スイス・ジュネーブに本部を置く国際労働機関(ILO)の発表によると、世界における労働に関連して死亡する人は年間約300万人にものぼると発表しています。
その中でも、作業関連疾患による死亡者は260万人、労災による死亡者は33万人と、大きな割合を占めます。
今回は、労働安全衛生に関連する事柄として毎年4月28日に定められた「労働安全衛生世界デー」について掘り下げてみます。
労働安全衛生世界デーとは?その由来
労働安全衛生世界デーの由来については、1914年までさかのぼります。
1914年4月28日にカナダで「包括的な労働災害補償法」が成立し、その70年後にあたる1984年に、カナダの公務員労働組合がこの法律に由来し、4月28日を「労働者の追悼の日」とすることを決定しました。
このカナダの取り組みはそのほかの国にも波及していき、1996年に国際労働組合総連合(ITUC)によって国際デーとして定められ、2003年に国際労働機関(ILO)が現在の名称である「労働安全衛生世界デー」に変更しました。
ILOは「労働安全衛生世界デー」を、予防的安全衛生文化の大切さを伝えるとともに、安全で健康的な仕事、適切で人間らしい働き方を人々に勧奨する日としています。
日本においては毎年7月の「全国安全週間」、10月の「全国労働衛生週間」などがあります。
「全国安全週間」と「全国労働衛生週間」に関する記事は下記にてご参照ください。
作業関連疾患による死亡者の内訳
作業関連疾患とは、「作業条件や作業環境の状態によって発症率が高まったり、悪化したりとする疾患(引用:労働安全衛生法に基づく健康診断)」と定義されています。
ILOによると、作業関連疾患による死亡者数は260万人にのぼるとされています。
ILO発表の下記の図が示すように、特に32.36%のCirculatory disease(循環器疾患)、27.5%のMalignant neoplasms(悪性新生物)、14.25%のChronic obstructive pulmonary disease(慢性閉塞性肺疾患)の割合が多くなっています。
これらの循環器疾患、悪性新生物、慢性閉塞性肺疾患は全体の75%つまり4分の3を占めている結果となっています。
なお、各疾患の症状は下記のように分類されています。
■循環器疾患
循環器疾患には、⾼⾎圧・⼼疾患(急性⼼筋梗塞などの虚⾎性⼼疾患や⼼不全)・脳⾎管疾患(脳梗塞・脳出⾎・くも膜下出⾎)・動脈瘤など
■悪性新生物
がん並びに肉腫のこと
■慢性閉塞性肺疾患
別名「COPD」とも呼ばれ、身体を動かした時に息切れを感じる労作時呼吸困難や慢性のせきやたんのこと
農林漁業、建設業、製造業が最も危険な産業にあたる
ILOの報告書によれば、農業、建設、林業、漁業、製造業が最も危険な分野であり、年間20万件もの死亡事故を引き起こしています。
これは全死亡労働災害の60%にあたるとされています。
また、男性と女性を比較すると、男性のほうが仕事関連の事件で死亡するケースが多いことも強調しています。
特に、世界全体においてアジア太平洋地域は、労働人口の多さから世界全体の約63%が労働関連で死亡していると報告書では述べています。
こういった労働環境の中、ILOは安全かつ健康的な労働環境の確保や向上に向けて、「労働安全衛生に関する世界戦略2024年〜2030年」を新たに打ち出しています。これは下記の3つの内容を基準としています。
その1:国家労働安全衛生の改善
ガバナンスを強化し、信頼できるデータと証拠を活用し、能力を構築することにより、国家労働安全衛生を改善します。
その2:連携の強化
国家および世界レベルでの労働安全衛生への連携、パートナーシップ、投資を強化・促進します。
その3:職場の労働安全衛生マネジメントシステムの強化について
ILO-OSH2001(ILO労働安全衛生マネジメントシステム ガイドライン)を推進し、ジェンダー変革の指針を開発し、特定の危険、リスク、分野、職業に合わせて調整することにより、職場の労働安全衛生管理システムを強化します。
さいごに
日本にいると、日本以外の労働環境について目を向けることがなかったのですが、世界規模ではまだまだ働く環境が整っていないと痛感しました。
「労働安全衛生世界デー」を通して、改めて自分自身の労働環境に目をむけていただけたらと思います。
<参考>
・ ILO「Nearly 3 million people die of work-related accidents and diseases」
・ ILO「Guidelines on occupational safety and health management systems」