テレワークの実施率低下から学ぶこと~働き方の未来に対する期待と現実のギャップ~

「新しい常態」(ニューノーマル(新常態))という言葉が私たちの日常に浸透して久しいですが、実際には新常態自体が絶えず変化し、多くの不確実性を内包しています。
新型コロナウイルス感染症の世界的な流行は、一時的なものではなく、働き方、経済構造、そして社会全体の土台に長期的な影響を与えました。
このような不確実性が高い時代において、公益財団法人日本生産性本部が2024年2月に発表した「第14回働く人の意識調査」は、私たちが直面している経済の不透明感と働き手の意識の変化の規模を詳細に描き出しています。
景気に対する悲観的な見方が増加し、特にテレワーク(※)実施率が記録的な低水準に落ち込むなど、新しい働き方への移行は多くの障壁に直面しています。
本稿では、これらの課題に焦点を当て、テレワーク実施率の低下が現代社会にどのような影響を及ぼしているのか、その背後にある要因と今後の展望について探ります。
※ テレワークとは、「Tele=離れた」と「Work=働く」を合わせた造語で、時間や場所にとらわれない柔軟な働き方のことです。
テレワークには大きく分けて「在宅勤務」「モバイルワーク」「サテライトオフィス勤務」と3つの種類があります。

キャリアと人材育成における挑戦

キャリア形成と人材育成の分野では、市場価値について不確実性を感じる働き手が増加しています。
「自分の市場価値がわからない」と感じる働き手が全体の約4分の1を占めており、特に20代から30代の若年層の間では30%以上がそのように回答をしています。
将来に対する不安と期待が錯綜しており、自分のキャリアパスに対する見通しが立たないという問題が顕著です。
給与の不透明性やキャリアパスの不確実性が働き手のモチベーションを低下させ、適切な評価を受けられる場を求めて転職を考える人が増えています。
このような状況は、組織が直面する人材管理の課題を浮き彫りにし、従業員へのキャリア支援と人材育成の強化が急務であることを示しています。
組織としては、働き手一人ひとりのキャリアプランをサポートし、彼らが市場価値を正しく理解し、自信を持ってキャリアを築けるような取り組みが必要です。

働き方の未来像と展望

働き方の一つにテレワークが取り入れられるようになり、普及が一時的に加速したものの、その実施率は2023年7月調査時点の15.5%から2024年1月調査では14.8%へと減少し、過去最低を更新する結果となりました。
テレワークの実施率の低下は、働き方の未来に対する期待と現実のギャップを示しています。
多くの働き手がテレワークを通じて柔軟性やワークライフバランスの改善を求めていますが、実際にはそのような働き方が普及していないのが現状です。
特に中小企業では、リソースの限界やテレワークに対する認識の違いなど、さまざまな障壁が存在しています。
これらの課題を克服するためには、政府や企業が積極的に取り組む必要があります。
テレワークを含む柔軟な働き方を促進するための政策や制度の整備、技術的な支援、そして働き手の意識改革が求められています。
これらの取り組みを通じて、新しい働き方の普及を目指し、働き手が自らのライフスタイルに合わせた働き方を選択できる環境を整えることが重要です。

進むべき方向性

経済の不透明性とテレワーク実施率の低下がもたらす影響は、私たちの働き方や生活に深刻な影響を及ぼしています。
この変化の時代を生き抜くためには、企業や政策立案者、働き手一人ひとりが共同で努力し、新しい働き方への移行を支援する取り組みを進める必要があります。
柔軟な働き方の促進、キャリアと人材育成の強化、そしてテレワークを含む新しい労働環境の整備は、現代の経済環境における生存と繁栄の鍵となります。
私たち働き手一人ひとりが自身のスキルやキャリアを見つめ直し、新たな働き方を模索することで、不確実性の高い現代社会においても、個人と組織が共に成長し、繁栄していく道を切り拓くことができるでしょう。

<参考>
公益財団法人日本生産性本部「第14回働く人の意識調査」

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福井卓株式会社ドクタートラスト

投稿者プロフィール

大学卒業後、中学校、高等学校、特別支援学校に勤務。不登校生徒支援や障害児支援等に従事しました。これまでの知見を活かして「健康で、楽しく元気にはたらく人を増やす」ための情報を発信していきます。
よろしくお願いいたします。
【保有資格】中学校教諭1種、高校学校教諭1種、特別支援学校教諭2種
【ドクタートラストへの取材、記事協力依頼、リリース送付などはこちらからお願いします】

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