【2028年4月義務化】50人未満の小規模事業場が今から始めたいストレスチェック準備
- 2026/8/21
- ストレスチェック

2028年4月1日から労働者数50人未満の事業場にもストレスチェックの実施が義務付けられます。これまで努力義務だった小規模事業場も年1回の実施に向けた体制づくりが必要です。
施行までまだ時間があるように見えますが、ストレスチェックは質問票を配って回収すれば終わる制度ではありません。運用方法を決め、従業員に説明して初めて機能します。
特に小規模事業場は経営者と従業員の距離が近いからこそ、「結果を社長や上司に見られるのではないか」という不安が生じやすい環境です。
制度の成否を分けるのは質問票の種類よりも、従業員が安心して答えられる仕組みをつくれるかどうかになります。
今回は、小規模事業場が今から取り組むべきストレスチェックの準備について紹介します。
ついに50人未満もストレスチェック義務化へ
ストレスチェックは労働者が自分のストレス状態に気づき、セルフケアや職場環境の改善につなげることで、メンタルヘルス不調を未然に防ぐための制度です。
精神疾患の有無を調べたり、不調のある人を会社が見つけたりすることが目的ではありません。
義務化までの経緯
2015年12月の制度開始以降、常時50人以上の労働者を使用する事業場には実施が義務付けられていました。
一方50人未満の事業場は努力義務にとどまっていましたが、2025年5月に公布された改正労働安全衛生法により対象が拡大されました。
その後、政令により施行日は2028年4月1日と定められています。
義務化の背景にある事業場規模の格差
義務化の背景には、事業場規模によるメンタルヘルス対策の格差があります。
制度見直し時の調査ではストレスチェックの実施割合は50人以上の事業場で81.7%だったのに対し、50人未満は34.6%にとどまっていました。
メンタルヘルス不調を未然に防ぐ必要性は事業場規模によって変わることはありません。
外部機関やオンラインサービスの普及により、課題だったプライバシー保護にも対応できる環境が整ってきたことから、すべての事業場へ対象が拡大されました。
事業場ごとの実施義務の判断
ストレスチェックの実施義務は会社全体の従業員数ではなく、原則として本社や営業所、店舗などの事業場ごとに判断されます。
例えば全社で100人いても、本社40人、A営業所30人、B営業所30人がそれぞれ別の事業場であれば、これまではいずれも50人未満のため努力義務でした。
施行日からはこうした各事業場にも実施が義務付けられます。
なお、事業者にはストレスチェックを実施する義務がありますが、労働者には受検義務はありません。
また、50人未満の事業場は義務化後もストレスチェック実施結果を労働基準監督署へ報告する必要はないとされています。
集団分析とその結果を用いた職場環境改善は、事業場規模にかかわらず努力義務です。
小規模事業場ほど「実施後」を先に考えよう
小規模事業場では人事・労務の専任者や産業保健スタッフがおらず、一人の担当者が複数の業務を兼ねていることも珍しくありません。
実施サービスの契約までは目が行き届いても、結果が返ってきた後の対応にまで手が回らず、抜け落ちてしまうケースが少なくありません。
プライバシー保護の徹底
最も重要なのはプライバシーの保護です。
個人結果は実施者から本人へ直接通知され、本人の同意なく事業者へ提供することはできません。
高ストレス者に該当したという理由だけで、その事実が会社に伝わるわけでもありません。
一方、本人からの医師面接の申し出があった場合、事業者は医師による面接指導を実施し、医師の意見を聴いたうえで、必要に応じて労働時間の短縮や業務負担の軽減などを検討する必要があります。
面接指導の申し出や結果を理由とする解雇、評価の引き下げなどの不利益な取り扱いは禁止されています。
また面接指導の結果の記録は、事業者が5年間保存しなければなりません。
外部機関への委託が推奨される理由
事業者が個人結果を見ない仕組みと、申し出があったときには適切に対応できる仕組みを両立させる必要があります。
厚生労働省の小規模事業場向けマニュアルでも、プライバシー保護の観点から、原則として外部機関への委託が推奨されています。
今から整えたい5つの準備
(1)社内の担当者と役割分担を決める
外部機関との連絡、対象者名簿の準備、社内周知などを担う実務担当者を決めます。ただし、この担当者が個人結果まで扱うわけではありません。
医師や保健師などの「実施者」、調査票の配布や回収などを行う「実施事務従事者」、社内調整や事務作業を担う「実務担当者」の役割を分けておくことが大切です。
なお、外部委託をしても制度を実施する責任は事業者に残ります。

出所元:厚生労働省「小規模事業場ストレスチェック制度実施マニュアル」
(2)外部委託先を料金だけで選ばない
委託先を選ぶ際は料金や回答方法だけでなく、実施者の資格や本人への結果通知、データの保存とセキュリティ、集団分析、医師の面接指導、相談窓口などを確認します。
基本料金に何が含まれ、面接指導や集団分析が追加料金になるのかも比較が必要です。
厚生労働省のマニュアルには「サービス内容事前説明書」のモデルが掲載されているため、契約前の確認に活用しましょう。
(3)個人情報の取り扱いをルール化し先に説明する
「誰が、どの情報を、どのような場合に見るのか」を文書にします。
個人結果は本人の同意なく会社に提供されないこと、受検しないことや面接指導を申し出たことを理由に不利益な取り扱いをしないことを、結果の保存方法、相談・苦情窓口などを明確にし、実施前に従業員に説明します。
小規模な部署では集団分析から個人が推測されない配慮も必要です。
受検者10人未満の集団については、原則として事業者が分析結果の提供を受けない運用とされているため、分析単位を委託先と事前に確認しておきましょう。
(4)高ストレス者への対応ルートをつくる
面接指導を担当する医師、申し出窓口、予約方法、実施場所、費用、面接後に医師の意見を受け取る流れを決めます。
面接を希望しない人もいるため、会社を介さずに相談できる外部窓口も案内できるようにします。
地域産業保健センターや「こころの耳」など、公的な支援先も確認しておくと良いでしょう。
(5)集団分析を職場改善につなげる
受検率や高ストレス者割合を確認するだけでは、制度が本来目指す職場改善まではたどり着けません。
仕事量や裁量の乏しさ、上司・同僚の支援、情報共有など、職場のストレス要因を集団分析から捉え、解決策を決めます。
人数が少なく十分な集団分析が難しい場合でも、匿名の意見聴取や日頃の安全衛生活動と組み合わせて、職場全体の課題を検討してみましょう。
<参考>
・厚生労働省「ストレスチェック制度・メンタルヘルス対策」
・厚生労働省「『小規模事業場ストレスチェック制度実施マニュアル』を公表します」
・厚生労働省「ストレスチェック制度等のメンタルヘルス対策に関する検討会」
・こころの耳「ストレスチェック制度について(労働者数50人未満の事業場)」



















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