【保健師監修】STOP!熱中症 クールワークキャンペーンを実施します

東京労働局は、5月から9月までの間、「STOP!熱中症 クールワークキャンペーン」を実施します。
これは、6月1日に改正労働安全衛生規則が施行となり、職場における熱中症予防対策が義務化される関係で、改正省令の周知や熱中症対策を強化する狙いがあります。
職場での熱中症により、近年は1年間で約30人が亡くなり、約1,000人以上が4日以上仕事を休んでいるという実態があり、対策強化を急ぐ必要があります。

2025年6月、企業における熱中症対策が義務化!対象は?求められる事項は?

以前の記事でも義務化の背景や企業における熱中症対策について解説いたしましたが、今回は、この「STOP!熱中症 クールワークキャンペーン」の報道発表資料の中で紹介されている「熱中症予防対策の主な取組事項」の概要と「職場で対策すべき熱中症対策」の詳細についてご紹介します。

STOP!熱中症 クールワークキャンペーンとは?

「STOP!熱中症クールワークキャンペーン」とは関係団体などとの連携の下、熱中症予防対策の徹底を図ることを目的としたものです。
期間は準備期間も含めて4〜9月で、7月は「重点取組期間」としてより対策を強化する必要があります。

暑さ指数(WBGT値 )の活用

暑さ指数(WBGT値)※1を活用した暑さ指数の実測※2をもとに、衣類の種類による補正や作業内容・環境を比較し熱中症リスクを確認しながら、リスクに応じた対策を検討、実行します。

※1 気温に加え 、湿度、風速、輻射(放射)熱を考慮した暑熱環境によるストレスの評価を行う暑さの指数です。
※2 実測できない場合は、その地域を代表する一般的な暑さ指数(環境省熱中症予防サイト「暑さ指数の実況と予測」+補正手段)により、参考値を算出してください

「ロゴマークシール」と「応急手当てカード」の活用

「Cool work TOKYO」ロゴ マーク シールと応急手当カードを各労働基準監督署の窓口等で配布しています。

エイジフレンドリー補助金の活用(中小企業事業者に限る)

高年齢労働者を雇用し、対象の高年齢労働者が補助対象の業務に就いている場合は 、労働災害防止に要する経費を補助する制度があります。

熱中症の対策っていつから始めればいいの?

みなさんは熱中症を聞くと「夏や残暑の間に気をつければ大丈夫でしょ?」と考えるかもしれませんが、実は熱中症の準備は4月から始まっています。

【準備期間】4月にチェックすべきこと

「どのような服装が適切か?」「熱中症にならないためには」など管理者、労働者に対する教育研修の実施など、暑さが本格化する前に、計画的に事前準備を進めておきましょう。

• 労働衛生管理体制の確立
• 暑さ指数(WBGT)の把握の準備
• 作業計画の策定
• 設備対策の検討
• 休憩場所の確保の検討
• 服装の検討
• 教育研修の実施
• 緊急時の対応の事前確認

引用:厚生労働省「STOP︕熱中症 クールワークキャンペーンを実施します~6月に改正労働安全衛生規則が施行されます~」 

【実施期間】5〜9月にチェックすべきこと

5〜9月は急激に気温や湿度が上昇し、熱中症の危険度が高まってくる季節です。
JIS規格に適合した暑さ指数計や、地域を代表する一般的な暑さ指数(環境省)を参考にして暑さ指数を随時把握することが重要です。
作業強度や着衣の状況によって異なりますが、「WBGT28度以上又は気温31度以上の環境下で連続1時間以上又は1日4時間を超えて実施が見込まれる作業」は熱中症の発生リスクが高まります。
事前に取り決めた内容をもとに、測定した暑さ指数に応じて以下の対策を徹底しましょう。

• 暑さ指数の低減
• 休憩所の設備
• 服装
• 休憩時間の短縮
• プレクーリング
• 水分・塩分の摂取
• 暑熱順化への対応
• 健康診断結果に基づく対応
• 日常の健康管理
• 作業中の労働者の健康状態の確認
• 異常時の対応

引用:厚生労働省「STOP︕熱中症 クールワークキャンペーンを実施します~6月に改正労働安全衛生規則が施行されます~」 

さらに、暑さが厳しい7月は「重点取組期間」として、以下のチェックも怠らないようにしましょう。

• 暑さ指数の低減効果を再確認し、必要に応じ対策を追加
• 暑さ指数に応じた作業の中断等を徹底
• 水分、塩分を積極的に取らせ、その確認を徹底
• 作業開始前の健康状態の確認を徹底、巡視頻度を増加
• 熱中症のリスクが高まっていることを含め教育を実施
• 体調不良の者に異常を認めたときは、躊躇することなく救急隊を要請

引用:厚生労働省「STOP︕熱中症 クールワークキャンペーンを実施します~6月に改正労働安全衛生規則が施行されます~」 

実際に熱中症の社員が出てしまったら?

熱中症による死亡災害はほとんどが「初期症状の放置・対応の遅れ」によって引き起こされています。
熱中症のおそれがある労働者を早期に見つけ、その状況に応じ、迅速かつ適切に対処することにより、熱中症の重篤化を防止することが重要です。
処置の例をフローチャートでご紹介します。これはあくまでも参考例であり、現場の実情にあった内容にしましょう。

熱中症が疑われる症状例は、ふらつき生あくび、失神、大量の発汗、痙攣などの「他覚症状(第三者が客観的に確認できる症状)」、とめまい、筋肉痛・筋肉の硬直(こむら返り)、頭痛、不快感、吐き気、倦怠感、高体温などの「自覚症状(自分で感じることができる症状)」があります。
「返事がおかしい」「ぼーっとしている」など、普段と様子が違う場合も熱中症のおそれありとして取り扱うことが適切です。
救急隊を要請すべきか判断に迷う場合は、安易な判断は避け、緊急安心センター事業(#7119)などを活用し専門家の指示に従いましょう。
また、医療機関への搬送が必要な場合や経過観察中は可能な限り一人の状態にせず、単独作業の場合は常に連絡できる状態を維持するようにしましょう。症状が良くなったと思っても、帰宅後に症状が悪化するケースもあるため、連絡体制や体調急変時等の対応をあらかじめ定めておくのも大切です。

上記のような体制や対応を決めていても、緊急時には気が動転して動けなくなる方も少なくありません。
冷却材や水分はどこに準備してあるのか、救急隊を呼ぶか迷ったときはどこに相談するかなど、従業員一人ひとりが自分事として備えておくことが重要です。

さいごに

職場での熱中症は、屋外だけでなく屋内作業でも発生することがあり、命に関わる深刻な問題です。
特に高温多湿な環境下での作業や、体が暑さに慣れていない時期はリスクが高まります。
熱中症を防ぐためには、作業環境の温度管理、こまめな水分・塩分補給、適切な休憩の確保、作業の見直しなど、企業と従業員が一体となった取り組みが不可欠です。
また、体調の変化をお互いに気づける「声かけ」や、暑熱順化のための準備期間も大切です。
誰もが安全に、健康的に働ける職場をつくるために、熱中症対策を日々の業務の一部としてしっかり取り入れていきましょう。

監修:根本裕美子(ドクタートラスト 保健師)

<参考>
・厚生労働省「STOP︕熱中症 クールワークキャンペーンを実施します~6月に改正労働安全衛生規則が施行されます~」
・厚生労働省「STOP!熱中症 クールワークキャンペーン(職場における熱中症予防対策)」
・環境省「熱中症予防情報サイト」

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伊藤アリサ株式会社ドクタートラスト

投稿者プロフィール

服飾デザイナーを経験した後、WEBデザイナーとして仕事に携わっていました。デザイナー業を長く経験していくうえで働く環境の大切さを強く感じ、健康経営の良さを世の中の働く方々に知っていただくお手伝いがしたいと考え、ドクタートラストに入社いたしました。みなさまが元気で健康な日々を送れるようなお役立ち情報を発信していきます!

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