働き方改革の一環として残業削減は企業の大きな課題であることは間違いありません。
しかし、どうやって削減していいのか、悩まれている企業も多いことでしょう。
「残業するな」「早く帰れ」と言ったところで一向に早く帰る様子はなく、残業も減らないのが現状です。
残業削減成功に向けてはいくつかの「課題」がありますが、今回はそのなかでも「意識」について考えていきたいと思います。
意識に問題あり
残業削減に向けての意識には、「トップの意識」「管理職の意識」「組織・職場の風土」「一般社員の意識」とさまざまな課題があります。
自社に近い課題はないかチェックしてみましょう。
トップの意識
長時間労働の削減や休暇の取得促進について、企業としての方針が明確に示されていないため、働き方・休み方改善のための取り組みが進めづらい。
<対策の内容>
そもそも企業のトップが長時間労働の削減や休暇取得に前向きな考えでない限り絶対に成功はあり得ません。
そこで、これらを経営課題の一つとして位置づけ、会社の経営方針の実現に重要であるということを企業のトップから全社に向けた発信が不可欠です。
また、経営改革やトップメッセージに具体的な数値目標を示して、所定外労働時間や年次有給休暇に向けた取り組みや決意を明言するのがよいでしょう。
具体的な数値の設定には、安全衛生委員会等、労使による協議の場の活用が有効です。
さらに、策定した計画案は社内のみでなく、社外に向けて公式に発信することで、全社員への定着を図ることができるでしょう。
管理職の意識
部下の働き方・休み方に関するマネジメントに対する管理職の意識、モチベーションが低い。
<対策の内容>
社員のワーク・ライフ・バランスの実現には、上司のマネジメント能力によるところが大きいです。
そこで、管理職の人事評価項目にワーク・ライフ・バランス管理に関する項目を設定しましょう。
上層位になるにつれ、ワーク・ライフ・バランス管理への評価の重要度を高めることで、管理職の意識が変わってくるでしょう。
組織・職場の風土
管理職が長時間労働の傾向がある場合、部下も長時間労働となる傾向にある。
また、残業の実施が社員各人に任されており、自由に残業できる状況にある。
<対策の内容>
先輩や上司が残っている場合、部下は先に帰りにくいといったことが考えられます。
ここでも管理職の意識が最も大事であり、率先して退社することも大切です。
管理職を対象とした定時退社推奨日、定時退社推奨月間の設定等、管理職に対して定時退社を促すしくみが必要でしょう。
また、残業は社員各人の判断ではなく、管理職への事前申請・承認を要することも大切です。
部下には、終業時刻前に、①業務内容と残業する理由、②残業予定時間を上長に申請するルールを設けるとよいでしょう。
管理職は部下からの申請にもとづいて、本当に当日実施することが必要な業務か否かを判断し、必要と判断した時間についてのみ承認する必要があります。
さらに、長時間労働が評価される組織風土がある場合は、評価基準を変える必要があり、効率的な業務遂行に向けたインセンティブの付与などが効果的でしょう。
一般社員の意識
残業削減に対してなかなか積極的に取り組めない理由として以下が挙げられます。
①早く帰ってもやることがない
②残業代が稼げる
③休み前後の仕事の負荷が重くなることを嫌がる
④仕事が趣味になってしまっている。
<対策内容>
長時間労働は仕事効率の低下を生み、健康障害のリスクがあることを社員に向けて教育・研修するとともに、本人のモチベーション等にも配慮したうえで、仕事の量・質・裁量度を考慮した上で個人目標値を設定し、達成度合いを人事評価にも反映させるなどしましょう。
また、効率的な業務遂行が行えた場合には、賞与に反映させるなどもよいでしょう。
最後に
残業削減を成功させるためにはそれぞれの立場の人が、立場にあった「意識」を持つ必要があり、全社をあげて取り組まなければ一向に改善は見込めません。
人事評価に盛り込むなど少々強引なやり方だと思われる方もおられるかもしれませんが、少し負荷がかかる程度でなければ改革することは難しいのではないでしょうか。
企業にとっても社員にとってもメリットであるワーク・ライフ・バランス、「意識」を変えて取り組んでみてはいかがでしょうか。