2026年8月から産業医の解任も報告義務に~企業の担当者が知っておくべき改正ポイント~

産業医の選任・解任をめぐるルールが、2026年8月1日から変わります。
これまで、事業者は産業医を選任した際に所轄の労働基準監督署長へ報告する義務がありました。
一方で、産業医が辞任・解任・退任した場合の報告義務はなく、監督署側が「どの事業場で産業医が不在になったか」を把握しにくい状況が続いていました。
2026年4月28日に公布された改正労働安全衛生規則では、この点が見直され、産業医が辞任、解任、退任した場合にも監督署への報告が義務付けられることとなりました。
施行期日は2026年8月1日です。
今回は、改正の背景と実務上の対応ポイントをわかりやすく解説します。

産業医解任の報告が義務付けられた背景

労働安全衛生法13条などにより、常時50人以上の労働者を使用する事業場には産業医の選任が義務付けられています。

(産業医等)
第13条 事業者は、政令で定める規模の事業場ごとに、厚生労働省令で定めるところにより、医師のうちから産業医を選任し、その者に労働者の健康管理その他の厚生労働省令で定める事項(以下「労働者の健康管理等」という。)を行わせなければならない。
出所:労働安全衛生法

さらに労働安全衛生規則13条2項により、選任した産業医の氏名や選任年月日などは遅滞なく労働基準監督署に報告しなければならないとされています。

(産業医の選任等)
第13条 法第13条第1項の規定による産業医の選任は、次に定めるところにより行わなければならない。
(中略)
2 事業者は、産業医を選任したときは、遅滞なく、電子情報処理組織を使用して、次に掲げる事項を、第14条第2項各号に掲げる者であることにつき証明することができる電磁的記録等必要な電磁的記録を添えて、所轄労働基準監督署長に報告しなければならない。
出所:労働安全衛生規則

しかし、辞任・解任・退任時の報告義務はこれまで存在しませんでした。
そのため、産業医がいなくなっても労働監督署はそれを知る手段がなく、「選任義務があるのに産業医が不在になっている事業場」を把握・指導することが難しかったのです。
こうした状況を受け、2025年5月の衆議院厚生労働委員会の附帯決議において、「産業医の解任を行ったことを労働基準監督署が把握できる仕組みの検証を行うこと」が求められたことから、今回の「産業医解任の報告義務化」につながりました。

改正の具体的な内容

今回の改正労働安全衛生規則で新たに盛り込まれる条文(13条5項)は以下のとおりです。

第13条
(中略)
5 事業者は、法第13条第1項の規定により選任した産業医の辞任等があつたときは、遅滞なく、電子情報処理組織を使用して、次に掲げる事項を、所轄労働基準監督署長に報告しなければならない。ただし、当該報告は、後任者の選任に係る第2項の規定による同項第一号及び第七号に掲げる事項の報告をもつて、これに代えることができる。
一 第2条第2項第一号から第三号まで及び第八号に掲げる事項
二 辞任等があつた産業医の氏名及び辞任等の年月日
出所:労働安全衛生規則(2026年8月1日施行)

この条文により、具体的に義務づけられるのは以下の内容です。
産業医の辞任・解任・退任があった場合、事業者は遅滞なく所轄の労働基準監督署長に対して、当該産業医の氏名および辞任等の年月日等を報告しなければなりません。
ただし、産業医の選任に関する報告様式には、従来から「前任者の氏名や辞任年月日の記載」が義務付けられています。

「解任報告」の様式は任意とされていますが、現行の選任報告の様式を使用している場合は、そのままで差支えありません。
また、原則電子申請での報告になります。ただし電子申請を行う環境が整っていない場合は、当分の間、書面による報告も認められます。
なお、労働者数が50人未満になったことで産業医の選任義務がなくなった場合の辞任などについては、報告義務の対象外ですが、「労働安全衛生規則の一部を改正する省令の施行について」(令和8年4月28日基発0428第4号)では「報告することが望ましい」とされています。

実務上、必要な対応は?

今回の改正で新たに求められる対応は、大きく2点です。
1つ目は、産業医が辞任・解任・退任した際に労働基準監督署への報告を忘れないことです。
ただし後任をすぐに選任できる場合は、選任報告に辞任などの情報を合わせて記載すれば足りるので、追加の対応は必要ありません。
後任が決まるまでに時間がかかる場合は、辞任などの時点で別途報告が必要になりますので注意してください。
2つ目は、社内の手続きフローの見直しです。産業医が辞任・解任・退任となった場合の対応手順(誰が・いつ・どこに報告するか)を、担当者間で改めて確認しておきましょう。
特に、産業医の交代が生じやすい場面には注意が必要です。
なお、産業医が辞任した場合に、衛生委員会での報告義務は、労働安全衛生規則13条4項で以前から定められています。

第13条
(中略)
4 事業者は、産業医が辞任したとき又は産業医を解任したときは、遅滞なく、その旨及びその理由を衛生委員会又は安全衛生委員会に報告しなければならない。
出所:労働安全衛生規則

今回の改正により、産業医に関する報告義務は「選任」「辞任」の両方が整備されました。
産業医の辞任などから新たな選任まで時間を要する場合は、手続が一つ増えることになりますが、この改正の背景には「産業医不在の事業場をなくす」という目的があります。
産業医が不在の期間が生じると、長時間労働者面談、ストレスチェックの実施、衛生委員会への出席など、法定の産業保健業務が滞るリスクがあります。
辞任などが生じた際は、できるだけ空白期間が生じないよう後任の選任を早めに進めることが、企業としての安全配慮義務の観点からも重要です。

<参考>
・ 第184回労働政策審議会安全衛生分科会「資料2-1」、「資料2-2」
・ 厚生労働省「労働安全衛生規則の一部を改正する省令の施行について(PDF)」(令和8年4月28日基発0428第4号)

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蜂谷未亜株式会社ドクタートラスト 編集長

投稿者プロフィール

出版社勤務を経てドクタートラストに入社。産業保健や健康経営などに関する最新動向をいち早く、そしてわかりやすく取り上げてまいります。
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