日本の労働生産性に関する意識調査から見る危機感と新たな可能性
- 2023/11/27
- 生産性向上
2023年10月3日。公益財団法人日本生産性本部から第2回「生産性課題に関するビジネスパーソンの意識調査」の調査結果が公表されました。
この調査は、労働生産性の現状認識や生産性向上の阻害要因、改善策等について、ビジネスパーソンの意識を定量的に把握し、生産性に関する議論を深めるための基礎資料とすることを目的として実施されたものです。
2回目の本調査では従業員規模300人以上の組織で働くビジネスパーソン2,804名を対象に、2023年8月にインターネットを通じて実施されました。
調査対象者は会長、社長、取締役、執行役員などの「経営層」604名、部長、課長などの「管理職層」1,099名、係長、主任などの「非管理職層」1,101名に分かれており、産業別にも分析が行われました。
調査結果のポイント
本記事では調査結果のポイントを4つご紹介します。
① 生産性への危機感は高い一方でわからないとの回答も目立ち役職で温度差がある
② 従来どおりの採用ができていない一方、デジタル技術で補う動きも見られる
③ 生成AI等新技術には前向きな意見が多いがトップマネジメント層からは懸念の声も上がった
④ イノベーション促進には人材育成、組織風土づくりに加え外部リソースへも期待
それでは、各項目の詳細を見ていきましょう
① 生産性への危機感
「経営層」では、日本の労働生産性が国際的に低迷していると感じている人が37.7%ともっとも多い結果となりました。
「管理職層」、「非管理職層」では、「やや危機感がある」の回答がそれぞれ、37.8%、35.4%と多かった一方で「わからない」の回答も目立ちました。
役職が上がるにつれて「かなり危機感がある」と回答する人の割合が高く、逆に「わからない」と回答する人の割合は低い結果となり、役職間での温度差があることがわかりました。
② 人手不足の影響
人手不足の影響について、全役職、全産業共通で「従来採用できていたレベルの人材が採用できていない」の回答が最も多く、3割以上に達しました。
その一方で、「大きな影響は出ていない」の回答も管理職・非管理職と全産業共通で2割以上となりました。
また、デジタル技術の進化が「人手不足解消に貢献している」の回答も一定程度あり、デジタル技術の活用が人材不足の解決に貢献していることが考えられます。
③ 生成AI等新技術に対する意識
生成AI等の新技術に対する意識では、全役職・全産業共通で「無駄な作業・業務が減り、ワークライフバランスが改善する」の回答が最も多い結果となりました。
しかし、経営層の中では自分の仕事が代替される脅威を感じる人が13.1%と他の役職よりも多くなりました。
また、経営層の中でも「トップマネジメント(会長、社長など)」と「経営幹部」に分けてみてみると、「トップマネジメント」では、「社内の事業構造が大きく変わり、影響を受ける従業員が増える」という回答が「無駄な作業・業務が減り、ワークライフバランスが改善する」という回答と同率で最多となった一方で、「経営幹部」では、「より付加価値の高い仕事に集中できるようになる」が2番目に多い結果となり、経営層間でも考え方に差異がある結果となりました。
④ イノベーションの促進
イノベーションを促進するためには、「イノベーションを担う人材の育成」が最も必要とされ、次いで「チャレンジを支援・奨励する組織風土づくり」が続きましたが「経営層」のうち「トップマネジメント」では、どちらも他の役職に比べて低い割合となり、代わりに外国人を含む高度専門人材の活用や産学連携の強化に関心が高く、外部リソースの活用を模索していることがわかりました。
調査結果のまとめ
この調査結果から、日本において労働生産性の低下に対する危機感が高まっていることが明らかとなりました。
まずはこの現状を認識して対策を検討することが改善への第一歩になるのではないでしょうか。
しかし、危機感が高まっている一方で、生成AIなどの新技術に対しては多くのビジネスパーソンが前向きな回答をしており、無駄な業務の削減、ワークライフバランスの改善などを通して生産性を向上させる新たな可能性を見出していることもわかりました。
また、イノベーションの促進には人材の育成とチャレンジできる風土づくりが必要という結果とともに、トップマネジメント層は外部リソースに関心を示していることから、日本のみならず国際的な協力などが生産性の課題解消に貢献する可能性があることがわかりました。
現在、日本は生産性の課題に直面していますが、この調査結果を受けて一人一人が各々の目線で生産性について考えてみてはいかがでしょうか。
<参考>
公益財団法人日本生産性本部「第2回 生産性課題に関するビジネスパーソンの意識調査」