厚労省でストレスチェックの検討会スタート!~集団分析や従業員数50名未満の事業場の扱いはどうなる?~

2024年3月29日、厚生労働省で「ストレスチェック制度等のメンタルヘルス対策に関する検討会」(以下、検討会)が立ち上がり、本稿執筆時点では計3回にわたり検討会が開催されています。
検討会での検討内容は、以下の3点です。

① ストレスチェック制度などのメンタルヘルス対策に関する検証
② 事業場におけるメンタルヘルス対策
③ その他関連する事項

以下では、検討会の目的などについてわかりやすく解説します。

検討会の目的

2015年12月にストレスチェック制度が導入され、メンタルヘルス不調の未然防止である「一次予防の強化」などの観点で、取り組みは進んできています。
一方で、2022年度の精神障害の労災支給決定件数は700件を超え、過去最も多くなっています。
また、「労働安全衛生調査(実態調査)」によると、メンタルヘルス不調により連続1ヶ月以上休業または退職した労働者がいる事業場の割合は、この3年間、約1割で推移しています。
また、従業員数50名未満の小規模事業場においては、メンタルヘルス対策に取り組む割合が従業員数30名~49名の事業場で73.1%、同10名~29名で55.7%(同50 名以上の事業場においては91.1%)であり、いまだに低調です。
こうしたなか、「経済財政運営と改革の基本方針2023(骨太の方針2023)」(2023年6月16 日閣議決定)では、「メンタルヘルス対策の強化等の働き方改革を一層進める」こととされました。
また、2014年の改正労働安全衛生法の施行状況について議論された「第134回労働政策審議会安全衛生分科会」では、今後、ストレスチェック制度について効果検証を行い検討していくべきであると指摘されています。
このようなことを踏まえ、ストレスチェック制度を含めたメンタルヘルス対策について、実施状況などを踏まえながら検証するとともに、検証の結果、必要なものについて対応を検討することが今回の検討会の目的となっています。

ストレスチェックの実施状況

では、現在の「ストレスチェック」はどのような状況なのでしょうか。
以下では、「実施状況」「評価」「集団分析・職場環境改善」の3点から見ていきます。

ストレスチェックの実施状況

ストレスチェックの実施率は2020年度時点で、従業員数50名~299名の事業場は96.3%、同300名~999名の事業場は98.5%、同1,000名以上の事業場は98.1%でした。
未実施の理由は、「ストレスチェック制度の義務化を知らなかった」や「コロナの影響で実施する余裕がなかった」などさまざまです。
また、従業員数50未満の事業場は、ストレスチェックの実施が「努力義務」であることから37.8%にとどまっています。

ストレスチェック結果に基づく面接指導の実施状況と評価

全国の労働者3,915名を対象に2年間にわたり調査を実施したところ、高ストレス者判定のうち医師の面接指導を受けた者は16~17%で、面接指導を受けた評価は「とても有効」「いくらか有効」が7割程度でした。
医師面接を受けなかった理由として一番多いかったのは「面接指導がどのような役に立つのか分からなかった(36%)」、次いで「面接指導の必要性を感じなかった(29%)」です。

ストレスチェック結果の集団分析・職場環境改善の実施状況

集団分析を行っている事業者は7~9割程度です。
また、未実施の理由には「必要性を感じなかった」などが挙げられています。
職場環境改善を実施した事業者は、集団分析を行ったうち5~6割程度にとどまります。
未実施の理由としては「課題を洗い出すのが困難だった」などが挙げられています。
集団分析を行った事業者のうち5~6割が職場環境改善を実施したとしているますが、職場環境改善を行った事業場に所属する労働者が改善されたと認識している割合は2割以下、「ない」「わからない」が8割を占めています。
職場環境改善が労働者側には伝わっていない状況が認められました。
一方で、職場環境改善があったと労働者が認識しているケースでは、労働者による職場環境改善の効果は高く評価(約8割が有効と評価)しています。

ストレスチェックに伴うメンタルヘルス対策の現状

ストレスチェックも制度が始まって9年目になりましたが、受検をして集団分析を確認するだけではなく、集団分析を活用して職場環境改善も行うことが重要です。
また、検討会では「職場環境改善の義務化」や「従業員数50未満の事業場でのストレスチェックの義務化」などが意見として挙がっています。
「産業保健新聞」としても検討会の動向を注視していきます。

<参考>
厚生労働省「ストレスチェック制度等のメンタルヘルス対策に関する検討会」

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上田 倫子株式会社ドクタートラスト

投稿者プロフィール

大学在学中は心理学を学びました。その頃から人間の心理やうつ病等の精神的な病に関わる仕事がしたいと思い、ドクタートラストに入社しました。入社後は主に営業として、休職や過重労働等で困っておられる企業様をたくさん担当させていただきました。働く人を1人でも健康にできるように、これからも勉強を続けてまいります。
【保有資格】健康経営アドバイザー
【ドクタートラストへの取材、記事協力依頼、リリース送付などはこちらからお願いします】

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