2022年4月から、中小企業においてもパワハラ対策が義務化されます。
ハラスメントに関しては、体制整備を始め、対応フローを学ぶ、概念を理解するなど、取り組むことは山のようにあります。
義務化と同時に充実した社内体制を敷くためにも、ハラスメントの基礎をきちんと押さえましょう。
本日は、企業としてハラスメントを管理する視点、ハラスメントを起こす視点、ハラスメントを受ける視点の3点から、ハラスメントの全体像を考えていきます。
1 ハラスメントを管理する視点~社内のハラスメント担当者として覚えておきたいこと~
まずは、ハラスメントの対応フローを理解しましょう
ハラスメントには、パワーハラスメントやセクシュアルハラスメント、リモートハラスメントなど、さまざまな種類があります。
しかし、これらはすべて同じ対応フローを取ることをご存知ですか?
相談者に寄り添う力も必要ですが、まずは次のハラスメント対応フローをしっかりと理解することが大切です。
<ハラスメント対応フロー>
ハラスメントの相談が入った
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ハラスメント相談者の話をよく聞き、情報を整理する(A)
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ハラスメント行為者に話を聞き、その人の考えや見方を確認する(B)
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必要に応じて、周囲の人の話を聞き、第三者からの情報を整理する(C)
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(A)から(C)の情報を総合し、企業としてハラスメントの事実があるかを検討する
↓
企業としてハラスメントを認めたら、ハラスメント認定を行う
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ハラスメントの内容に応じた対処を企業として行う(行為者を罰する、行為者にコミュニケーション指導を行う、職場内で研修を行うなど)
次に、ハラスメント行為者のよくある行動を理解し、注意を促します
ハラスメント行為者の中には、自分が通報されたことを知ると「誰がそんなことを言ったんだ?」と言い、相談者を突き止めようとしてしまうことがあります。
相談者や周囲の人にとっては恐怖を感じる展開になります。
そのため、相談者の立場を守るためにも、行為者にはあらかじめ報復行動を禁止する旨を伝えます。
最後に、外部相談を契約したからといって任せきりにしない
「餅は餅屋。あとは任せれば大丈夫」では、ありません。「餅を餅屋に作ってもらったら、それをあんこ餅にするのか、きなこ餅にするのか」は、企業の対応次第です。
外部相談ができることは、相談者が勇気をもって第一歩を踏み出すきっかけを作ること、第三者の立場で状況を適切にまとめること、企業様へ対応のアドバイスを行うことなどです。
最終的に問題を解決し、対応を検討することができるのは企業様ですので、積極的に課題解決対応へ参加する姿勢が求められます。
2 ハラスメントを起こす視点~ハラスメントの行為者にならないために気を付けるポイント~
肩書の付いている人は、ハラスメントとの親和性が高い
肩書というものは、人に圧迫感を与えてしまうものです。
その点では、管理監督者は、他の従業員とはコミュニケーションにおいてそもそものスタートラインが異なると考えることができますね。
管理監督者は、自分の言葉一つが圧迫感を持たせる効果があると考え、自身の言動を常に振り返る姿勢が望ましいですね。
「自分もそうやって育てられた」は、理由にならない
外部相談窓口で対応を行っていると、相談者から「自分もそうだったからという理由で、こんな扱いをされるんです」という話を伺うことがあります。
現代は、10年どころのスパンではなく時代が変化しています。
学校教育や法律が変わるのと同様に、人の育て方も時代とともに変わっているということを念頭に置きましょう。
人を育てる立場にある人は、そのような時代へのアンテナの感度を高め、現代の常識を取り入れながら部下教育に取り組むことが求められます。
視野を広げる
ハラスメント行為者は、自身の価値観が絶対であると考える傾向があります。
ハラスメントの大きな要因は、一方的な抑圧です。コミュニケーションの活性のためには、人の考えを若干でも取り入れることが大切ですが、それができないときは一方的なコミュニケーションになってしまうものです。
ハラスメントの行為者にならないためには、日ごろから、さまざまな角度から物事を考え、多様な価値観を取り入れることで視野を広げることが効果的です。
3 ハラスメントを受ける視点~ハラスメントを相談したい人が気を付けるポイント~
上司の発言の中には、業務において言わなければならないこともある
上司から「こんなことを言われた」「あんなことを言われた」と悲嘆するばかりではなく、落ち着いて言葉の真意を考え、わからないことは改めて聞くなどの姿勢を持ちましょう。
冷静に考えると、相手を思っての発言であったり、自分の思い違いであったりすることがあります。
アンガーマネジメントやマインドフルネスなどを用いて、頭の中を冷静にリフレッシュすることも有効ですね。
周囲の人とも相談をしながら、平均的な価値観を考える
ハラスメントの問題を考えるときは、可能な限り、同僚や友人、家族などに相談をしてみましょう。
自分の見方は極端ではないのか、周囲の人はどのように考えているのかということを確かめながら、問題に対しての平均的な考え方を見つけようとすると自分の考えが整理できることもあります。
部下であってもハラスメントとして認識されることがある
「自分は一番下っ端だから大丈夫」ではありません。
たとえば、特殊な技能を持っている部下が、技能を持っていない上司に対して作業ボイコットをする、指示に従わないなどの行動を取り続けると、ハラスメントと認定されることがあります。
ドクタートラストの運営している外部相談窓口アンリでは、実際に「部下からハラスメントを受けていて…」と相談をいただくこともあります。
部下だから何をしても良いということではありませんので、部下といえども、自身の言動は定期的に振り返りましょう。
ハラスメント対策に力を入れなければならない理由
精神障害を原因とした労災請求件数が、2015年から2019年の5年間で36%も増加しました。
これは、そもそもの事案が増えていることも考えられますが、精神疾患の知識や労働や人間関係におけるストレスというものの認知が広がってきたということも一因であると考えられます。
認知が広がるということは、社会の価値観が変化するということを示します。
時代の変化をいち早く察知し、企業風土に取り入れるためにも、ハラスメント対策は喫緊の課題といえますね。