【2018年度の結果公表】残業代不払に対する監督指導結果
- 2019/9/4
- 働き方改革
2019年8月8日、厚生労働省は、残業代不払などから労働基準法違反で是正指導した結果を取りまとめた「監督指導による賃金不払残業の是正結果(平成30年度)」を公表しました。
本結果は、全国の労働基準監督署が、賃金不払残業に関する労働者からの申告や各種情報に基づいて企業への監督指導を行った結果、2018年度(2018年4月から2019年3月までの期間)に不払だった割増賃金が各労働者に支払われたもののうち、その支払額が1企業で合計100万円以上となった事案を取りまとめたものです。
今回は、是正結果、および監督指導の対象となった企業が対策として行った改善点をみていきます。
賃金不払残業とは
賃金不払残業とは、所定労働時間外の労働時間に対して、所定の賃金または割増賃金を支払うことなく労働を行わせることです。
「サービス残業」として社会問題にもなったことから、是正する動きが広がり、企業や各関係機関で削減に向けた取り組みが行われています。
監督指導による賃金不払残業の是正結果
「監督指導による賃金不払残業の是正結果(平成30年度)」によると、2018年度の是正企業数などは以下のとおりです。
(1) 是正企業数:1,768企業(うち、1,000万円以上の割増賃金の支払:228企業)
(2) 対象労働者数:11万8,837人
(3) 支払われた割増賃金合計額 125億6,381万円
2017年度は「働き方改革」によって、これまで支払われていなかった割増賃金を企業が支払ったことで、是正企業数などが大幅に増加していました。
そのため、2018年度の是正企業数は2017年度にくらべて102企業の減少、支払われた割増賃金の合計額は320億7,814万円の減少しています。
【対象労働者の業種別内訳】
・ 保健衛生業23,981人(20.2%)
・ 製造業23,922人(20.1%)
・ 商業15,516人(13.1%)
上記3業種で全体のおよそ半数が対象の労働者となっています。
指導された企業の取組
監督指導の対象となった企業の取り組みはさまざまですが、大まかには下記3種に分けることができます。
(1)他人が改ざんできない労働時間の管理記録を取る。ICカードや生体認証などのシステムを導入する。
(2)パソコンのログや入退館記録などとの照合を行い、申告時間との乖離(かいり)がないかチェックする。乖離があった場合は上司などに確認を行う。
(3)経営陣、労働者全員に対して、適切な労務管理や残業解消に向けた取り組みなど、全社的に改善の必要性についての説明を行い認識の共有をする。
残業代の不払問題は昨今広く知られるようになり、もし支払っていない場合には労基署から是正指導が行われることが多くなっています。
また、是正指導にも従わない場合には企業名の公表などが行われ、企業としての信用問題にも直結します。
加えて、指導を受けて割増賃金をまとめて支払うとなると、多額の金額が必要になります。
働き方改革とあわせて労働時間の適正な管理や残業代の支払いを行うことは、これからの企業経営にはより不可欠となっていくでしょう。
<参考>
厚生労働省「監督指導による賃金不払残業の是正結果(平成30年度)」