【東京商工会議所調査】働き方改革で2割の企業が「事業運営に支障」、宿泊・飲食業は55.6%

年が明け、2025年度も終盤に差し掛かりました。
いわゆる「2024年問題」と呼ばれた残業時間の上限規制が全面適用されてから現場はどのような状況にあるでしょうか。
「働き方改革」という言葉が浸透して久しいですが、理想と現実に挟まれて、頭を悩ませている担当者の方も多いはずです。
東京商工会議所が2025年12月に公表した「働き方改革に関する緊急アンケート調査」の結果からは、制度への対応に奮闘する企業のリアルな声が見えてきました。
今回はこの調査結果をもとに、労働安全衛生法の視点から、私たちが今、何に気を配るべきかを考えていきましょう。

結果から見える格差

今回の調査は、東京商工会議所の会員企業1,079社を対象に行われました。
全体として見ると「上限規制への対応で事業運営に支障が出ている」と答えた企業は約2割です。
「意外と少ない?」と感じるかもしれませんが、特定の業種に絞ると数字は跳ね上がります。
宿泊・飲食業では55.6%、運輸業では54.7%と、半数以上の企業が「支障あり」と回答しているのです。
また建設業も42.2%と高い数字になっています。
これらの業種に共通するのは、お客様のニーズや現場の状況によって、どうしても自分たちだけでは仕事の時間をコントロールしにくいという点です。
「法律だから守らなければならない」のは承知の上ですが、無理に労働時間を削ろうとすれば、サービスの質が落ちたり、納期が守れなくなったりするという経営上の苦しい選択を迫られています。
こうした現場の「無理」が、最終的に従業員のメンタルヘルスや安全に影響するリスクを孕んでいるのではないでしょうか。

原因は人手不足

では、なぜ対応がこれほど難しいのでしょうか。
調査でダントツの1位となった理由は「全社的な人手不足(60.6%)」です。
仕事の量は変わらない、あるいは増えているのに、働く人が足りない。
このシンプルな問題が、労働安全衛生法を守る上での最大の障壁になっています。
労働安全衛生法では、労働時間の客観的な把握(第66条の8の3)が義務付けられています。

第66条の8の3
事業者は、第66条の8第1項又は前条第1項の規定による面接指導を実施するため、厚生労働省令で定める方法により、労働者(次条第1項に規定する者を除く。)の労働時間の状況を把握しなければならない。
出所:労働安全衛生法

しかし、現場が人手不足で火の車になると、記録上は「定時退社」になっていても「実は自宅でパソコンを開いている……」といった「隠れ残業」が発生しやすくなります。
見えない残業が増えると、衛生管理者が把握できるデータと、従業員の実際の疲労蓄積度がどんどんかけ離れていきます。
これでは、本来実施すべき「医師による面接指導」などのセーフティネットが機能しません。
人手不足は、働く人の命や健康を守るための「安全管理の仕組み」そのものを壊しかねない原因となります。

これからの人事労務・衛生管理者にできること

国の制度が変わるのを待っている間にも、現場の時間は進んでいきます。
今、私たちができることは何でしょうか。
調査では、多くの企業が「業務の棚卸し」や「DX(デジタルトランスフォーメーション)による効率化」を対策として挙げています。
「今までこうだったから」という慣習を見直すことは、非常にパワーが必要ですが、人手不足を解消する近道でもあります。
そしてもう一つ大切なのは、産業医との連携を「形式的なもの」にしないことです。
上限規制ギリギリのラインで働いている人がいる場合、法的な義務(月80時間超)に達していなくても、早めに声をかける、あるいは保健師による面談を設定するといった、先回りのケアが有効です。

東京商工会議所の調査結果は、今の働き方改革が「時間の数字」だけを追うフェーズから、いかに「持続可能な環境」を作るかというフェーズに移ったことを教えてくれています。
人事担当や衛生管理者の皆さんは、会社の「数字」と従業員の「心身」の両方を守るという、非常に難しい役割を担っています。
今回の調査結果を、ぜひ社内で「今の体制で本当にみんなを守れているか?」を話し合うきっかけにしてみてください。

<参考>
・ 東京商工会議所「『働き方改革に関する緊急アンケート調査』の集計結果について」

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藤原ふじこ株式会社ドクタートラスト

投稿者プロフィール

前職は旅行業界で働いていました。異業種に来たことから、日々勉強、日々奮闘中です。
自分が学んでいくなかで興味を持ったことを中心に発信していきたいと思います。

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