暑い夏は痛風発作に注意!~4つの予防ポイント~

梅雨が明け、本格的な夏が到来しました。
暑い時期に最も気をつけなければならないのは熱中症ですが、実は痛風も夏に起こりやすいと言われています。
暑い日は汗をよくかきますし、ついついお酒の量が増えてしまうなど痛風の原因となる条件が揃っており、5月から8月は痛風発作を起こす方が多いのです。
発症すると我慢できないほどの激痛をともなうことも多いため、できれば発症前に予防しておきたいですよね。
そこで今回は、痛風の症状とその予防策も含めて解説します。

① 尿酸が高い人は注意!痛風を引き起こす高尿酸血症とは?

みなさんが毎年受けている健康診断の結果に尿酸値という項目があるかと思います。
尿酸とはプリン体が肝臓で代謝されたときに生じる老廃物です。
プリン体と聞くと身体によくないイメージがありますが、新陳代謝や細胞の増殖に利用され、細胞内の遺伝子を構成する成分でもあることから、私たちの身体にとって必要不可欠です。
食べ物や飲み物からとり入れられるだけでなく、私たちの体内でもプリン体は生成されており、身体の中で利用されなかった分が尿酸となり体外に排出されます。
摂取・生成量と排出量のバランスが良ければ問題ありませんが、排出しにくい・生成しやすい体質を持っていたり、過剰に摂取したりすると、尿酸値が上昇。その値が7.0㎎/dl以上になると高尿酸血症と診断されます。
尿酸値が7.0㎎/dlを超えると体内で尿酸が結晶化し、それが関節に沈着すると痛風発作が起こります。
高尿酸血症になればすぐ痛風発作が起きるわけではなく、数年経ってから起きる場合も多く、いつ発作が起こるかは予測できません。

② 高尿酸血症/痛風になりやすい人の特徴や痛風発作の症状は?

以下の項目に当てはまる人は高尿酸血症になりやすいと言われています。

・ お酒(特にビール)を飲む機会が多い
・ 砂糖入りの清涼飲料水を飲む機会が多い
・ 激しい運動をする
・ 男性(30〜40代男性の3割が高尿酸血症の疑いがある。女性は女性ホルモンが尿酸を排泄しやすい効果をもたらすため、男性よりなりにくいと言われている)
・ 肥満、メタボリックシンドローム
・ 血縁者に痛風既往
・ 水分摂取が少ない(お茶やお水などのカロリーのないもの)
・ 過度なストレスを感じている など

痛風発作は1年を通して発症しますが、最も起こりやすい時期は夏(5~8月)と言われています。その原因として以下の3点が挙げられます。

(1) 汗をかくことが多い:脱水状態になりやすく、相対的に血液中の尿酸値が上昇する
(2) アルコール(特にビール)の摂取量が増える:尿酸値上昇の原因であるプリン体を多く含んでおり、利尿作用もあるため脱水傾向になりやすい
(3) 清涼飲料水を飲む機会が増える:清涼飲料水にはショ糖やフルクトースなどの糖質が多く含まれており、それを分解する際に使われる物質にプリン体が含まれるため

上記の項目に当てはまる点が多いと、痛風発作を引き起こしやすいので注意が必要です。
痛風発作の好発部位は足の親指の付け根(第1中足趾節関節)であり、50~70%はそこで発症すると言われていますが、それ以外に膝やアキレス腱、足首などでも発作が起きる場合があります。
最初は痛みではなく、気持ち悪さや違和感のような症状を訴える人もいますが、本格的に発作が始まると、「骨が折れているかと思った」「死ぬほど痛い」「歩けない」などと表現されるほどの激痛がはしります。
痛みは24時間後にピークとなり、10日前後で自然に消えますが、結晶自体はなくなっていないため、忘れたころに再発するのが痛風の特徴です。

③ 自分でできる対策とは?

再発を防止するには、尿酸値を6.0㎎/dl以下にする必要があります。
数値を下げない限り結晶は溶けません。
痛風発作の経験がある人は、あまりの痛さから大多数が病院を受診するため、内服治療を受けている場合が多いのですが、根本的に解決するためには生活習慣の改善が非常に重要になってきます。
また、痛風発作の経験がなくても、尿酸値が7.0㎎/dlを超えている場合は、結晶が関節にたまっている・たまっていく可能性が高いので、痛風発作経験者と同様に意識して生活習慣改善に取り組みましょう。

(1) 食べ過ぎない・飲みすぎないようにしましょう

痛風は肥満の人に多いと言われています。腹八分目を意識し、バランスの良い食事を心がけましょう。
プリン体は水に溶けるため、「ゆでる・蒸す・煮る」など、調理法を工夫すれば少なくできます。ただし、煮汁を飲むと、溶けだしたプリン体をすべて摂取することになるので注意が必要です。
下記にプリン体が多い食品、少ない食品を挙げています。

<プリン体が多い食品>
レバー、干物、白子、あん肝、干しシイタケ、エビ、ビール など
<プリン体が少ない食品>
野菜全般、米、パン、うどん、卵、きのこ類、豆腐、乳製品 など

(2) 尿をアルカリ化する食品をとりましょう

尿酸はアルカリ性の水分によく溶けると言われています。
野菜・海藻類などのアルカリ性の食物を積極的に摂取することで、血中尿酸値を低く抑える効果が得られます。

(3) 水分をしっかりとりましょう

尿酸は尿から排出されるため、水分をしっかりととりましょう。
前述のとおり、お酒や清涼飲料水は尿酸値を上昇させる原因となるため、水やお茶からの摂取が望ましいです。
夏の暑い時期はもともと脱水傾向になりやすいため、特に水分摂取が重要となります。

(4) 適度に運動しましょう

全速力で走るなどの激しすぎる運動(無酸素運動)は、新陳代謝が活発になるためプリン体をより多く生成してしまいます。
ウォーキングや会話をしながらできる、軽い有酸素運動が痛風防止には効果的です。
今回は、夏に起こりやすい痛風発作をメインに解説しましたが、高尿酸血症が長く続くと関節だけでなく、腎臓にも結晶がたまります。
腎臓にたまると尿路結石の原因になったり、最悪の場合、腎不全を引き起こし透析が必要になったりする場合もあるため、尿酸値は決して軽視できません。
「今は何も症状がないから大丈夫」と見て見ぬふりをするのは危険です。
尿酸値が高い人は、症状が出ていなくても、静かに身体の中に結晶がたまっている可能性が高いので、生活習慣を振り返り、対策にあげたポイントを意識してとり入れてみましょう。

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保健師 大島かよ

投稿者プロフィール

病棟・クリニックでの患者さんとの関わりの中で、「もっと早く治療開始できていれば」、「病気になる前に何かできないか?」と考えるように。その思いから次第に予防に興味を持ち、「働く世代」に対するアプローチがしたい!と、産業保健の世界へ飛び込みました。
現在産業保健師として数社訪問、健保で特定保健指導を担うフリーランスの保健師です。
自分の経験なども盛り込みながら、産業保健に関連する情報を発信していきます。
【取材、記事協力依頼、リリース送付などはこちらからお願いします】

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