2021年2月1日、厚生労働省より、情報通信技術を活用した特定保健指導の実施について、現行制度からの見直しが示されました。
特定保健指導とは、40~74歳の被保険者を対象にした健康診断(特定健康診査)で生活習慣病リスクが高いと判定された人が、所属する健康保険組合などの負担で受けることができる保健指導です。
今回の変更ポイントは、以下2点です。
変更点① ビデオ通話が可能な情報通信技術を活用した初回面接におけるグループ支援の実施を可能とする
変更点② 情報通信技術を活用した継続支援について、対面で行う場合と同等のポイントを算定する
コロナ禍の現状を踏まえ、オンラインツールを活用した保健指導がいっそう実施しやすくなるよう変更されたものと考えられます。
「産業保健新聞」を運営するドクタートラストでは特定保健指導サービスを実施しており、管理栄養士の筆者も普段は保健指導を行っています。
今回は、特定保健指導の実施内容の変更点のポイントとメリット・注意点をわかりやすく解説します。
従来との変更点① オンラインでのグループ指導が可能に
特定保健指導では、健診結果のリスク度合いに応じて積極的支援・動機づけ支援の2パターンに分けられます。
積極的支援該当者のほうがリスク度合いは高く、手厚い支援となります。
いずれも初回面談を行い、指導者(医師、保健師、管理栄養士など)と対象者で3~6か月間で体重・腹囲をどれくらい減らすかという具体的な減量目標と、そのために何をするか(行動目標)を設定します。
初回面談は、従来は個別指導(指導者:対象者=1:1)では対面・オンライン両方の指導が認められていましたが、グループ指導(指導者:対象者=1:2~8)では対面での指導が原則とされていました。
しかし、今回の改正では、集団での保健指導は難しいコロナ禍の現状を鑑み、オンラインでのグループ指導が可能となりました。
従来との変更点② オンラインの面談が対面での面談と同等の扱いに
初回面談終了後、積極的支援では3~6か月間、定期的に面談やメール、電話等で継続的な支援を行い、支援の形態や時間に応じてポイントを加算していきます。
対象者は3~6か月で合計180ポイント以上の支援を受け、終了となります。
今回、この継続支援において、オンラインの面談が対面での面談と同等の扱いになりました。
従来からオンラインの面談は可能でしたが、オンライン面談は加算されるポイントが少なく、対面での面談とくらべて長時間・高頻度の面談が必要でした。
ちなみに、動機づけ支援では必須とされる面談は初回面談の1回のみ。
3~6か月後の支援終了時に、期間内の取り組みと、体重や腹囲の変化を確認します。
特定保健指導におけるオンライン面談のメリット、注意点は?
オンラインの面談は感染予防として有効なのはもちろん、対象者にとっての保健指導への時間的負担の軽減・心理的なハードルも下がると考えられます。
自宅や職場から気軽に保健指導を受けることができるため、クリニックなど指導機関にわざわざ出向いたり、職場で会議室などを押さえる必要がないため、気軽に参加しやすくなるでしょう。
対面での指導と同等の扱いとなったことで、オンラインでも従来よりも短い時間で実施できるようになり、対象者にとっては拘束時間も少なくなります。
また、グループでのオンライン面談が可能になったことで、就業時間中に遠方の事業所の社員と同時に実施することもできるようになりました。
筆者は企業での対面での面談・オンラインでの面談の両方を実施していますが、事前にオンライン面談用の指導資料を用意し、Web会議システムで画面共有を使用したり、指導後にメールで資料送付を行ったりすることで、対面指導と遜色ない指導ができると感じます。
保健指導を受ける対象者の方が、「対面より気楽でいいです」と仰ることも少なくありません。
注意点としては、対面指導の場合は体重や腹囲を指導者と一緒にその場で測定することができますが、オンライン面談となると、対象者自身で測定し、自己申告してもらう形になることが一般的です。
体重計・メジャーの有無など、本人に測定できる環境があるかどうかは、事前の確認が必要でしょう。
遠隔での面接実施のための環境整備は、保険者(健康保険組合など)が行うよう定められています。
特定保健指導自体も、基本的に企業側に費用的負担はゼロ、もしくは少ないことが多いです。
冒頭でご紹介した記事にも記載されていますが、企業側の事務的な負担も少ないことが多いです。
従業員の生活習慣病リスク低減のために、これまで特定保健指導を実施していなかった企業の方も、これを機に実施を検討してみてはいかがでしょうか。
<関連資料>
厚生労働省「特定健康診査・特定保健指導の円滑な実施に向けた手引き(第3.2版)」
厚生労働省「情報通信技術を活用した特定保健指導の実施について」