コロナ禍になりテレワークやリモートワークはだいぶ浸透したように思いますが、「ワーケーション」については言葉は知っているものの実際に企業として導入している企業は少ないように見受けられます。
ワーケーションとは、Work(仕事)とVacation(休暇)を組み合わせた造語で、テレワーク等を活用し、リゾート地や温泉地、国立公園等、普段の職場とは異なる場所で余暇を楽しみつつ仕事を行うことです。
出所:観光庁 「『新たな旅のスタイル』ワーケーション&ブレジャー」
「職場以外で仕事をする」という点に関してはテレワークと同じなのですが、この「職場以外」が家や職場のある地域にあるカフェなどではなく、異なる地域への滞在となる点がワーケーションの特徴といえます。
ワーケーションについては、過去記事でも解説していますので、ぜひご覧ください。
今回は、一般社団法人日本経済団体連合会が2022年7月19日に公表した「企業向けワーケーション導入ガイド」について解説します。
ワーケーションを進める理由
企業向けワーケーション導入ガイドでは、 以下の項目が図表も添えてわかりやすく記載されています。
・今なぜワーケーションなのか(導入のメリット)
・実施事例
・規程整備の考え方
・地域・施設を選定する場合の考え方
「今なぜワーケーションなのか」という項目では、ワーケーションを推し進める理由として2つ挙げています。
①自律的な働き方が可能な環境を求める働き手が増えている
皆さんももう肌身に感じていると思いますが、コロナ禍になり時間と場所にとらわれない働き方の重要性が広まりました。
なおかつ、選択肢としてテレワークが増えたこともあり、ワークライフバランスや自分に合う働き方は何か考える機会も増えたことでしょう。
そのため、少子高齢化が進む日本で優秀な働き手を確保するためには、時間と場所にとらわれない働き方が大切になってきます。
今回は「ぜひワーケーションの導入を!」と導入ガイドが公表されましたが、まだ在宅勤務ができない状況なのであれば、まずはそこから着手するでも良いでしょう。
とにかく、柔軟な働き方を可能とする制度の設計、導入が今後にとって重要なのです。
その中でもワーケーションは、企業にもたらす主な効果として以下の点があります。
・普段と異なる環境における新しい発想の獲得(生産性、エンゲージメントの向上)
・普段と異なる場所で働くことでリフレッシュできるという 「転地効果」が期待できる(健康増進)
・働き手の自律的な働き方や ダイバーシティを尊重する(企業ブランディングの強化、採用力強化)
従業員の生産性向上を向上しつつ健康増進にも寄与し、企業価値も高め、優秀な人材が集まる……
正しく導入できたらこれ以上ないメリットがついてきますね 。
②テレワークを活用した新たな人の流れを受け入れる環境の整備が進んでいる
テレワークなどの自律的な働き方を求める人の増加を1つ目の理由にあげましたが、そもそもテレワークやワーケーションをする場所がなければできませんよね。
2つ目の理由として、テレワークをする環境も整ってきているとして、和歌山県の例を挙げています。
ワーケーション受け入れに全面的に取り組み、実施目的や利用規模に応じてワークスペースを使い分けられるように整備しているようです。
引用元:一般社団法人日本経済団体連合会「企業向けワーケーション導入ガイド」13ページ
和歌山県の他にも地方自治体におけるワーケーション事業についてまとめた資料も公開されています。
一般社団法人日本経済団体連合会×ワーケーション自治体協議会「地方自治体における ワーケーション事業 事例集」
このようにたくさんの地域でワーケーションの環境も整い、希望する人の増加が見込まれることから、企業に導入を促すべく今回この導入ガイドが公表されたのだと思います。
導入の壁である規程のモデルも公開
さて、ここまでワーケーション導入のメリット、今こそ導入する理由をご紹介してきましたが、「じゃあ明日から導入します!」と簡単にできるものではありません。
企業としてしっかり管理するためにも規定類を定めることが必要です。
ここが大きな壁だと思いますが、導入マニュアル内に「ワーケーション導入へのルール整備のステップ」が記載されています。
引用元:一般社団法人日本経済団体連合会「企業向けワーケーション導入ガイド」25ページ
また、「ワーケーションモデル規程」も公開されているので、就業規則などにどのように記載して定めればいいのか参考になります。
一般社団法人日本経済団体連合会「ワーケーションモデル規程(PDF)」
ワーケーションの方法はひとつじゃない!自社にあった方法で整備しよう
ワーケーションの方法は1つではなく、場所の自由度によって「企業型ワーケーション」と「個人型ワーケーション」があります。
おそらく「ワーケーション」と聞くと旅先のホテルやリゾート地での仕事をイメージするかもしれませんが、これは自由度が高い「個人型」に当てはまります。
「そこまでの自由度はどうしても許可できないからワーケーションの導入は難しい……」 という企業さまは「企業型」から検討してみてはいかがでしょうか。
企業型ワーケーションにも2つ種類があります。
①出張・研修型ワーケーション
出張や研修などと合わせる場合のみ可能にする。
②指定施設型ワーケーション
地域は従業員個人が選べるけれど、施設は会社が指定する場合のみ可能にする。
全てを従業員個人で自由に決めるのではなく、ある程度会社で指定した場所で行うワーケーションの方法なので、最初は企業型から始め、もし生産性向上や従業員のやる気などに繋がったならば、個人型へ制度を拡大する、という順番でも良いでしょう。
ワーケーションは企業としてのパワーアップにつながり、地域活性化にもなる制度です。
導入ガイド内に実施事例も載っているので、「うちではできない」と突っぱねるのではなく、出来そうなところから導入を検討してみてほしいと思います。
<参考>
一般社団法人日本経済団体連合会「企業向けワーケーション導入ガイド(PDF)」
一般社団法人日本経済団体連合会「企業向けワーケーション導入ガイド-場所にとらわれない働き方の最大活用-」
国土交通省 観光庁「『新たな旅のスタイル』ワーケーション&ブレジャー」