健康診断の実施義務
皆さんご存知の通り、事業者には”常時使用する労働者”に対して、”雇い入れの際”また”一年以内ごとに一回”健康診断を実施することが義務づけられています。
これは労働契約法第5条に規定される安全配慮義務に基づく施策の一環となっております。
※安全配慮義務……「使用者は労働契約に伴い、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をするものとする」というもので、健康診断のほかに使用機器の安全な整備・労働時間の適切な管理なども含まれ範囲は非常に広くなっています。
よって、健康診断といえど、実施されなかった場合には、労働契約法違反となり事業者に50万円以下の罰金が科せられます。
ただし、3か月以内に受診した健康診断の結果の提出によって健康診断の受診義務は免除されます。
従業員に健康診断の受診を拒否された場合には?
「業務量が多く受診する暇がない……」
「病院が嫌い」
「自分の健康は自分で守りたいというポリシー」
「受診中無給扱いになってしまいメリットがない!」
などさまざまな理由で健康診断の受診を拒否する方がいらっしゃいます。
会社としては労働契約法違反として罰金を科せられるのは避けたいところですが、健康診断の受診拒否を事由とした懲戒解雇は認められません。
どうしても受診を拒否される場合には、労働基準監督署への相談なども視野に入れましょう。
会社としてしっかり対応し、書面などでエビデンスを保管しておきましょう。
健康診断を円滑に実施するために……
健康診断の実施は義務ですが、ただ受ければいいというものでもありません。
雇い入れ時や定期的な健康診断によって感染性の疫病による労働災害の防止に繋がったり、健康状態の管理によって労働環境の向上、そして生産性の向上に繋がったりメリットもたくさんあります。
なるべくポジティブな理由で実施したいものですよね。
そのためには使用者と従業員、双方からの歩み寄りが肝要となります。
では具体的にどういった対応を取ればよいでしょうか?
① 従業員の行きやすい(行きたい・慣れた)病院での受診を許可し、指定外の医療機関での受診でも会社側が費用負担をする。
② 健康診断の時期には対象者の業務量を調整する。
③ 適切な時間帯に受診すれば有給とする(無給扱いとしない)。
など、さまざまな対応策が考えられます。
健康診断を有効に利用し、従業員が健康に働くことが出来る労働環境を作り上げましょう。