休日の寝だめは眠気や疲労感の原因に!~今日からできる睡眠改善方法~

ソーシャルジェットラグ(社会的時差ぼけ)を知っていますか?
今年の夏も気温が上昇し、寝苦しい夜が続いて、疲労が蓄積してしまいますね。
夏季休暇中は、「休みの日は夜更かししてもいいかな」「休日はゆっくり寝よう!」と思われている方もいらっしゃるかもしれません。
しかし、休日の朝寝坊や夜更かしにより、平日とは違う不規則な生活を送ると、時差ぼけと同様に体内時計のずれが生じてしまいます。

仕事や学校などがある平日に、一時的ではなく、慢性的に睡眠不足が続いている状態を「睡眠負債」と呼びます。
睡眠負債を解消するために休日に長く眠る「寝だめ(眠りの取り戻し)」の習慣をもつ人が、実は少なくありません。
しかし、休日に寝だめをすることで、就寝・起床の時間が平日と異なり、体内時計のずれが生じます。これを「ソーシャルジェットラグ(社会的時差ぼけ)」と呼びます。
平日の睡眠負債を解消するために休日の寝だめを繰り返すと、ソーシャルジェットラグも繰り返され、体内時計が乱れるという代償が伴います。

ソーシャルジェットラグ(社会的時差ぼけ)の影響

睡眠負債やソーシャルジェットラグは、眠気や疲労感をもたらし、気づかないうちに心身の健康にも悪影響を与えかねません。

睡眠障害

生活リズムが週末や休日に不規則になると、平日になかなか寝付けないことがあります。
つまり、ソーシャルジェットラグによって質の高い睡眠が十分にとれず、日中の眠気や疲労が蓄積してしまい、注意力の低下や、記憶力・学習力の低下だけではなく、日中の活動量の低下も引き起こします。

生活習慣病のリスク増加

食欲を抑えるホルモンである「レプチン」の分泌が減少し、食欲を高めるホルモンの「グレリン」の分泌が亢進するため、食欲が増大し、必要以上に食べてしまいます。
睡眠負債があると、私たちの食行動にまでも影響があり、肥満を引き起こすほか、糖尿病や心筋梗塞などの生活習慣病を発症しやすいといわれています。

免疫力の低下

睡眠時間が6時間未満の人は、7時間以上の人よりも、4倍も風邪を引きやすいという研究結果もあります。

気分障害のリスク増加

睡眠不足のときには、意欲や感情の制御などに関わる脳の前頭葉がダメージを受け、脳活動が極端に低下していたという研究結果もあります。
やる気が出ない、怒りのコントロールがしにくいということが考えられます。

ソーシャルジェットラグ(社会的時差ぼけ)の代表的な解消法

就寝時間、起床時間を一定に

睡眠のリズムは、体内時計で調整されているので、休日の前夜も平日と同じ時間に就寝することが望ましいです。
また、日中に眠気を感じる際は、15分程度の昼寝も効果的です。
昼寝のような超短時間睡眠には、生産性の向上が見込めるだけではなく、認知症の予防や、学習効果の向上などの効果も期待されています。
しかし、昼寝の時間が30分以上になると、睡眠が深くなり(ノンレム睡眠)、夜間の睡眠に影響が出てしまうので、15分程度におさめるのがおすすめです。

寝つけないときは布団から出る

寝る前に考え事をしたり、次の日早起きなのになかなか寝付けず焦ったり……、そんな経験はありませんか?
悩み事や焦りによって交感神経が優位になると、入眠までに30分以上経過してしまうこともあるでしょう。
そんなときは一度布団から出てみましょう。
睡眠に必要なのは、副交感神経優位(リラックスモード)にすることです。
ストレッチをしたり、ヒーリングミュージックを聴いたり、呼吸法を行ったり、ご自身にあった方法でリラックスしましょう。

光のコントロール

起床してからカーテンを開け、日中は太陽光をしっかり浴びて、夜は照明を暖色のものにして、暗めにすることがポイントです。
光は特に睡眠と密接に関係しているので、寝る前のスマホでブルーライトを浴びると交感神経が優位になり、寝つきも悪くなってしまいます。寝る前にスマホを見るときには、背景を暗い色にするなどの工夫も行いましょう。

おわりに

上記でご紹介した解消法以外にも、寝室の室温や湿度の調整や、寝具もご自身にあったものを選ぶとよいでしょう。
また、運動など日中に身体活動を行うことも、質の良い睡眠の確保につながります。
できるだけ平日、休日も同じ時間に就寝・起床し、規則的な生活を送って、これからも元気に働きましょう。

<参考>
・厚生労働省「良い目覚めはよい眠りから 知っているようで知らない睡眠のこと」
・e-ヘルスネット「睡眠と生活習慣病との深い関係」
・カリフォルニア大学「Sleep deprived? Expect to get sick too」
・厚生労働省「健康づくりのための睡眠ガイド2023」

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楠原 綾香株式会社ドクタートラスト 保健師

投稿者プロフィール

大学時代から公衆衛生看護学に興味を持ち、保健師を志していました。大阪の病院で消化器外科・内科、回復期リハビリテーション病棟に勤務し、患者さまと関わっていくなかで、予防医学への関心も高まったことから、産業保健師として活動すべくドクタートラストへ入社。
看護以外に、新人教育や対面での学習会の開催もしてきました。これらの経験を活かし、保健師として情報を発信していきます。
【保有資格】看護師、保健師、第一種衛生管理者
【ドクタートラストへの取材、記事協力依頼などはこちらからお願いします】

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