健康で元気に働くために~カギを握っているのは企業~
- 2021/5/24
- 健康経営
日本人の労働者は、睡眠時間を除くと1年の約3分の1の時間を仕事に費やしていることから、職場環境は健康の観点から非常に重要です。
現在日本では労働者の長時間労働の常態化やメンタルヘルスの増加が問題視されています。
従業員の健康管理が企業にとって重要な課題となっている今、この問題を解決するために、政府が推進する「健康経営」があります。
今回は「健康経営」についてわかりやすく解説します。
「健康経営」とはどのような取り組みなのか
「健康経営」とは、従業員等の健康管理を経営的な視点で考え、戦略的・計画的に取り組む経営手法です。
顕彰制度として「健康経営銘柄」や「健康経営優良法人認定制度」があります。
健康経営の評価項目は大きく5つに分けられています(大規模法人と中小規模法人で多少の評価項目の違いがあります)。
◎ 経営理念(経営者の自覚)
◎ 組織体制
◎ 制度・施策実行
◎ 評価・改善
◎ 法令遵守・リスクマネジメント
「健康経営優良法人2022」の評価項目では、以下の2点が変更される見通しです。
◎ 新型コロナウイルスによる評価の見直し
◎ 喫煙対策項目の追加
「健康経営」のメリットとは
国が健康経営を推進する背景には健康保険の赤字額が企業財政を圧迫してきているという問題があります。
そこで「健康経営」に取り組むことによって、従業員の健康を増進し、企業の保険費負担を減らそうと考えたのです。
それだけではなく、優良な健康経営に取り組む法人を「見える化」することで、従業員や求職者、関係企業や金融機関などから「従業員の健康管理を経営的な視点で考え、戦略的に取り組んでいる企業」として社会的に評価を受けることができる環境を整備しました。
また、「健康経営」を促進することにより、従業員の仕事への「集中力向上」、「高いパフォーマンスを発揮」、「離職率の低下」が期待され、ひいては「企業のイメージ向上」、「保険料の負担減少」へとつながります。
さらに、保険料の負担額が減ることにより、健康維持への投資ができ、企業イメージがUPすることで株価の上昇が見込まれるため、企業収益向上が考えられます。
また、企業が健康に投資することによって、「国民の生活の質の上昇」、「医療費の削減」につながり、結果として「社会の課題解決」になります。
このように「健康経営」は、好循環をもたらします。
「健康経営」の広がり
健康経営は現在、すそ野が広がりつつあります。
Sport in Lifeプロジェクト
「Sport in Lifeプロジェクト」はスポーツを行うことが生活習慣の一部となり、一人でも多くの人がスポーツに親しむ社会を実現し、健康で活力ある社会を目指すスポーツ庁が推進する取り組みで、企業、地方自治体、スポーツ団体、経済団体等で構成するコンソーシアムを設置することにより、加盟団体間の事例発信や情報共有を行い、スポーツ人口の拡大に努めています。
そして、「働き盛り世代」のスポーツの実施を促進し、スポーツに対する社会的機運の醸成を図ることを目的として、従業員の健康増進のためにスポーツの実施に向けた積極的な取組を行っている企業を「スポーツエールカンパニー2021」として、623社認定しました。
実際に、職場内で朝や昼、隙間時間にエクササイズを取り入れている企業や、歩数を競うイベントを開催している企業など、従業員の健康増進のためにスポーツの実施に向けた積極的な取り組みを行っている企業が多くあります。
事業場における労働者の健康保持増進のための指針
「事業場における労働者の健康保持増進のための指針」は、以前まで「個人」に重点を置いていましたが、指針改正後は「団体」への健康保持増進の視点が強化されました。
以前はすでに生活習慣上に課題がある労働者が対象とされていましたが、現在は課題のない労働者も対象とすることによって、多くの人が少しずつリスクを減らし、社会全体で多大な恩恵を得ることに注目しました。
そして、社会全体でより良い方向にシフトせせることを目指しています(ポピュレーションアプローチ)。
また、事業者と医療保険者とが連携した健康保持増進対策がより推進されるよう、会社と健康保険組合が連携し、従業員・家族の予防・健康づくりを効果的・効率的に実行する「コラボヘルス」の考え方が推進されています。
現在、政府や企業が一丸となり「健康経営」を進めています。
実際に2019年度と2020年度を比較すると、「健康経営優良企業」の申請数は6,095件から9,403件と約1.5倍の件数となり、そのうち7,934件が「健康経営優良企業」に認定されました。
この認定件数も前年度の約1.6倍となっています。
今後もより多くの企業が「健康経営」の取り組みに興味を示し、参加することが期待されます。
日本全体で「健康経営」に取り組むことで、社会の課題を解決し、好循環を生んでいけることを願いたいです。
<参考>
・ 特定非営利活動法人健康経営研究会
・ 経済産業省「健康投資ワーキンググループ」
・ 経済産業省「ヘルスケア産業」
・ スポーツ庁「Sport in Life」