困った時の窓口 〜労働紛争解決制度ってご存知ですか?〜

あなたの働く会社はいま、トラブルを抱えていませんか?
現在日本では、労働関係による民事通常訴訟が年間約3,300件も起きています(2016年)。
しかし、労働関係で起きたトラブルに対しあなたが裁判を起こそうと思っても、お金も時間も手間もかかるため気軽に起こせるものではありません。
社内でトラブルを抱えている方に、各種制度をわかりすく紹介していきます。

裁判よりもハードルが低い労働審判制度

労働審判制度とは、事業者と労働者の間で労働関係における問題が起きた際、2者の間に労働審判官1名と労働審判員2名が入り審理することで、裁判よりもハードルが低く、迅速かつ適正な解決をすることを目的とした裁判所による手続です。
労働審判の対象となる労務問題は、会社と個人による賃金や雇用に関する権利・利益関係です。
そして2回目の調停でで7割の問題が解決されています。
しかしながらここで注意しなければならないのが、この労働審判は、昨今最も社内トラブルとなっている「いじめ・パワハラ・セクハラ」といった対個人間の問題が対象外となっていることです。

万能な個別労働紛争解決制度

では社内の「いじめ・パワハラ・セクハラ」といった当事者同士で解決できない問題はどうすればよいのでしょうか?
そのような場合に活用していただきたいのが「個別労働紛争解決制度」です。
個別労働紛争解決制度は、以下を目的としています。

個別労働関係紛争の解決の促進に関する法律」に基づくもので、“人事労務管理の個別化や雇用形態の変化などに伴い、労働関係についての個々の労働者と事業主間の紛争(以下「個別労働紛争」という)が増加している。これらの紛争の実情に即した迅速かつ適正な解決を図る”
(個別労働関係紛争の解決の促進に関する法律第1条より一部引用)

また、個別労働紛争解決制度は、都道府県労働局による以下3つの紛争解決援助制度からなっています。

(1) 総合労働相談コーナーにおける情報提供・相談
(2) 都道府県労働局長による助言・指導
(3) 紛争調整委員会によるあっせん

この3つの制度がどういったものなのか、具体的に見ていきましょう。

(1) 総合労働相談コーナーにおける情報提供・相談
先に説明した労働審判では、労働問題の対象が限られていましたが、この総合労働相談コーナーでは窓口が一元化されていることもあり、職場に関するトラブルであればあらゆるものが対象とされます。
そのため、事業者と労働者関係なく誰でも気軽に専門の相談員へ相談することができます。
また相談したうえで、裁判所、地方公共団体など他の紛争解決機関の情報提供を受けることも可能です。

(2) 都道府県労働局長による助言・指導
都道府県労働 局長より、紛争当事者へ法令や判例等に照らして問題点を指摘し、解決の方向へ導く助言・指導を行うものです。
この制度はあくまでも紛争当事者 の自主的な紛争解決を促進する制度であるため、なんらかの措置を強制するものではありません。
都道府県労働局長による助言・指導を行うも、紛争解決にまで至らなかった場合、他の紛争解決機関や、あっせんへと移行することができます。

(3) 紛争調整委員会によるあっせん
紛争当事者の間に、公平・中立な第三者として労働問題の専門家が入ることで、話し合いを促進し紛争の解決をする図るものです。
紛争調整委員会は、弁護士や大学教授、社会保険労務士など、労働問題における専門家によって組織されおり、委員回のなかから指名される「あっせん委員」が双方の主張する要点を確かめ、事案に応じた具体的なあっせん案を提示します。

個別労働紛争解決制度のメリット

・ 費用削減・迅速・簡便
3つの制度はすべて無料で利用することができます。
また、裁判にくらべ、手続きが迅速かつ簡便です。

・ あっせん合意の効力
紛争当事者間であっせん案に合意した場合、あっせん案は民法上の和解契約の効力を持つことになります。

・ 秘密厳守
あっせんの手続は非公開であるため、当事者双方のプライバシーは保護されます。

・ 相談のしやすさ
相談内容により女性相談員による対応を希望する方には、女性相談員がいるコーナーを紹介してもらえます。

・ 不利益取扱をされない
これらの制度を利用することによって、事業者が労働者に対し、解雇等の不利益な取扱をすることは法律によって禁止されています。
2016年の民事上の個別労働紛争相談件数は250,000件であり、多くの方が相談しています。
現在社内トラブルで悩まれている方、どこに相談すればよいのかわからない方は総合労働相談コーナーに相談してみてはいかがでしょうか。

参考
・ 「個別労働紛争解決制度(労働相談、助言・情報提供、あっせん)(厚生労働省)
・ 「労働関係訴訟、労働審判」(独立行政法人労働政策研究・研修機構)

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