裁量労働制なのに定時出社?始業時刻を指定することは可能か

「裁量労働制」という単語自体はかなり浸透しているように思いますが、通常の勤務形式の方と、裁量労働制の方が一緒に働く職場では、働き方の違いによって様々な対応を求められることもしばしばありますね。
今日は裁量労働制にまつわる問題に答えていきたいと思います。

こんな場合、どうすればいい?

Q.裁量労働制のチームに固定時間制で働いているチームとの合同ミーティングに参加してもらうために、始業時刻を指定することは可能でしょうか。

こちらの会社は商品企画・デザインの部署があり、デザイナー職の従業員は裁量労働制をとっているため、固定時間制で勤務している別の部署とは違い、始業・終業時間がまちまちです。
今回新たな取り組みとして朝の時間帯に全従業員が参加するミーティングを行うことを検討しているようです。

裁量労働制とは

裁量労働制とは、業務の性質上、業務遂行の手段や方法、その他時間配分等を大幅に労働者の裁量にゆだねることのできる制度です。厚生労働省令及び厚生労働大臣告示によって定められた業務の中から、対象となる業務を労使で定め、労働者を実際にその業務に就かせた場合、労使であらかじめ定めた時間働いたものとみなすことが可能です。

主に広告等のデザイナーやコピーライター、建築士、弁護士、税理士などの業種で導入をされている制度となり、そのほかにも、研究開発職やシステムコンサルタント等様々な業種が対象となります。
参考:厚生労働省ホームページ 専門業務型裁量労働制

 

始業時間を設定してまうことで逆に作業効率が下がることも・・・

A.制度として禁止されているわけではないが、裁量労働制という制度の趣旨にそぐわない

始業時刻を設定してしまうことによって、裁量労働制の本来の特性を生かせなくなる可能性があります。前述の通り、裁量労働制とは業務を遂行する上での効率性や合理性を高めるために労働者が自由に出社時間や退社時間を決められるはずの制度です。
そのため始業時間の設定をすることにより、場合によっては効率性や合理性が失われてしまう可能性があり、それは裁量労働制とはいえなくなってしまいます。

何かを企画・製作するような仕事ですと個人の力が十分発揮できるような環境づくりも大切になります。例えば、クライアントのために少し遅めの時間帯からの勤務をしている従業員に朝のミーティングに参加することを強制してしまうと、ミーティング以外の場面で本来の力が発揮できず作業効率が下がることもあるでしょう。

しかし、固定時間制で働いているチームとの合同ミーティングを行うことは商品を企画するのに必要なことかもしれません。
例えば始業時間を変更するのではなく、可能な限りミーティングに参加するよう促すか、お互いのコアタイムに会議を行うよう時間をすり合わせることが望ましいでしょう。

それぞれの会社にあった労働形態を

今回のように、固定の時間に揃って仕事を進めていきたいという場合には、フレックスタイム制を導入する手もあります。
フレックスタイム制とは、会社が定めたコアタイムの間オフィスにいれば、従業員が自由に出退勤時間を決められる制度です。例えば、会社のコアタイムを11時から15時に設定すると、その4時間の間は必ずオフィスにいることが義務付けられます。
会議などもコアタイムの時間帯に集中して行うことで会社全体の効率化を図ることができます。また、仕事だけでなくプライベートの充実させることができたり、育児や介護に時間を要する従業員にもフレックスタイム制度は強い味方になるでしょう。

ただし、新しい制度を導入する場合は、その制度のメリットばかりを見るだけでは危険です。
それは、本当に会社全体に合った制度かどうか、導入することによって従業員の労働環境は改善につながるのか、そして制度を規定に則って運用するための情報を持っているのかという点をしっかりと検討したうえで導入する必要があります。

どの制度にも様々なメリットがありますが、このような良い面だけに注目するのではなく、各種手当や出退勤時間の管理についても正しく理解して、制度を導入しましょう。

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稲井 沙也加株式会社ドクタートラスト 産業保健部

投稿者プロフィール

美術系の専門学校を卒業後、「企業ではたらく人の健康管理」を専門にしているドクタートラストに興味を持ち入社しました。さまざまな部署での経験を活かし、産業保健分野に関することや労働安全衛生法についてわかりやすく解説してきます!
【保有資格】健康経営アドバイザー

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