コロナ禍を経て経済活動が回復に向かう一方で、人手不足が深刻さを増しています。
株式会社帝国データバンクが公表した「人手不足倒産の動向調査(2023年1-10月)」によると、人手不足による倒産件数は前年比86%増で過去最高となりました。
人手不足は倒産の要因となりうるため、中小企業は対策が求められます。
今回は、深刻化する人手不足をどう打開すべきか考えていきたいと思います。
企業は人手不足を問題視しているか
実際に、人手不足を課題と捉えている中小企業はどの程度でしょうか。
独立行政法人中小企業基盤整備機構が行った「中小企業・小規模企業者の人手不足への取組状況に関する調査(2023年)」では、全体の3割強の企業が人手不足を「深刻な問題」と捉えており、さらに6割強の企業が「重要な問題」または「将来的な問題となる可能性が高い」と考えていることがわかりました。
なかでも、サービス業・飲食業・宿泊業・建設業などはより人材不足に対する深刻度が高く、これらの業種の非正規雇用の多さや、給与水準の低さ、労働人口の減少が影響しているようです。
また、人手不足は企業経営や職場環境に大きな影響を与えます。
社員の人数が少なければ少ないほど、一人ひとりの社員にかかる業務量は増加する一方です。
こうした状態を放置すれば、残業時間の増加や有給休暇の取得が難しくなるなどの問題が発生し、従業員のはたらきがいや意欲の低下につながります。
そうなると、さらに離職率が増し、人手不足が加速することが予想されます。
人手不足相談窓口のご紹介
人手不足を解消するには下記が有効だと考えられます。
・賃金や業務の見直し
・シニア層、障がい者、外国人の採用
・副業・兼業の採用
・業務の効率化(デジタル化の推進など)
終身雇用が主流だったため副業や兼業を禁止している企業が多数派でしたが、最近では幅広いワークスタイルを推奨している企業が増えています。
また、社内で行っていた業務を外部に委託することで負担の軽減が可能です。
クラウドツールなどのITツールを活用することで、出社が不要となり、子供がいる世帯や、介護が必要な世帯でも柔軟に業務に携わることができます。
しかし、実際に人手不足の改善のため行動を起こそうとしても、具体的な方法や情報が不足している点が問題となっています。
そこで、独立行政法人中小企業基盤整備機構は、2024年1月より「人手不足相談窓口」を開設しました。
全国9か所の地域本部およびオンライン上にて、無料での相談が可能です。
人手不足支援に精通する専門家からアドバイスをもらうことができます。
・地域本部における人手不足相談窓口へのお申し込み(中小企業基盤整備機構)
・オンラインにおける人手不足相談窓口へのお申し込み(中小企業基盤整備機構)
また、人材確保・定着を実現するための情報を掲載した「人手不足に対応するための支援情報サイト」では、Q&A、支援施策や成功事例などの情報が紹介されています。
2025年問題に向けて
皆さんは「2025年問題」をご存知でしょうか。
2025年問題とは、2025年に団塊の世代が後期高齢者(75歳以上)になることで起こるさまざまな問題の総称です。
日本では人口減少が進み国民の4人に1人が後期高齢者になるといわれています。
なかでも、労働力人口の減少は深刻な課題として考えられているため、現状は人手不足と感じていない中小企業でも、近い将来のため事前に対策を考え、備えておく必要はあると考えます。
<参考>
・ 株式会社帝国データバンク「人手不足倒産の動向調査(2023年1-10月)」
・ 独立行政法人中小企業基盤整備機構「中小企業の人手不足の深刻化、長期化に対応するため相談体制等を強化 中小機構 地域本部に「人手不足相談窓口」を開設(PDF)」