産業保健新聞を読んでくださる皆様であれば、「EAPサービス」という言葉を一度は聞いたことがあると思います。
しかし、言葉は知っているけども、どういうサービスなのか知っているようで知らない方も少なくないでしょう。
本日は、産業カウンセラーとして日々感じる、EAPサービスのあり方について改めてお話します。
EAPサービスについて
そもそもEAPとは、Employee Assistance Program:従業員支援プログラムの略語です。
日本ではなく、1984年にアメリカ政府が公式な規定を作り、企業が取り組みを始めたものです。
アメリカでスタートしたひとつの理由としては、アルコールや薬物に依存し、業務に支障をきたす社員が増加したことが挙げられます。
EAPサービスの目的は、組織で働く従業員やその家族に対して、個人的な問題を解決するための専門的支援を提供することによって、従業員の業績や生産性の維持・向上なのです。
EAPサービスは誰が行うのか
EAPサービスは、大きく2つに分類されます。
企業内に常駐しているスタッフが従業員から相談を受ける内部EAPと、 外部のEAP提供会社に委託し、電話相談・対面相談を受けたりする外部EAPです。
中小企業や国内に複数拠点を持っている企業ですと、外部EAPを導入される方が効率的だと感じます。
また、変化が激しく情報過多で複数の役割を期待される現代社会では、悩みや課題に関しても非常に複雑で多岐にわたります。
この悩みや課題に対して、以下のような資格をもったスタッフが対応するケースが増えています。
・ 医療系のサポートが必要な場合は、産業医、精神科医、保健師等
・ 心理系のサポートが必要な場合は、公認心理師、臨床心理士、精神保健福祉士、社会福祉士等
・ ビジネス系のサポートが必要な場合は、キャリアコンサルタント、健康経営アドバイザー等
・ その他専門的なサポートが必要な場合は、睡眠改善アドバイザー、介護離職防止対策アドバイザー、両立支援コーディネーター等
具体的なEAP のサービス内容
国際EAP協会よると、一般的に以下のように定義されています。
① 電話サービス
② 対面相談サービス
③ 訪問カウンセリングサービス
④ マネジメント・コンサルテーション(メンタルな問題を抱える部下のケアについて上司への助言や対応方法の支援)
⑤ 専門機関(弁護士、医療機関、臨床 心理士、ファイナンシャル・プランナーなど)への紹介
⑥ 研修(メンタルへ ルスの研修講師)
⑦ 傷病休職者復職支援
⑧ ストレス診断
先程も説明したとおり、EAPは内部と外部の2つが存在していますが、私は外部機関が実施するほうが大きく効果を発揮するものだと考えております。
具体的なEAPサービス内容にもある、電話サービスや対面面談などを利用する際は、利用者側の気持ちとしては第三者の中立な立場の方に聞いて欲しい、といった気持ちが強くなる傾向があります。
内容がセンシティブになればなるほど、この傾向は強くなります。
外部EAPであれば、他の社員や職員に知られることなく相談をすることができます。
これは、企業や施設の中で完結されるメンタルヘルス対策にはないメリットと言えます。
また、従業員としては福利厚生として利用できるため、費用の自己負担がありませんし、サービス利用へのハードルが下がり、問題の早期発見・早期対応がしやすくなります。
「内部EAPが機能していない……」
「外部と提携しているがうまく機能していない……」
というお悩みがある場合は、ぜひこの機会に見直しをしてみてはいかがでしょうか。
<参考>
・ 日本EAP協会ホームページ