計画運休に対しては、企業側でのルール策定も必要

10月に日本を襲った台風19号に際しては、鉄道会社から事前に「計画運休」が発表され、首都圏の鉄道網はほぼストップしました。
今回は発生したのが週末であったことから、従業員に対する対応などに追われる企業はあまり多くなかったと思います。

では、もしこの「計画運休」が平日であったらならば、どのように考えていけばいいのでしょうか。

計画運休とは

そもそも計画運休とは、鉄道をはじめとした公共交通機関が悪天候で運行への影響が予測された場合に、事前に告知をしたうえで運休を行うもので、2014年にJR西日本が始めました。
首都圏で本格的に計画運休が導入されたのは2018年のことです。

また、国土交通省からは、2019年7月に「鉄道の計画運休の実施についての取りまとめ」を公表し、計画運休の実施に際して「どのように」「いつまでに」情報提供を行うかを示しています。

<計画運休に関する情報提供の手段・期限>
・ 多様な方法で提供する
・ 多言語で提供する
・ 実施48時間前(2日前)に「計画運休の可能性」を公表
・ 実際24時間前(1日前)に「計画運休の詳細」を公表

これまでは「利用者の不便を避ける」ことに主眼が置かれていたため、上記のうち特に「詳細」については、ぎりぎりまで定まらないことが多々あり、これが「利用者の混乱」を招くもととなっていました。
しかし、台風19号発生に際しては、かなり早い段階から計画運休の可能性、および詳細が示されたことから、比較的スムーズに計画運休が実施されており、今後の計画運休についても今回の方法に則って実施されていくものと思われます。

振替輸送はないし、ただちに通常運行に戻るわけではない

鉄道路線の遅延、運転見合わせなどに際しては、通常「振替輸送」が行われます。
実際にこの「振替輸送」を利用して、定期券の区間とは異なる経路で出社した経験のある人も多いでしょう。
この「振替輸送」は、運転見合わせなどの発生した鉄道会社が、ほかの鉄道会社に依頼して初めて実施されるものです。
しかしながら、悪天候にもとづく場合、鉄道会社が違えども一帯の路線は、ほぼ同じ時間帯で「計画運休」を実施することになり「振替輸送」の受け入れ先となる鉄道会社はありません。
つまり、「計画運休」が実施されるような悪天候のようなときは、鉄道網全体がストップするといえます。

また、計画運休に際しては、列車の最終時刻とともに、運転再開時刻も公表されます。
ただし、この運転再開時刻どおりに列車が動き始めたとて、ただちに「通常通り」の運行になるわけではありません。
というのも、この運行開始時刻は、車庫に入庫している列車が動き始める時刻であり、列車の運行が回復するまでにはしばらく時間がかかります。
そのため「午前7時から運転再開予定」とあったからといって、「ならば通常通りに通勤できるはず」と考えるのは早計です。

都度判断からルール規定へ

これまで、悪天候時の出勤については、都度判断が主流だったと思います。
公共交通機関が路線ごとに、またその時々によって対応が異なっていたためです。
しかしながら、今回の台風19号によって、悪天候時の「計画運休」のあり方はある程度固まったとみることができます。

悪天候時の鉄道会社の対応については、各社ウェブサイトのみならず、各報道機関からも簡単に参照することができます。
であれば、企業側も従業員の無用の混乱、不安を避けるために、あらかじめルールを定め、周知することが望ましいでしょう。

また、最近では悪天候時の出勤について「自己判断」とするのは、安全配慮義務の観点からも、また企業イメージの観点からも、好ましくないように思われます。
そのため、ルール策定に際しては、「自宅待機」を許可する範囲を広めにとっておくようにしましょう。

産業保健新聞内の過去記事も参考にしてください。


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蜂谷未亜株式会社ドクタートラスト 編集長

投稿者プロフィール

出版社勤務を経てドクタートラストに入社。産業保健や健康経営などに関する最新動向をいち早く、そしてわかりやすく取り上げてまいります。
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