産業保健分野をメインに扱う「産業保健新聞」。
読者のなかにも、この分野のエキスパートの方は多いでしょう。
今回は、そのうち「職場巡視」について取り上げさせていただきます。
「職場巡視は、産業医が訪問したときに毎回ちゃんとやってるし、これ以上にやることがあるんですか?」
そんな風にい思う方もいらっしゃるかもしれません。
もちろん職場巡視の主たる目的は「安全衛生上の改善」にありますが、ときにはそれだけにとどまらず、産業医の先生からの提案によって副次的な効果が生まれることがあるのです。
以下、実在の企業例でご紹介していきます!
オフィスにBGMを流す
金融関連企業の事例です。
重要な個人情報を多く取り扱い、緊張感を強いられる業務が多いことから、メンタル不調者が減らないという悩みがありました。
産業医からの提案
ラジオでいいので職場にBGMを流してみてはどうでしょうか?
効果(半年後のヒヤリング)
職場内に雑談が増え、社員の笑顔が増えていきました。
雑談が増えたからといって業務が滞るといったことは発生しておらず、逆に集中しているように見えます。
メンタル不調者が新たに出てくるといったことは今のところありません。
定期的に席替えを行う
創立100年を超える、老舗製薬会社の事例です。
今回取り上げる事業場には、管理部門、営業部門、広報部門があります。
産業医からの提案
社員と話をしていくなかで、ほぼ全員が何年も同じデスクで仕事をしていることが判明しました。
定期的に席替えをしてはどうでしょうか?
効果(1年後のヒヤリング)
世代を超えて話をする機会が増えました。
また、この会話から、今までなかったアイデアが生まれています。
さらに、定期的な席替えがあると従業員も理解しており、以前よりも整理整頓され、オフィスがきれいになりました。
職場巡視時に白衣を着用する
スマホアプリを作るゲームメーカーの事例です。
従業員のほとんどが35歳以下という、若年層の多さが特徴です。
また、メンタル不調者がしばしば発生し、離職率が高いという課題がありました。
産業医の提案
産業医が存在していることを認識してもらうために、白衣を用意してもらえませんか?
職場巡視の際に白衣を着用し、意識して社員の皆さんに声がけしてみようと思います。
効果(1年後のヒヤリング)
以前は産業医面談を希望する者は、皆無に等しかったのですが、「産業医」の存在が浸透したのか、徐々に希望者が増えました。
この結果、メンタル不調の早期発見・早期対応が可能になり、重症化を防ぐことにつながっています。
※
上記は実際に見聞した実例です。
これらの事例には、共通点があることに気づきました。
それは、「職場内のコミュニケーションをいかにして生ませるか」という点に産業医が注力していることです。
職場のコミュニケーションが活発になる
↓
仕事の効率が上がる
↓
余裕が生まれる
↓
アイデアが生まれる
↓
会社の業績向上
このように、好循環が生まれる可能性があるのではないでしょうか。