パワハラの損害賠償を甘く見てはいけない!

以前、知人から、職場上司によるパワハラで悩んでいると相談を受けました。
彼はその後、勇気を出して、上司の上席にあたる管理職に事実を伝え、配置を転換してもらうことで現在も元気に働くことができています。
また、この件での加害者である上司も事業場を移動して勤務し続けているようですが、将来、自分自身が職場仲間の人生を壊すようなハラスメント加害者にも被害者にもならないよう気をつけなければいけません。
以下で、ハラスメントが原因で裁判となった判例をみていきましょう。

プラネットシーアール事件

2018年12月7日に長崎地裁で「プラネットシーアール 事件」の判決が下されました。
これは数年に渡る会社からのパワハラによって会社に復帰できなくなってしまった原告が勝訴した裁判で、会社に対し損害賠償・未払い賃金・残業代等を含む約2,000万円もの支払いが命じられました。
本件は、継続的ないじめや業務指導を超えた長時間に及ぶ叱責など、精神的苦痛を与えていたことのみならず、未払賃金・残業代がかさんだことによって大きな金額となりました。

このように、いじめや賃金未払いが社内で常態化してしまうと、仮に自分が加害者になっていたとしても、それに自ら気づくことは難しいかもしれません。

裁判に発展したハラスメント例

妊婦からの業務軽減依頼を無視

介護職員として勤務していたXさんは、妊娠4ヶ月であることを面談時、営業所長に伝え業務の軽減を希望しました。
しかし営業所長は「妊婦として扱うつもりはない」などの発言をし、業務の軽減に対応することはありませんでした。
そこで、Xさんは妊娠8ヶ月目に本部長に業務軽減の申出を行い、そこでやっと対応してもらうことができました。
Xさんは育休取得後、マタニティ・ハラスメントがあったとして会社に慰謝料を求めます。
結果、その企業と営業所長には連帯して慰謝料35万円の支払いが命じられました。
(福岡地小倉支判平成28・4・19労判1140号39頁)

上記判例から、妊婦のための環境を整えないこともハラスメントであると考えられるようになりました。

有給休暇の取得を妨害

塾講師である原告が有給休暇の申請をしたところ、上司から、有給休暇を取得すると評価が下がるなどの発言があり、原告は申請を取り下げることとなりました。
さらに総務部長や代表者がその上司を擁護するような発言をしたことや、業務の担当変更をさせられたことなどに対して、原告は損害賠償を求めました。
結果、原告のすべての請求が認められたわけではありませんが、企業には合計60万円の慰謝料支払いが命じられました。
(大阪高裁平成24年4月6日判決労働判例1055号28頁)

本来予定されていない業務の命令

結婚式場で勤務していた原告2名は、1年間のパート契約により衣装や包装業務に従事していました。
原告は同契約を1度更新したのちに雇止めを受けますが、再度パート労働契約を締結することによって復職に至ります。
しかしながら、職場復帰した後は、以前と別の業務(床磨き、ガラス拭き、門の開閉、草取り)に従事させられ、結果、原告は腕や背中を痛めたことで通院し、その後現職への復帰を求めましたが、認められなかったため慰謝料等を求めました。
判決では、原告2名それぞれにつき30万円の支払いが命じられました。
(最高裁第二小法廷判決昭62.10.16労働判例506号13頁)

パワハラへの認識を改めましょう

現在、パワーハラスメントに限らず、さまざまな行為がハラスメントとして認識されます。
ハラスメントで苦しむ方を少しでも減らすためには、まず企業のトップがハラスメントによる生産性の低下を理解することが大事です。
そして経営層の方々からハラスメントへの対策方針を説明し、企業としての真剣さを従業員の皆さんに伝えることが大切だと思います。
自分自身の行動が他者に苦痛を与えるような行動を取ってないか、今一度省みることが大切でしょう。

<参考>
・ 「裁判例を見てみよう」(あかるい職場応援団)

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