年9月に公表されたのが「労働者の心身の状態に関する情報の適正な取扱いのために事業者が講ずべき措置に関する指針」(以下、本指針)です。
本指針では、事業者は心身の状態に関する情報の取扱規程(以下、健康情報取扱規程)を定め、労使で共有することが必要だとされており、規程に盛り込むべき内容も合わせて示されています。
健康情報取扱規程の内容
健康情報取扱規程に定めるべき事項は次のとおりです。
① 健康情報を取り扱う目的・方法
② 健康情報を取り扱う者、その権限・取り扱う心身の状態の情報の範囲
③ 健康情報を取り扱う目的等の通知方法、本人同意の取得方法
④ 健康情報の管理方法
⑤ 健康情報の開示、訂正、使用停止などの方法
⑥ 健康情報の第三者提供の方法
⑦ 事業承継、組織変更に伴う健康情報の引継ぎに関する事項
⑧ 健康情報の取扱いに関する苦情の処理
⑨ 健康情報取扱規程の労働者への周知方法
また、上記の内容を含めて規程を作成するに際しては、衛生委員会で労使の意見をすりあわせることが重要なポイントです。
本社からの一方通行ではなく、事業場に即した対応を
なお、健康情報取扱規程作成に関して不安視される点は、人事や総務機能を持たない事業場や、あるいは小規模事業場での対応です。
このような事業場では、本社の意思決定のみで健康情報取扱規程が作成され、実態にそぐわない状態で運用されてしまうおそれがあります。
本指針では、事業場の状況に応じて適切な管理となるのであれば、本指針の内容とは異なる健康情報の取扱いも容認しています。
もちろんこの場合でも労働者に対しては、当該取扱方法採用の理由を説明することが必要です。
改正後の労働安全衛生法施行まで1ヶ月を切りました。
みなさんの事業場内での健康情報の取扱方法について、ぜひ再確認してみてください!
<参考>
・ 「労働者の心身の状態に関する情報の適正な取扱いのために事業者が講ずべき措置に関する指針」(厚生労働省)