就活ハラスメント防止策の義務化へ進む日本~企業に求められる対応とは~

2025年3月11日に就活中の学生へのセクハラ、いわゆる就ハラ(就活ハラスメント)の防止策を義務化する、労働施策総合推進法などの改正法案が閣議決定されました
国は以前から就活生に対するハラスメントを問題視しており、改正法案をもとに新たな指針を作成することで、企業全体に防止策の徹底を求める狙いがあります

就活ハラスメント(就ハラ)とは

就ハラとは、求職者に対するセクハラやパワハラを指します。
厚生労働省作成のリーフレット内では以下のように説明されています。

「就活ハラスメント」とは、「就職活動中やインターンシップの学生等に対するセクシュアルハラスメントやパワーハラスメント」のことをいい、立場の弱い学生等の尊厳や人権を不当に傷つける等の人権に関わる許せない行為です。
出所元:厚生労働省「就活ハラスメント対策リーフレット(PDF)」

たとえば、就職の面接の場面で恋人の有無について聞く、オンライン面談時に全身の姿や部屋の様子を映すことを求める、採用の見返りに不適切な関係を迫る、インターンシップ中にしつこく食事やデートに誘うなどの行為は就ハラに該当します。
求職者という立場の弱さを企業側が利用して、不適切な要求などを行う行為は、学生などに精神的な負担を強いるだけでなく、公平な就労機会を損なうものです。
つまり、就ハラは「個人間の問題」にとどまらず、雇用機会の均等にかかわる問題であり、社会全体としてこれの防止に向けて努力していく必要があります。

義務化が予想される防止策

就ハラの防止策義務化が含まれた改正法案はこれから国会での審議に移ります。
もし、改正法案が国会を通過し、施行となった場合、どんな義務化が予想される防止策にはどんなものがあるでしょうか。

相談窓口の設置

相談窓口の設置が義務化される可能性は高いでしょう。
パワハラ防止法の際にも相談窓口の整備が義務づけられたことから、今回も求職者向けのハラスメント相談窓口の設置と周知の義務化が予想されます。
こうした、なにかあったときに通報できる制度は、求職者の安心感だけでなく企業側に対する抑止力にもなるでしょう。

ハラスメント防止指針の策定と周知

就ハラに対して、企業として「NO」を打ち出す指針の策定・周知も求められるでしょう。
社内ルールを明確にして、採用担当への教育を行い、面接時やインターン生に接する際のマニュアルなどを策定する必要がでてくるかもしれません。
また、こうした方針の社内や求職者に対する周知も求められるでしょう。

面接やインターンのルール作り

厚生労働省のリーフレット内には以下の文言があります。

学生と接する際、採用担当者は可能な限り2名以上とし、オンラインも含め面談やオリエンテーションの際は複数名で対応するなど、採用活動におけるルールを明確にしましょう。
出所元:厚生労働省「就活ハラスメント対策リーフレット(PDF)」

現状では、強制するものではありませんが、改正法案が成立すれば、こうしたルールの策定が義務化されることが予想されます。

違反時の対応手順

就ハラが起こった際に、どういった手順で調査、対処するかを事前に決めておく必要がでてくるでしょう。
今回の改正法案が成立すれば、ハラスメント防止策の策定に応じない企業に対して指導や企業名公表まで行えるようになる見通しです。
そのため、企業としても就ハラの隠ぺいが起こらないように、記録・報告体制をしっかりと整えておかなくてはいけません。

就ハラはこれから減っていくのか

今回の改正法案の閣議決定は就活ハラスメントの撲滅に向けて大きな一歩となるでしょう。
2024年5月に厚生労働省が公表した「令和5年度 厚生労働省委託事業 職場のハラスメントに関する実態調査報告書」によると、2020~2022年度卒業でインターンシップ中に就活等セクハラを一度以上受けたと回答した者の割合は30.1%、インターンシップ以外の就職活動中に受けた者の割合は31.9%に上りますが、被害が表出するケースはまだまだ少ないのが現状です。
就ハラ防止策が義務化され、窓口の整備などが行われることで、これまで泣き寝入りしてきたハラスメント被害者たちが声を上げるきっかけになるかもしれません。
また、企業が方針を明確に打ち出すことは、ハラスメントの抑止力にもなるでしょう。
しかし、法律だけができても、運用の甘さや意識の低さによって「義務だからとりあえずやっている」という企業が増えてしまえば意味がありません。
大切なのは、法律の変化とともに「就活ハラスメントを許さない」という文化を醸成していくことです。
すべての人が公平な就労機会を得られるように、企業としても個人としても、意識を変えていくことが求められています。

<参考>
・ 厚生労働省「就活ハラスメント対策リーフレット(PDF)」
・ 厚生労働省「令和5年度 厚生労働省委託事業 職場のハラスメントに関する実態調査報告書」

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秋本雄基俳優兼ライター

投稿者プロフィール

俳優として舞台やCMなどに出演する傍ら、ライターとしても活動中。
持ち前の情報収集能力で、産業保健について猛勉強中です。
ちょっと難しい産業保健のお話をわかりやすく、おもしろくお届けできるように頑張ります。
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