「求人を出しているのに、ぜんぜん人がこない!」
このような悩みを抱いている企業は多いことと思います。
実際、厚生労働省がとりまとめた2018年の有効求人倍率は1.61倍で、2017年を0.11ポイント上回っており、1973年以来の高水準でした。
企業では、求職者を募る手段として、たとえば「働き方改革」に着手してみたり、あるいは、福利厚生を充実させたり、給与水準を上げたりと取り組みを行っているところもあるのではないかと推察します。
一方、最近では「副業・兼業の解禁」もよく見かけるワードになりました。
特に従業員数の大きな企業での取り組み、あるいは先行して副業・兼業を推進している企業などは注目を集めており、労働者から支持を受けているように思われます。
ただあくまで、これらの多くは、本業である会社勤めに影響の及ばない範囲で、と限定されがちだという課題があります。
フリーランスの視点を取り込んでみる
さまざまな採用戦略を打ち立てているものの、それでもなかなか人が集まらない……。
副業・兼業もOKにして、柔軟な対応をしているつもりなのに……。
そんな状況の企業には、逆の視点から考えてみるのもおすすめです。
つまり、「兼業をしてもいい」ではなくて「うちの会社を兼業先」としてとらえてもらうということです。
ここでは考え方の一つとして「フリーランス人材」の視点をご紹介します。
フリーランスとは、企業や組織に属さず、自分のスキルの提供によって、報酬を得るという働き方で、以前は、クリエイティブな職種がフリーランスの中心のような印象がありましたが、最近ではIT分野でもフリーランスの働き方を選ぶ人が増えています。
フリーランス人材の腹の内
フリーランスという働き方を選んだ人はどのような理由からなのでしょうか。
「平成27年度小規模事業者等の事業活動に関する調査に係る委託事業報告書」(以下、報告書)からは以下のような結果が見られます。
<フリーランスとして働いている理由(複数回答)>
・仕事をする時間や場所の自由度がある:70.1%
・自分の好きな仕事をできる:64.4%
・仕事の量を調整できる:36.4%
・専門的な技術・知識を活かすことができる:36.2%
・人間関係に煩わされることがない:26.3%
・組織で働くよりも、やりがいを感じられる:16.3%
・年齢に関係なく働くことができる:15.7%
・他社の指示に従う必要がない:14.8%
・家庭との両立をしやすい:13%
・高い収入を得ることができる:3.9%
・その他:2.8%
・性別に関係なく働くことができる:0.5%
上記をまとめると、(働く場所も含めた)広義の「裁量」を重視する人がフリーランスを選んでいるということがわかります。
また、ここで上がった回答は、穿った見方をすれば「組織に所属すると叶えられないこと」と、とらえることができます。
“企業に勤める”ではなく、“企業にも勤める”
フリーランスの働き方を選んでいる人たちは、組織という後ろ盾なく、自分自身のスキルの提供によって報酬を得ており、その点では、総じて優秀な人たちが多いといえるでしょう。
こういった状況下で、企業が、特に優秀な人材を確保するうえで必要なことを考えてみると、従来の「高い給与、充実の福利厚生で、人材を取り込む」という考え方ではなかなか厳しいように思われます。
むしろ、週5日の勤務、1日8時間の労働、にとらわれない勤務体系のもと、裁量を多く与えるといったほうが、人材確保に資すると思います。
先進的な企業では、「副業」ではなく「複業」として、他社で働きながら、あるいはフリーランスとして働きながら、会社に所属してくれる人を募集する、といった方法を採用しているところもあります。
今後は、企業の採用戦略として「複数の就業形態の一つ」という位置づけで打って出る方法も、検討の余地は十分にあるのではないでしょうか。
<参考>
・ 「平成27年度小規模事業者等の事業活動に関する調査に係る委託事業報告書」(株式会社日本アプライドリサーチ研究所)
・ 「複業採用」(サイボウズ株式会社)