まずはちょっとした運動から!国民皆保険制度の「2022年危機」を救おう
- 2019/8/23
- 社会保障制度
国民皆保険制度は日本の社会保障制度のひとつとして、国民の生活に密接に結び付いた制度であり、非常に身近な制度といえます。
しかし、その国民皆保険制度が「2022年危機」といわれるほどまでに切迫した状況であることをご存知でしょうか?
「2022年危機」を踏まえ、社会保障制度としての国民皆保険を支えるため、加入者である個人に取り組めることを考えます。
国民皆保険制度
皆さんも健康保険証をお持ちでしょうし、不調があれば病院などの医療機関で受診し、薬を処方された経験があると思います。
いまさら説明の必要もないかとは思いますが、国民皆保険制度は日本国民全員が、最低限医療を受けることができるようにサポート(保障)する一面を持ちます。
加入者の収入によって、それぞれ算定された保険料率に従い納付した保険料と国庫負担額などを原資に、保険者(全国健康保険協会(以下、協会けんぽ)や健康保険組合、共済組合など)が保険給付や保健事業(たとえば健康診断など)を行います。
超少子高齢社会と「2022年危機」
冒頭から登場する「2022年危機」ですが、2022年になって突然訪れる預言のようなものではなく、現在も進行している大きな課題・問題である「超少子高齢社会」がもたらす影響です。
簡潔にいえば、2022年に団塊の世代と呼ばれる人口過密世代の年齢が75歳に到達し始め、後期高齢者(75歳以上)の人数が一気に跳ね上がり、大きな影響が出始めるということです。
現行の高齢者医療制度(2008年以降)施行後、高齢者医療のための保険者ごとの法廷給付費と拠出金負担額(後期高齢者支援金など)は膨らみ続けており、近年の保険料増額の大きな要因のひとつとなっています。
後期高齢者支援金は、国が半分、もう半分を保険者が負担しており、後期高齢者の人数が増加することは、単純に国(国家予算)と保険者の支援金負担増額につながります。
現状でも保険者の支出額としては、医療費給付に次ぐ大きな割合を占めており、後期高齢者支援金負担は義務的拠出金の内4割を超えており、2022年には5割を超えて、健康保険組合連合会推計発表では約5,000億円の増加が見込まれています。
医療費給付や保健事業を保ったまま増額する支援金を拠出するためには、保険料率を引き上げ徴収額を増やさざるを得ず、今後も家計への影響は避けて通ることができません。
これまでの「若い世代が高齢者を支える」健康保険制度は、人口比率のバランスが偏ったことで立ち行かなくなってきているのです。
個人にできること
人間が年齢を重ねることは止められず、少子高齢化した人口構造も今すぐにどうにかできる問題ではありません。
一見すると、個人としてできることは何もないように感じますが、実は簡単なことでこの社会保障制度を支えることはできます。
たとえば、特に努力の必要ないところでいえば、医療機関でアレルギーなど特別な理由がなければ、ジェネリック医薬品を選択的に処方してもらうだけでも大きな医療費削減効果があります。
さらに「日常生活にウォーキング10分程度の運動習慣をプラスする」、たったこれだけでも効果があるのです。
「たった10分のウォーキングでは何も変わらない」と思うかもしれません。
しかし、イギリスのケンブリッジ大学が中心となり中央値で12.5年間におよぶ調査、40~79歳の男女約1万5,000人が参加した「欧州がん・栄養ノーフォーク(EPIC-Norfork)」の研究成果から、時間経過による運動レベルの変化が、心血管疾患などの死亡リスクへの影響を、身体活動エネルギー消費量を増加させることで減少させることが明らかになったと発表しました。
具体的には、以下のようにケンブリッジ大学のアレクサンダー・モス教授は発表しています。
・ 1年間の身体活動量を体重1Kgあたり239Kcal増やすと、あらゆる原因による早死リスクを24%減少でき、体重60Kg の人であれば、活発なウォーキングを13分毎日行うことで、この身体活動量を満たすことができ、心血管リスクを29%、がんのリスクを11%減少できる
・ 過去の運動習慣や身体活動量にかかわらず、高齢者となってからでも、まずは10分のウォーキングからでも、運動習慣をつけることが公衆衛生上必要
運動習慣をつけ身体活動量を増やしていくことが、死亡リスクや心血管疾患、2型糖尿病などのリスクを減少させ、個人の医療費負担を引き下げ、結果的に保険者の医療給付費を引き下げます。
・ いつもより心持ち早歩きで10分歩いてみる
・ 1駅分歩いて通勤する
・ エレベーターやエスカレーターを使わずできるだけ階段で昇降する
上記ような、よく聞く生活習慣改善のための運動が、日本の社会保障制度を支え、結果的に自身の健康や生活を支えます。
ほんの少し意識するだけで、もしかしたら保険料が下がって手取り報酬が増えるかも?
そんな軽い気持ちで構わないと思います。
まずは何か少しずつでも日常の中に運動を取り入れてみましょう。
まさに今が始め時です!