日本で働く外国人の権利~多言語リーフレットで権利の周知を目指す~

私たち日本人労働者の権利は、労働法により手厚く守られています。
ハラスメント防止法が策定されたように、労働者の権利を守ろうとする動きは加速しており、各企業もより働きやすい環境の提供が求められています。

同じように加速しているのが外国人労働者の受け入れです。
彼らの権利は、日本人同様に守られているのでしょうか。
本記事では、外国人労働者を取り巻く労働環境について解説します。

外国人の雇用状況

現在、外国人労働者の人数は約172万人(2020年10月末)にのぼり、届け出が義務づけられて以降、過去最高人数を更新しました。
国籍別では、ベトナムが最も多く、中国、フィリピンと続いています。
この数字を見るだけで、日本の産業が非常に多くの外国人労働者に支えられていることがわかります。
少子高齢社会の今、外国人労働者の労働力は、日本にとってなくてはならない存在といえるでしょう。

外国人労働者を取り巻く労働環境

そんななかで問題になっているのが外国人労働者の労働環境です。
妊娠、出産を理由とした解雇等の不利益取扱いの禁止や、ハラスメント防止法はすべての外国人労働者にも適用されます。
しかし現在でも、外国人労働者が不当な扱いを受けているケースが多く散見されます。
以下は、最近都道府県労働局に報告があがっていた例を抜粋したものです。

事例1:事業主の男女雇用機会均等法違反を指導し、是正された事例

○女性労働者のプロフィール

南米出身の永住者。
派遣労働者として製造業の工場作業に従事。

○労働局への相談の内容

妊娠したことを派遣元企業に報告したところ、派遣先企業から「今月末をもって契約を解除する」と通告された。
理由は、業務量が減少し派遣労働者が余剰となったためと説明されたが、妊娠を理由とした契約打切りではないかと考え、産前休業まで働きたいとして労働局に相談した。

事例2:男女雇用機会均等法による紛争解決の援助を行った事例

○女性労働者のプロフィール

南米出身の定住者。
建設業の正社員として現場作業に従事。

○労働局への相談の内容

妊娠した女性労働者が、事業主に対し「産前産後休業・育児休業を取得して、子どもを育てたい」と申し出た。
事業主は、妊婦に与えられる仕事がないことを理由に「中絶しないならば、解雇するしかない」と言い渡した。
女性は中絶を拒否し、解雇され、会社の寮(借上げアパート)を退去した。
退職後、女性は出産。
その後、産前休業まで勤務したならば受け取れたはずの賃金相当額と出産手当金相当額の支払いを事業主に求め、事業主が拒否したため、労働局に紛争の解決の援助を申し立てた。

いずれの例も男女雇用機会均等法に違反しているため、都道府県労働局の雇用環境・均等部(室)から是正勧告を行っています。
このような不当な扱いが起こってしまう要因としては、そもそも雇い主や外国人労働者自身が法の適用範囲を理解していないケースが多いようです。

多言語リーフレットで権利の周知を目指す

厚生労働省では、妊娠、出産等による不当取り扱いの禁止と職場におけるハラスメント防止について、外国人労働者にもわかりやすく周知するため、多言語でのリーフレットを新たに作成しました。
また、妊産婦が自身の状況を事業主に伝えるための「母子健康指導連絡事項カード」についても、英語、中国語、ポルトガル語と日本語を併記したものを新たに作成しています。

外国人労働者もいち労働者であり、決して安価で便利な労働力ではありません。
一方で、使う言語や育った環境の違う人たちが、法令や各種規制を完璧に理解するのは難しいというのも事実です。
かつてないスピードで多様化の進む今、労働者の権利を守っていくためには、正しい制度を周知するのはもちろんですが、国境という枠組みを捨て、同じ人として思いやりを持った対応をしていく必要があるのではないでしょうか。

<参考>
・ 厚生労働省「「外国人雇用状況」の届出状況まとめ(令和2年10月末現在)」
・ 厚生労働省「妊娠、出産等による不利益取扱いは、外国人労働者についても禁止されています」

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伊藤 早紀株式会社ドクタートラスト

投稿者プロフィール

体調を崩したことをきっかけに、健康の大切さを多くの人に伝えたいと思うようになり、ドクタートラストに入社いたしました。
ダンサーとしても活動をしているため、自身の特殊な経歴を生かし、さまざまなバックボーンの方に寄り添った記事を発信していきます。
【ドクタートラストへの取材、記事協力依頼、リリース送付などはこちらからお願いします】

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