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不合理な待遇差解消のための点検・検討
- 2021/5/25
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不合理な待遇差解消に向けて
「働き方改革関連法」により、大企業では2020年4月から、中小企業では2021年4月から、正社員と非正規社員(有期雇用労働者・パートタイム労働者・派遣労働者)の間の不合理な待遇差が禁止されました。
背景には、少子高齢化社会の中で、雇用情勢が慢性的な人手不足の状況下において、「正規」と「非正規」の理由なき格差がないことで、どのような雇用形態を選択しても、労働者が公正な評価を納得することができ、労働者のモチベーションを向上させること、多様な働き方を自由に選択できるような社会を作ることが目標とされています。
不合理な待遇差の解消の考え方
働き方改革関連法に関係する「パートタイム・有期雇用労働法」では、同一事業主に雇用される、正社員と、短時間や有期雇用の労働者の基本給や賞与などの待遇において、不合理な待遇差を「均等待遇」「均衡待遇」のいずれかの観点から禁止しています。
「均等待遇」とは、職務の内容や、職務内容の変更範囲が同条件下の労働者において、雇用形態による差別的な待遇の格差を禁止するものです。
ただし、能力や経験などにより、待遇差が生じることは問題ないとされています。
「均衡待遇」とは、正規社員と短時間・有期雇用労働者の間で職務の内容や、職務内容の変更範囲を考慮して、不合理な待遇差が生じることを禁止するものです。
なお、均等待遇、均衡待遇は、基本給・賞与・手当・福利厚生・教育訓練・安全管理などのすべてのにおいて、格差解消が求められます。
不合理な待遇差を解消する際の留意点
不合理な待遇差の点検、解消にあたっては、労働組合または従業員の過半数を代表する従業員と話し合い、合意形成を図ることが重要です。
短時間・有期雇用労働者の意見が反映されるような工夫、有意義な話し合いのための適切な情報提供に注意が求められます。
また、待遇差解消にあたり基本的には、労使で合意することなく正規労働者の待遇を引き下げることにより、待遇差をなくすことは望ましい対応とは言えないため、労働者に対し、労働者が受ける不利益の程度、労働条件変更の必要性、変更後の規則内容の相当性、交渉の状況、その他変更にかかる事情についての周知が欠かせません。
是正策の検討にあたって
正規社員と、短時間・有期雇用労働者間の待遇差が不合理でないとはいえない待遇については、是正を行う必要があります。
企業単体で待遇差を是正することが難しいときは、行政が運営する相談支援サービスや、助成・融資サービスを利用することも有効でしょう。
① 働き方改革推進支援センター
各都道府県に設置され、中小企業における「非正規雇用労働者の待遇改善」「長時間労働の是正」「生産性向上による賃金の引上げ」「人手不足の解消に向けた雇用管理改善」に向けた取り組みを支援しており、就業規則の作成や賃金規定などについて無料で相談できます。
② 職務分析・職務評価の導入支援
厚生労働省では、労働者の均等・均衡待遇の状況を確認するための「職務評価」の実施に際して、セミナーの開催や専門知識を持った「職務評価コンサルタント」を企業に無料で派遣しています。
③ よろず支援拠点の活用
中小企業庁では、各都道府県に「よろず支援拠点」を設置し、働き方改革や人事労務管理の専門家である「人手不足対応アドバイザー」を配置しています。
④ 助成制度の活用
厚生労働省では、短時間・有期雇用労働者のキャリアアップや、処遇改善の取り組みや正社員化を実施した事業主に対して「キャリアアップ助成金」を支給しています。
さまざまな働き方が存在する昨今において、雇用形態による格差の是正はどの業界、どの企業においても今後重要とされていくと思います。
個人の能力に応じて適切な待遇が受けられる職場は、今後の日本企業の中でより良い人材を集めることができるのかもしれません。