総務省消防庁の報告によると、2020年6月22日~6月28日の1週間に1,651人が熱中症で救急搬送されました。
前年同期比でおよそ1.6倍です。
ちなみに昨年も熱中症による救急搬送数が一昨年とくらべ増加しています。
今年の熱中症感染者が増加している理由は、真夏日が増えていることに加え、以下の3つが考えられます。
◎ 新型コロナウイルス感染症の影響でマスクを着用していること
◎ 長引く在宅勤務により暑さに身体が慣れていないこと
◎ 3密を避けるため室内換気に注力し室温が上昇すること
熱中症と新型コロナウイルスは一見関係がないように見えるかもしれませんが、実は医療の現場では非常に重要な問題です。
今回は、熱中症と新型コロナウイルスの関係について、わかりやすく解説します。
熱中症で救急搬送が増えたらどうなる?
新型コロナウイルス感染症の感染者数が再び増加に転じ、再度緊急事態宣言が発令されるのではないかと不安を感じている方も多いと思います。
2020年7月1日に政府は「最悪の場合は再び緊急事態宣言の可能性もあり得る」と考えが示しました。
医療供給体制が圧迫される可能性
また、緊急事態宣言を発令するに際しては、新規感染者の数、スピード、感染経路不明の割合に加え、「医療供給体制の状況」も勘案し、総合的に判断すると方針が示されています。
この「医療供給体制の状況」について、前回の緊急事態宣言発令時は「新型コロナウイルス感染者のための病床数」が対象とされていました。
今回はこれに加え、熱中症患者の搬送によって病床や供給体制が圧迫される可能性があるのです。
症状の見分けが難しい
さらに、熱中症と新型コロナウイルスの症状の見分けが非常に難しいともされていることも考慮しなければなりません。
たとえば、熱中症のような症状があり救急搬送された際に、熱中症による症状なのか、新型コロナウイルス感染症を疑う症状なのか鑑別するために、血液検査や熱中症治療に平行して、新型コロナウイルス感染症への罹患を疑い、医療者は感染予防を徹底した上でPCR検査や新型コロナウイルスに対する治療を実施する必要が出てくるのです。
熱中症と新型コロナウイルスの見分け方
前述のとおり、熱中症と新型コロナウイルスの症状の見分けは非常に困難です。
というのも、新型コロナウイルスは咳やのどの痛みなどの上気道症状が目立ちますが、同時に頭痛や発熱、倦怠感などの症状も起きる場合があります。
そして頭痛や発熱、倦怠感といった症状は熱中症にも当てはまるのです。
またこれらのうち熱中症の初期症状として、発熱や上気道の症状よりも、まず頭痛がみられる場合もあります。
さらに、もともと呼吸器関連の病気を持つ方が熱中症になる場合には、より一層区別は難しくなります。
それでは、我々はどのように、自分の身に起きている症状が「熱中症によるものなのか」「新型コロナウイルスによるものなのか」を見分けたらよいのでしょうか。
まずは、症状から安直に「自分は熱中症だから大丈夫」と過信しないようにしましょう。
医療現場においても、2つの症状の区別は非常に難しく、自己判断は危険です。
その上で、次の点について自身の生活を振り返ってみましょう。
□ 暑いからとお酒を多量に飲んでいたのではないか
□ 屋外での作業や移動で、汗を大量に出していたのではないか
□ のどが渇いていないから、と水分を補給できていなかったのではないか
□ 日差しが強く、風通しの悪い場所に長時間いなかっただろうか
□ エアコンをつけず蒸し暑い部屋で過ごしていたのではないか
上記は、熱中症になるリスクを高める行動です。
熱中症が疑われる場合は、以下を試みてください。
・ 涼しい場所に移動してください
・ 身体を冷してください(首や脇、太ももの付け根などの太い血管を冷やす)
・ 自力で水分摂取できる場合は、経口補水液などの水分をこまめにとるようにしてください。自力でできない場合は、熱中症の中等症~重症のリスクがあるため、医療機関を受診しましょう
熱中症になる環境や生活を避ける!~withコロナの夏に気を付けること~
熱中症は、予防知識を身に着け、早めに対処することで防げます。
熱中症の要因を避けて生活すれば、熱中症によるものか、新型コロナウイルスによるものか疑わしい症状が、熱中症ではなく、新型コロナウイルス感染症である可能性を早期に疑うことができます。
そのことが、緊急事態宣言の発令や医療現場の崩壊を避け、また新型コロナウイルス感染症の早期の治療につながるため重症化を防ぐことができるというわけです。
今後熱中症を予防するために、これから暑くなっていく中で、ぜひ次のことを行ってください。
1) 密を避ける室内換気に配慮しながら、こまめにエアコン温度を調整し部屋の温度を確認しましょう。
2) 活動前に、適切な水分補給と、適宜水分や塩分の補給ができるよう準備をしましょう。また適宜マスクを外して休憩することも大切です。
3) マスクは熱がこもりやすいことに加え、マスクの加湿で口の渇きを感じにくくなるため、熱中症に気づくのが遅くなり、熱中症になるリスクは高まります。のどの渇き感に頼らず、いつも以上に意識して水分補給をしましょう。
4) フィジカルディスタンシングに注意しつつ、人混みを避けた散歩や室内での軽い運動で、涼しいうちに汗をかく練習をし、暑さに少しずつ身体を慣れさせましょう。
私たちは、これから初めてwithコロナ時代における真夏を経験します。
本格的な夏が訪れる前に、熱中症に対して自分にできることを対策し、命を守り、医療を守り、日本全体で、日本の危機を乗り越えていきましょう。