【2022年4月から】オフィスの最低気温は17度から18度に変更~事務所衛生基準規則の一部が改正されます~

2022年4月1日、「事務所衛生基準規則の一部を改正する省令」が施行され、オフィス内の気温の基準が変更されます。
事務所衛生基準規則とは、一般に「事務所則」と呼ばれるオフィスの衛生基準を定めた厚生労働省令です。
今回は、事務所則の改正内容とその背景をわかりやすく解説します。

現行の事務所則では「17度以上、28度以下」

2022年4月1日に改正されるのは、事務所衛生基準規則第5条「空気調和設備等による調整」のうち気温について定めた3項の部分です。
現行の事務所則では、以下のように「室の気温が17度以上28度以下になるように努めなければならない」と規定されています。

(空気調和設備等による調整)
第5条 事業者は、空気調和設備(空気を浄化し、その温度、湿度及び流量を調節して供給することができる設備をいう。以下同じ。(中略)
3 事業者は、空気調和設備を設けている場合は、室の気温が17度以上28度以下及び相対湿度が40パーセント以上70パーセント以下になるように努めなければならない。事務所衛生基準規則

一般的な室内の適温は季節によって違いがありますが、夏場は25~28度、冬場は18~22度とされていますので、現在の規定のおおよその範囲内といえます。

2022年4月1日以降の事務所則では「18度以上、28度以下」

2022年4月1日付で改正される事務所則では上記第5条3項が「事業者が空気調和設備を設けている場合の、労働者を常時就業させる室の気温について、18度以上28度以下になるように努めなければならないものとすること」に変更され、最低気温が1度高くなります。
一見すると、大幅な変更はないような印象を受けますね。
では、なぜ事務所則が改正されることになったのでしょうか。
この背景には、WHO(世界保健機関)が2018年に公表した「住宅と健康のガイドライン」(WHO Housing and health guidelines)において「冬期の高齢者における血圧上昇に対する影響などを考慮し、室内温度の基準を18度以上」と勧告したこと、また同様の観点から2022年4月1日付で改正される「建築物における衛生的環境の確保に関する法律施行令」の基準との整合性を図ることがあります。
日本は現在、少子高齢化が急速に進行しており、内閣府「令和3年版高齢社会白書」によれば、2035年には人口のおよそ3人に1人が65歳以上の高齢者となる社会が到来すると予測されています。
また、男女ともに平均寿命が延びており、2019年の平均寿命は女性が87.45年、男性が81.41年で前年にくらべて女性は0.13年、男性は0.16年上回っています。
平均寿命はさらに延びていくことが予想されています。
すでに多くの高齢者がは就労している環境、そしてそれが今後も加速していくであろうことを見据えて、事務所衛生基準規則も改正されるのでしょう。

事業場に高齢者がいなくても室温を見直そう!

現在、皆さんの事業場の事務所内は適温でしょうか。
人によって一般的な室温であっても暑い、寒いなど感じ方は違いますし、あまり気にしない方もいるかもしれません。
室温は仕事のパフォーマンスや体調にも影響を及ぼしますので、今一度、室内の温度計を確認し、従業員が適切な室温だと感じる環境で仕事ができているか確認しましょう。
また、最低室温が18度になることによって、冷房・暖房機器の節電になる可能性もあり、SDGsの観点からも地球環境に良いエネルギーの使い方になると考えられます。
改正事務所衛生基準規則の施行は2022年4月1日です。
衛生管理者の方は従業員に高齢者がいなくとも事務所内の室温を再確認し、従業員の皆さんが快適に働ける職場環境を作っていきましょう。

<参考>
・ 厚生労働省「「事務所衛生基準規則の一部を改正する省令案要綱」の答申」
・ 内閣府「令和3年版高齢社会白書」
・ WHO「WHO Housing and health guidelines」

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • follow us in feedly

丹野 雪株式会社ドクタートラスト

投稿者プロフィール

前職は鉄道会社で働いていました。鉄道業界は夜勤もあり不規則な勤務のため体調を崩す同僚も多かったので、働き方で悩んでいる方々の健康をサポートしていけたらいいなと思っています。
読みやすくわかりやすい情報を提供してまいります。

この著者の最新の記事

関連記事

解説動画つき記事

  1. 【動画あり】改正育児・介護休業法の概要と背景を専門家が解説!

一目置かれる健康知識

ページ上部へ戻る