「労働して賃金を得ること」、これを行うためには社会に出て他者との関わりを持つことが必然となります。
しかし、障害病状、労働環境、他者との関わりからやむをえず仕事を辞めるという選択肢や、不安が強く引きこもり生活が続いている方がいらっしゃいます。
そんな方々が再び社会に出れるように生活リズムを整えたり、不安を取り除くための就職サポートが受けられる場所が就労移行支援事業所です。
就労移行支援とは何か、私の事業所でのアルバイト経験での実話も踏まえ解説します。
就労移行支援とは
障害者総合支援法における就労系障害福祉サービスには、就労移行支援、就労継続支援A型、就労継続支援B型、就労定着支援の4種類があります。
その一つが就労移行支援事業です。
<利用者>
一般就労等を希望し、知識・能力の向上、実習、職場探し等を通じ、適正に合った職場への就労等が見込まれる者(65歳未満の者)
<主なサービス内容>
●一般就労等への移行に向けて、事業所内や企業における作業や実習、適正に合った職場探し、就労後の職場定着のための支援
●通所によるサービスを原則としつつ、個別支援計画の進捗状況に応じ、職場訪問等によるサービスを組み合わせた支援
●利用者ごとに、標準期間(24ヶ月)内での利用
※必要性が認められた場合に限り、最大1年間の更新可
利用者は国の補助を受けられ、期限内に限り、基本無料でサービスを受けることができます。
また、さまざまな特色を持った事業所があり、自分に合ったカリキュラムのある事業所を選べるのも特徴です。
eスポーツやプログラミングなど専門分野に特化した事業所もあったりと幅広い分野に精通しています。
利用を考えている方はぜひ一度見学に行き、自分にあった事業所を選ぶのをおススメします。
就労移行支援を受けることにより、生活リズムの維持、段階的な負荷設定と必要な訓練、職場内での適切な配慮を受けることが可能となります。
それに伴い、勤務時間・日数の円滑な増加、定着状況の安定・改善、利用者の意向や企業等状況に合わせた働き方で、一般就労を始めることができると厚生労働省より期待されています。
また、必要に応じて就職先の企業や就労支援機関等と連携し、合理的配慮の内容等についての調整を受けることで、的確な定着支援につなぐこともできます。
事業所でのアルバイト経験
私が働いていた事業所では主に、就職活動のサポートに加えて、自己理解や自己覚知のカリキュラムに力を入れていました。
自己を理解することによって自分に向いている環境や対人関係、労働条件などが導き出せます。
それを受容することによって「なぜ、いままで社会での生きにくさを感じたのか」と気づく方も多くいらっしゃいました。
すべてが完璧な環境や条件にあった職場環境は難しいですが、自己を理解し、働く会社に最低限の労働条件を提示することでお互いの過ごしやすい環境作りが行えます。
もちろん、支援員は会社と利用者間での橋渡しとして、面接練習やマナー、相談は随時受け付けているので安心して就職に向けての準備が行えることでしょう。
また、事業所には働きたいという同じ目標をもった仲間も多くいます。
「うまくいかない」「またどうせダメなんだ」とネガティブな気持ちと向き合うことがあると思いますが、同じ目標を持った仲間や支援員からの支えは社会への新たな一歩へとつながります。
今後の障害者雇用率
「障害者の雇用の促進等に関する法律(障害者雇用促進法)」では従業員が一定数以上の規模の事業主は、従業員に占める身体障害者・知的障害者・精神障害者の割合を「法定雇用率」以上にする義務があります。
2023年1月18日に第123回労働政策審議会 障害者雇用分科会を開催し、民間企業に義務づけられている障害者の法定雇用率を、現状の2.3%から段階的に2.7%まで引き上げる方針を発表しました。(ただし、雇入れに係る計画的な対応が可能となるよう、2023年度においては2.3%で据え置き、2024年度から2.5%、令和8年度から2.7%と段階的に引き上げることとする)
厚生労働省の「令和4年 障害者雇用状況の集計結果」によりますと、民間企業(43.5人以上規模の企業:法定雇用率2.3%)に雇用されている障害者の数は613,958人で、前年より16,1720人増加しています。
対前年比で2.7%増え、19年連続で過去最高となっています。
会社でも、お互いのことを理解しあった多様性のある環境、就労形態が求められます。
<参考>
・厚生労働省「障害者の就労支援について」
・厚生労働省「令和4年 障害者雇用状況の集計結果」
・厚生労働省 「令和5年度からの障害者雇用率の設定等について」