新しい生活様式は住宅にも影響?令和4年度住宅市場動向調査

令和5年5月19日に国土交通省から令和4年度住宅市場動向調査結果のとりまとめが公表されました。

この調査は、統計法に基づき総務大臣の承認を受けた一般統計調査で、個人の住宅建設に関して影響を受けたことや資金調達方法等についての実態を把握し、今後の住宅政策の企画立案の基礎資料とすることを目的として、平成13年度から毎年度実施しているものです。

昨年までは「物件について何で情報収集しているか」、「なぜその住宅を選んだのか」などの項目で調査を行っていましたが、令和4年度調査では「住宅取得等の過程におけるインターネット活用状況」、「在宅勤務・在宅学習スペースの状況」、「宅配ボックス設置の状況」を新たな調査項目として追加しています。

これは新型コロナウイルス感染症がもたらした新しい生活様式が、住宅にどのような影響を与えたのかを調査するためです。今回は新しく追加された上記3項目について、見ていきます。

なお、調査の詳しい概要については下記の国土交通省ページをご覧ください。
国土交通省「「在宅勤務スペース」「宅配ボックス設置」などについて新たに調査しました!~令和4年度住宅市場動向調査の結果をとりまとめ~」

住宅取得等の過程におけるインターネット活用状況

まずは「住宅取得等の過程におけるインターネット活用状況」についてです。わかりやすく言い換えると、「転居先の探索~契約の過程で、どのようにインターネットを活用したか」という質問です。 質問項目は以下の8つです。

①インターネットを通じた情報収集
②インターネットを通じた問い合わせ、説明会・内見等の申込み
③オンライン会議システム(ZOOM、Teams、Skype等)を活用した物件説明・商談
④VR(仮想現実)またはAR(拡張現実)ツールを活用した物件内見
⑤オンラインでの住宅ローン審査(※民間賃貸住宅は対象外)
⑥オンラインでの重要事項説明(※民間賃貸住宅は⑤)
⑦電子署名等を活用した電子契約(※民間賃貸住宅は⑥)
⑧①~⑦の経験はない(※民間賃貸住宅は⑦,①~⑥の経験はない)

この質問の回答結果を6つの住宅種類別に集計、図にしたものが下記です。
住宅種類別集計
引用元:国土交通省「令和4年度 住宅市場動向調査~調査結果の概要(抜粋)~」

6つ全てで1番割合が高かったのは「①インターネットを通じた情報収集」でした。次に高いのが「②インターネットを通じた問い合わせ、説明会・内見等の申込み」なので、情報収集で目星をつけて、気になるものを確認しに行く申込までは皆さまインターネットで行っているようです。筆者自身も引っ越しの際は活用するので、この結果は十分理解できます。

一方、コロナ禍で急速に普及したオンライン会議システムや昨今話題のVRなどは、意外にもあまり活用されていないようです。実際に自分が住むかもしれない住宅に関する説明は対面で、内見は足を運んで自分の目で見たい!という方が多いということでしょう。

在宅勤務・在宅学習スペースの状況

次に「在宅勤務・在宅学習スペースの状況」についてみていきます。新型コロナウイルス感染症がもたらした新しい生活様式の一つに在宅勤務があります。働き方の選択肢を広げる大きなきっかけになりましたね。

そこで本調査でも、在宅勤務や在宅学習スペースの有無について質問しました。質問項目と回答結果は以下のとおりです。

①在宅勤務等に専念できる個室がある
②在宅勤務等に専念できる仕切られたスペースがある
③仕切られてはいないが在宅勤務等に専念できるスペースがある
④在宅勤務等に専念できる個室やスペースなどはない

在宅勤務や在宅学習スペースの有無
引用元:国土交通省「令和4年度 住宅市場動向調査~調査結果の概要(抜粋)~」

注文住宅や既存住宅など、住宅購入世帯では「① 在宅勤務等に専念できる個室がある」の回答割合が1番高かったのに対し、民間賃貸住宅では「④ 在宅勤務等に専念できる個室やスペースなどはない」の割合が一番高いという結果です。

賃貸ではなく住宅を「買う」となると、書斎だったり子ども部屋だったり、部屋割りを考えて購入する方がほとんどかと思います。そういった間取りを考えるときに在宅勤務を意識してスペースを確保する方々が増えているのでは、と考えられますね。

民間賃貸住宅で1番割合が高いのは上記のとおり④ですが、注目して欲しいのは①もほぼ同割合だということです。
きっと同じ調査を在宅勤務がまだ普及していない新型コロナウイルス感染症拡大前にも行っていたら、ここまで結果は拮抗していなかったと思います。
通常だと家賃や立地を優先しがちな賃貸住宅でも、在宅勤務のスペース確保を重要視している方が増えてきている、と言えるでしょう。

宅配ボックス設置の状況

最後に「宅配ボックス設置の状況」についてです。回答結果は以下のとおりです。
宅配ボックス設置の状況
引用元:国土交通省「令和4年度 住宅市場動向調査~調査結果の概要(抜粋)~」

設置している割合が圧倒的に高いのは「分譲集合住宅」です。「既存集合住宅」も設置している割合の方が若干ではありますが高いという結果ですので、宅配ボックスの有無は戸建か集合かという点が大きく影響していそうです。

コロナ禍では不要不急の外出を控えるように、とされていましたため、ネットで買い物をする機会が増えました。加えて「置き配」という配達方法も、コロナ禍で対面接触を極力避けるためにうまれた新しい方法ですが、戸建ならば玄関などに置くこともできますが、集合住宅ではたくさんの人の荷物が集まるため、なかなかそうもいきません。宅配ボックスの設置状況の結果は、こういった事情が表れていると感じます。

今回は、新型コロナウイルス感染症がもたらした新しい生活様式が、住宅にどのような影響を与えたかを中心に確認しました。住宅を買う、引っ越しをするというのは大きなライフイベントだと思います。

また、「在宅勤務」というのは働き方の選択肢としてもっと普及していくものだと考えていますので、今後どのように働きたいか、どんな環境なら働きやすいかも考えながら住宅を探すといいかもしれませんね。

<参考>
・国土交通省「「在宅勤務スペース」「宅配ボックス設置」などについて新たに調査しました!~令和4年度住宅市場動向調査の結果をとりまとめ~」
・国土交通省「インターネットによる物件情報収集が大きく増加しています!~令和3年度住宅市場動向調査の結果をとりまとめ~」

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投稿者プロフィール

幸福度や労働生産性が高いと評される北欧(ノルウェー)へ留学した際、仕事に対する日本と北欧の良いところ悪いところをひしひしと感じてきました。この良いところをお伝えすべく、北欧の労働環境などに関しての情報はもちろん、身近な話題や疑問を分かりやすくお仕えできるよう日々勉強中です!
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