10~30代の男女に知ってほしい「プレコンセプションケア」~結婚や妊娠にかかわらず健康を考えるきっかけに~
- 2023/5/17
- 生活習慣
妊娠前のケア~プレコンセプションケア~
「プレコンセプションケア」は、妊娠(コンセプション)前(プレ)のケアを意味する言葉です。
将来子どもが欲しいと考える女性、男性が今の自分のからだの状態を考え、理解し、より健康になることや健康な子どもを授かるチャンスを増やすことをゴールに健康管理を行うことをいい、注目を集めています。
プレコンセプションケアが注目を集めているのは、現在、医療の発展により妊婦死亡率や周産期死亡は低くなっている一方で、不妊治療者数や低出生児の発症リスクが増加傾向にあるためです。
この原因には、出産年齢の高齢化もありますが、加えて不規則な生活習慣や、婦人科疾患の適切な治療が行われていないことなども考えられます。
また、不妊の原因が女性だけでなく、男性、または双方にあることは知識として広まってきているものの、内閣府が2014年に発表した調査では、30~40代とくらべて若い世代での認知率が低く、10%近くの人が「知らない」、「わからない」と回答しています。
将来のプランを具体的には考えていないという10~20代の女性、またそのパートナーもプレコンセプションケアを知り、自分のからだの状態を振り返ることで将来、後悔のないように希望できる選択肢を増やしていきたいですね。
リスクの高い妊娠・出産と体重
出産適齢年齢よりも遅い出産により、流産や早産、低出生児増加などリスクが増加しています。
その原因として、若い女性のやせ問題や肥満、喫煙との関連を指摘されています。
生活習慣の改善や運動習慣などは、健康な妊娠・出産、子どもの健康にもつながります。
また、妊娠時に必要不可欠な排卵では、「低体重」や「過体重」と排卵障害の関連が指摘されています。
・ 低体重:BMI18.5未満
・ 過体重:BMI25以上
※日本婦人科学会公表の排卵障害因子としては、低体重をBMI17未満、過体重をBMI27以上としています。ここでは、上記にはさまざまな生活習慣病などのリスクの考慮を考え、日本肥満学会が定めた「低体重」「過体重」の数値を記載しています。
BMIは身長と体重のバランスを示したものです。
個人によって理想の体型はさまざまと思いますが、低体重、過体重が排卵障害の原因となる可能性を知っておけるといいですね。
痩せ、肥満どちらの方にもまず意識してほしいのが朝食を取ることです。
若い世代は、朝時間がない、食欲がないことで朝食を食べる習慣がない方も多くいます。
朝食は1日を元気に過ごすためのチャージとしても重要です。
ダイエットのために朝食を抜くという声も聞きますが、空腹状態で昼食を取ることにより血糖値が上がりやすくなったり、長時間の空腹時間により筋肉が分解されやすくなります。
そのため体重は落ちても、基礎代謝が落ちてしまい、ダイエットとリバウンドを繰り返してしまう可能性があります。
また「朝食は、焼き魚にみそ汁、野菜、ご飯とバランス良く何品も揃えなくてはならない」と考える方もいるかもしれません。
確かにバランスよく揃えるのが理想的ですが、たとえば「ごはん、納豆、卵」の朝食でも構いません。
卵や納豆に代表されるたんぱく質と、ごはんの糖質が揃っているだけで十分です。
簡単なものからでも良いので口にすることから始めてみましょう。
ちょっとした異変を放置していませんか?性感染症
若い人の間で「淋菌」や「クラミジア」など、、性行為によって感染する性感染症が増加しています。
特にクラミジア感染症の患者数は、2021年には3万人以上とされています。
クラミジアの症状は軽いことが多く、無症状という方も少なくありません。
しかし、自然治癒をすることはないため、数か月、数年と感染を見逃してしまうこともあります。
<クラミジアの症状>
女性:おりものの増加、下腹部痛、不正出血 など
男性:排尿痛、かゆみ、尿道から水っぽい膿がでる など
クラミジアは子宮の中や卵管の中で炎症を起こし不妊のリスクを増加させるほか、いくつかの研究では男性側の感染でも不妊を引き起こす可能性があると考えられています。
女性、男性ともにちょっとした異変を放置せず検査を受け早期に治療することが重要です。
婦人科受診にハードルの高さを感じる方は、オンライン診療や自宅への検査キット送付などを活用しましょう。
生理痛が以前よりひどくなっていませんか?婦人科疾患を見逃さないようにしましょう
生理痛が以前よりひどくなったという方は、何らかの病気が原因となっている可能性が疑われます。
原因となる病気として、「子宮内膜症」「子宮筋腫」などの婦人科系疾患があげられますが、これらの病気は、不妊の原因となると言われています。
特に、子宮内膜症では患者さんの30~50%が不妊といわれています。
「たかが生理痛」と毎月の痛みを我慢し放置してしまうことで、隠れている病気の可能性に気づけない可能性があります。
<子宮内膜症の主な症状>
・ 腰痛
・ 下腹部痛
・ 排便痛
・ 性交痛 など
※月経時だけでなく、それ以外のときもあらわれることがあります
婦人科での子宮内膜症の検査は問診や膣内を医師がみて調べる内診、超音波検査を行います。
トータルでかかる検査時間は、おおむね10分前後です。
子宮内膜症は、20~30代で発症することが多いため、生理時に強い痛みがある、年々痛みが強くなっているという方は一度婦人科を受診することをおすすめします。
将来の健康だけでなく、治療によって毎月かかえている生理の痛みを緩和することもできます。
「プレコンセプションケア」の重要性を少しでも感じてもらえたでしょうか?
生活習慣はすぐに改善できなくとも、検査を受けることはできます。
小さな異変でも、一度病院に相談しに行くことを視野にいれてみてくださいね。
<参考>
・ 内閣府「平成26年度 母子保健に関する世論調査」
・ 公益社団法人日本産婦人科医会「不妊の原因と検査」
・ 厚生労働省e-ヘルスネット「BMI」
・ 厚生労働省「性感染症報告数(2004年~2021年)」
・ 国立研究開発法人国立成育医療研究センター「プレコンセプションケアセンター」
・ 厚生労働省「「プレコンセプションケア」をみんなの健康の新常識に」