過労死。
それは決して他人事ではありません。
実際に、定期的にと言っていいほど、過労死関連の報道が繰り返されています。
過労死を起こさせない労働環境を整備することは本当に大切なことですが、それが思うように進んでいないと感じるのは、私だけでしょうか?
今回は少し視点を変え、実際に過労死が起こってしまった際に起こるであろうことを書かせて頂きたいと思います。
過労死が起きてしまいました。さて、どうなる?
働き盛りの社員が急死をした。直近数ヶ月の残業時間は100時間を超えていた。働きすぎが原因と思われる。
このようなケースが発生した場合、ご遺族により労働基準監督署に労災認定請求がなされる可能性が高くなります。
これは、「故人がどのような理由で亡くなってしまったかを明らかにしたい、再発させないためにも真実を知りたい」というご遺族の願いがあるため、自然な流れであると思います。
労災認定請求を受けた労働基準監督署は、職場に立入り調査をし、業務内容・労務状況の調査、また聞き取り調査などを行い、それが、業務が原因であったか?ということを調査します。
今回のケースでは、直近の残業時間が1ヵ月あたり100時間を超えていたと設定しているため、ほぼ無条件で労災認定(過労死認定)されるものと思われます。(過労死ラインは残業時間80時間/月といわれています)
労災認定の後は、裁判(損害賠償請求)がある
労災認定がされた場合、その後には裁判(損害賠償請求)があるケースが大半です。
ここで押えておかないといけないのは、労災認定はあくまでも「仕事が原因で発症した」ということが認められたという点です。
「会社に責任がある」と認められたことには必ずしもなりません。
ご遺族としては、会社に責任があることを認めてもらう、またどういった理由で過労死になってしまったかを司法の場で明らかにしたいという思いから、会社側の責任を明らかにするためにも裁判をすることが多いです。
裁判となれば、弁護士が主体となり、業務内容・労務状況の調査、また聞き取り調査などを行い、裁判所にて争うことになります。
基本的なことになりますが、労災認定は「行政」がおこない、裁判は「司法」がおこないます。
従いまして、行政と司法の判断が違ってくるということは、もちろんあり得ます。
ただし、現状として行政が下した判断(労災認定)と司法が下す判断(損害賠償請求)はイコールになるケースがほとんどということを覚えておいていただきたいと思います。
つまり、以下が成り立つのです。
労災認定された = 裁判でも会社側の敗訴が濃厚
損害賠償額は?その他の損害は?
裁判にて敗訴した場合、会社側が損害賠償をする事になります。
損害賠償額は、故人の年齢や給与額、過失割合などにより変動します。
一概には言えませんが、過去の事例を見てみると、1億円を超すケースもあります。少なくとも数千万円の賠償請求があると考えるべきです。
もし中小企業で過労死が起こってしまうと、たちまち会社存亡の危機になってしまいかねない金額といえるのではないでしょうか。
これは過労死を出してしまったがための直接的な損害ですが、間接的な損害として、以下が考えられます。
・会社の社会的信用が失墜する
・社員のモチベーションが下がる、大量退職などのリスク増大
・優良な人材確保が難しくなる
今回は、過労死という重いテーマを取扱いましたが、「過労死」を起こさない・起こさせない労働環境をつくるということが大切であることを意識していただきたいと切に願っています。