2021年「職場における熱中症による死傷災害の発生状況」を公表します!~熱中症予防対策のクールワークキャンペーンとは~

厚生労働省は、2021年の「職場における熱中症による死傷災害の発生状況」を公表しました。
熱中症とは、高温多湿な環境において、体内の水分と塩分(ナトリウムなど)のバランスが崩れたり、体内の調整機能が働かなくなったりして、めまい・失神、筋肉痛・筋肉の硬直、大量の発汗、頭痛などのさまざま症状を起こす健康障害で、適切な処置が遅れた場合は死に至ることがあります。
今回は、2021年の熱中症による死者数の状況を踏まえ、業種別の死傷者数や死亡災害の事例、熱中症予防対策の「クールワークキャンペーン」についてご紹介します。

職場での熱中症による死傷者数と月別発生状況

2021年の職場で熱中症による死傷者数(死亡・休業4日以上)は561人でした。
コロナ禍前の2019年は829人、コロナ禍の2020年は959人となっており、2019年よりも2020年の熱中症による死傷者数が増えた原因としては、コロナ禍初めての夏を迎え、マスクを常に着用しなければならない新しい生活様式となったためと考えられます。
2021年の月別発生状況をみると、8月が一番多く269件、次いで7月が213件、6月が41件という結果でした。
全体の8割以上が7月および8月に発生しているようです。
7月、8月以外の時期も熱中症にならないわけではないので、ほかの時期も油断は禁物です。

業種別の死傷者数は?

業種別の死傷者数状況をみると、建設業が130件と最も多く、次いで製造業が87件、運送業が61件となっています。
建設業は屋外で作業することも多く、転落やけが防止のためにヘルメットを着用したり、命綱を装着したり、たくさんのものを身につけなければならなかったりするため、熱中症になりやすい状況にあるのでしょう。
ここで、2021年の熱中症による死亡災害の事例をご紹介します。

業種:鉄骨・鉄筋コンクリート造家屋建築工事業

年代:10代
気温:29.9℃

解体作業中に現場主任者が被害者の動きが鈍く、怠そうな様子であることに気づき、休憩所で休憩させました。
約10分後に被災者に声をかけて体をゆすると倒れ、動けない状態となったため、救急搬送したものの、数日後に死亡しました。

業種:その他の製造-その他

年代:60代
気温:約50℃  ※ 圧力容器解放後の室温

菌床椎茸の製造工程において、圧力容器の扉を閉めようとしたが閉め方がわからず、当該室内に計25分程度滞在していました。
その間、圧力容器から出てくる熱風により室温が上昇しており、工場長が倒れている被災者を発見。救急搬送されたものの、数日後に死亡しました。

この他にも「休ませて様子を見ていたところ容態が急変した」、「倒れているところを発見された」など、管理が適切になされておらず被災者の救急搬送が遅れた事例が多くありました。
また、作業に従事し始めて日が浅い場合が多く、気温や室温の高い状況に慣れていない場合に、熱中症で死亡する例が多いようです。

熱中症予防対策の「クールワークキャンペーン」を確認しましょう

厚生労働省は職場における熱中症予防対策として「stop!熱中症 クールワークキャンペーン」を5月1日から9月30日まで行っています。
キャンペーン期間中の事業者は以下の3点を重点的に取り組んでください。

・ 初期症状の把握から緊急時の対応までの体制整備を図ること
・ 暑熱順化が不足していると考えられる者をあらかじめ把握し、きめ細かな対応をすること
※暑熱順化とは、暑熱環境下での作業に身体の体温調節や循環の機能が慣れていないこと。入職直後や夏季休暇明けの者は暑熱順化の不足が疑われ、熱中症の発症リスクが高い
・ WBGT 値を把握してそれに応じた適切な対策を講じること
※WBGT値とは、気温に加え、湿度、風速、輻射(放射)熱を考慮した暑熱環境によるストレスの評価を行う暑さの指数

特に7月は重点取組期間となっています。
下記のチェックリストを活用して、熱中症予防に取り組みましょう。

□ 実施した対策の効果を再確認し、必要に応じ追加対策を行いましょう
□ 特に梅雨明け直後は、WBGT値に応じて、作業の中断、短縮、休憩時間の確保を徹底しましょう
□ 水分、塩分を積極的に取りましょう
□ 各自が、睡眠不足、体調不良、前日の飲みすぎに注意し、当日の朝食はきちんと取りましょう
□ 期間中は熱中症のリスクが高まっていることを含め、重点的に教育を行いましょう
□ 休憩中の状態の変化にも注意し、少しでも異常を認めたときは、ためらうことなく病院に搬送しましょう

今回は、2021年の「職場における熱中症による死傷災害の発生状況」から、熱中症予防対策の「クールワークキャンペーン」をご紹介しました。
事業者の方はこれらを従業員に周知し、今回ご紹介した予防対策の徹底や従業員の体調の把握、緊急時の対応などを確認し、職場から熱中症による死傷者が出るような悲しいことが起こらないよう気を付けましょう。

<参考>
・ 厚生労働省「令和3年「職場における熱中症による死傷災害の発生状況」(確定値)を公表します」
・ 厚生労働省「令和4年「STOP!熱中症 クールワークキャンペーン」実施要綱(PDF)」

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丹野 雪株式会社ドクタートラスト

投稿者プロフィール

前職は鉄道会社で働いていました。鉄道業界は夜勤もあり不規則な勤務のため体調を崩す同僚も多かったので、働き方で悩んでいる方々の健康をサポートしていけたらいいなと思っています。
読みやすくわかりやすい情報を提供してまいります。

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