
2019年に施行された「働き方改革関連法」は、労働時間の適正化や多様な働き方の推進を目的としています。
そのなかでも時間外労働(残業)の上限規制は、長時間労働の是正という観点から大きな注目を集めてきました。
今回のアンケート調査は、働き方改革関連法の施行後5年を迎えるにあたり、主に中小企業の時間外労働の現状、現行の時間外労働上限規制による支障、働き方改革見直しへの考えなどを把握するために実施されたものです。
調査は 2025年11月10日~25日にかけて行われ、東京商工会議所会員企業 1,079社が回答しています。
現行の時間外労働上限規制の概要
○法定時間外労働*1の上限は、原則「月45時間・年間360時間」。
○臨時の必要がある特別な場合については、36協定で特別条項を設け、労使合意のもと、以下の上限を定めることができる。・時間外労働が「年720時間以内」(自動車運転の業務は年960時間以内)
・時間外労働と休日労働の合計が「月100時間未満」*2*3
・時間外労働と休日労働の合計が「複数月平均80時間以内」*2*3
(「2か月平均」「3か月平均」「4か月平均」「5か月平均」「6か月平均」いずれも)
・時間外労働が月45時間を超えることができるのは、「年6か月まで」*2
※1 労働基準法で定められた「1日8時間・週40時間」の法定労働時間を超える労働
※2 自動車運転の業務は適用外
※3 建設事業で、災害復旧・復興事業を行う場合は適用されない
※4 医師は別途、省令による定めあり出所元:東京商工会議所「『働き方改革に関する緊急アンケート調査』集計結果」
調査結果のポイント
上限規制の影響
調査結果によると、現在の時間外労働の上限規制について 全体では約8割の企業が「事業運営に支障なく対応できている」と回答しています。これは一定程度、法令順守や労働時間管理の改善が進んでいることを示唆しています。
一方で、約2割の企業では「支障が生じている」と回答しており、規制の負担を感じている企業が少なくないこともわかりました。
特に宿泊・飲食業、運輸業、建設業では、支障を感じる割合が高く、人手不足や繁忙期の波といった業種固有の事情が大きな要因となっています。
対応が困難な理由について
「支障が生じている」と答えた企業に具体的な規制項目を聞いたところ、「月間の時間外労働45時間を超えられるのは年間6か月まで」という項目が最も多く挙げられました。
これを困難とする企業は、繁忙期や受注状況により労働時間の調整が難しいと回答しています。
支障の要因として最も多かったのは「全社的な人手不足」であり、これが他の要素と絡み合いながら規制に対応しにくい状況を生んでいます。
また、宿泊・飲食や建設といった業種では、繁忙期と閑散期の差が大きいことや、専門性を有する人材の確保が難しい点も挙げられています。
現場の対応と並行して新人教育も発生することで残業時間の発生につながっています。
働き方改革の見直しへの意向
今回の調査では、働き方改革に対する見直しの意向についても質問が行われました。
その結果、「上限を維持しつつ運用の見直しが必要」という回答が約44.5%と最も多く、「上限規制の緩和が必要」という回答も約18.1%に上りました。
これらをあわせると、規制の現状維持のみではなく、何らかの調整や見直しを求める声が6割を超える結果となっています。
自由回答では、繁忙期や業種の特性に配慮した柔軟な運用や副業・兼業の増加に対応した制度設計などが挙げられていました。
これらは、単純な規制緩和ではなく、企業の実態業種の特性に即した制度設計への期待を示しています。
まとめ
今回の「働き方改革に関する緊急アンケート調査」では、働き方改革関連法施行後5年を経た中小企業の対応状況と課題が浮き彫りになりました。
全体としては時間外労働の上限規制への対応が進み、企業8割が支障なく運営できていると回答しているものの、一部人手不足や繁忙期の波が大きい業種では規制対応に困難を感じる声が根強いことが確認されました。
特に人手不足が深刻な業種では、限られた人材で労働時間を調整することが難しく、結果として規制対応に支障をきたしている実態があります。
多くの企業が「現状の上限を維持しつつ、運用面での見直しを図るべき」と回答しています。
プライベートな時間が増えたり、仕事効率が上がり売上が向上したりなどの好影響の一方で、上記のような悪影響が生じている現状を踏まえると、単純な緩和ではなく、業種の特性に合わせた柔軟な制度運用の必要性を強く感じました。
<参考>
東京商工会議所「『働き方改革に関する緊急アンケート調査』集計結果」

















