年が明け、今年こそは平穏な日常を取り戻したいと強く願った人も多いのではないでしょうか。
ところが日本でも新型コロナウイルスの感染者数が再び増加の一途をたどっています。
その原因となっているのが「オミクロン株」。
今回は「産業保健新聞」を運営するドクタートラストの保健師が、オミクロン株の最新情報をお伝えします。
オミクロン株の特徴と潜伏期間
オミクロン株とは、新型コロナウイルスの変異株のひとつで、WHOが「新たな脅威」として懸念を表明しています。
感染力が非常に強く、諸外国でも従来の変異株と比較にならない速度で感染者が増加しており、イギリスでは感染者数が倍増する日数が「約3日」とされています。
またWHOは、オミクロン株はワクチンを接種した人や過去に新型コロナウイルスに感染して回復した人が再び感染するおそれがあると指摘しています。
過去にワクチン接種や新型コロナウイルスへの感染したひとでも、オミクロン株に感染してしまう。
つまり、ワクチンを打ったから大丈夫、と過信してはならないウイルスといえます。
また、新型コロナウイルスでは感染してから発症するまでの期間(潜伏期間)は、1~14日で、多くが「約5日」とされていました。
一方で、オミクロン株ではこの潜伏期が従来の新型コロナウイルスよりも短く、国立感染症研究所ではオミクロン株の潜伏期間は2~5日、中央値3日としています。
オミクロン株に感染するとどんな症状が出る?
オミクロン株は感染拡大力が強い一方、「ほぼ重症化しない」とする報道を目にされた方も多いでしょう。
そもそも、「重症化しない」とはどういうことなのでしょうか?
一例ではありますが、香港大学の研究チームがウイルスの増殖速度について気管支の細胞で調査したところ、オミクロン株はデルタ株の70倍を超えるスピードで増えたと報告されています。(論文は査読中)
一方で、肺の細胞の感染状態は変異株の一つである、デルタ株の3分の1程度でした。
これはオミクロン株はデルタ株よりも、上気道で増殖する傾向にあることを意味します。
上気道でウイルスが増殖すると、鼻やのどなどの症状は出るものの、重症化に至る可能性は低くなります。
一方でデルタ株の場合、下気道でウイルスが増殖する傾向にあり、肺炎など重い症状が発生、重症化してしまいます。
また、イギリス保健安全庁によると、オミクロン株はデルタ株よりも入院リスクが50~70%低く、救急搬送の割合も31~45%低いとしています。
では、もしオミクロン株に感染した場合、どういった症状が現れるのでしょうか。
沖縄県の、オミクロン株陽性者50人を調査したところ、無症状者はたった4%にすぎませんでした。
つまり、ほとんどの方になんらかの症状があるとわかります。
<主な症状例>
・ 発熱:72%
・ せき:58%
・ 全身倦怠感:50%
オミクロン株は風邪と同じ?
前述のとおり、オミクロン株は風邪やインフルエンザなどと同じような症状が見られることがわかりました。
では、オミクロン株に感染したときは「風邪をひいた時と同じ」過ごし方をして良いのでしょうか?
答えは「No」です。
たとえ症状が風邪に似ているとしても、コロナ=風邪ではありません。
新型コロナウイルスは、一人が多くの人にうつしてしまう「感染症」です。
症状は似ていても風邪をひいている状態とはまったく違うと捉えてください。
寒い日が続き、体調を崩しやすい時期ですが、「風邪だろうな」と過信せずに、いつもと違う症状があれば、出社やひとと会うことを極力減らす等、慎重な行動をとるようにしましょう。
職場の人がオミクロン株の濃厚接触者だったら?
ここまで感染拡大が続いていると、職場などで「オミクロン株の濃厚接触者」が出て、自分自身が「濃厚接触者の濃厚接触者」になる可能性もあります。
あらためて濃厚接触者の定義を確認しましょう。
<濃厚接触者の定義>
新型コロナウイルスの PCR 検査等で陽性となった人と、感染の可能性のある期間に接触し、以下の範囲に該当する人
・ 陽性者と同居あるいは長時間の接触があった(車の中、また航空機内などを含む)
・ 適切な感染防護(マスク)なしに陽性者を診察、看護もしくは介護をした
・ 陽性者の気道分泌液もしくは体液などの汚染物に直接触れた可能性がある
・ 手で触れることのできる距離(1 メートル程度)で必要な感染予防策なしで陽性者と 15 分以上の接触があった
「濃厚接触者の濃厚接触者」に対しては、現在のところ特に行動制限はありませんが、該当の「濃厚接触者」が陽性か陰性か判明するまでは、自分も濃厚接触者として行動を気をつける必要があります。
出社や外出を控えるべきか悩まれる場合は、接触日から数日後にPCR検査を受けるのも選択肢の一つでひとつです。
なお、濃厚接触直後では、感染していても陽性とならない可能性もあるので注意してください。
また、飲食店などにパーテーションが設置されていれば、マスクなしで食事をしていても、「必要な感染予防策」にあたるのでしょうか。
これは、他の状況もみて複合的に判断されます。
オミクロン株で気になること
オミクロン株は医療体制を圧迫しない?
オミクロン株について「重症化しにくい」といわれているがために、誤解されている面があります。
その一つが、「入院するような状態になる人も少ないだろうし、大丈夫だろう、医療体制逼迫にはつながらない」です。
極めて強い感染力を持つオミクロン株では、感染者が爆発的な増加につながり得るため、重症化した人の「比率」が仮に低いとしても、感染者数そのものが多くなりすぎれば、重症者数も増え、医療体制の逼迫につながる可能性があります。
オミクロン株はマスクは効果なし?
オミクロン株は、従来の新型コロナウイルスの感染経路に加え、空気感染の可能性も示唆されています。
そのため、以前からマスクの効果に懐疑的な方の中には「オミクロン株はマスクなんてしてもしなくても一緒」と考える方もいるかもしれません。
仮に感染したとしても重症化リスクが低いから大丈夫だろうという楽観視から、ついマスクを外してしまってる人、いませんか?
オミクロン株にマスクは意味がないのか、答えは「No」です。
政府は引き続き、オミクロン株の感染拡大防止に関し、マスク着用を含めた基本的な感染対策の継続を呼びかけています。
特に気温、湿度が低い冬場はウイルスの活動が活発になり、空気中にとどまりやすくなります。
そのため、定期的な部屋の換気や3密の回避、飛沫(ひまつ)予防として会話時のマスク着用は効果的です。
さいごに
長引くコロナ生活にうんざりしてきた人も多い中でのオミクロン株の増加という事態。
急激に増えてきた感染者数の「数字」に不安が強くなるかと思いますが、ぜひ正しい知識をもって、不安になりすぎず
わたしたちひとりひとりが基本的な感染対策である、手洗い、密を避ける、そして「マスク着用」をこれまでと同じように続けましょう。