パワハラ防止法で企業が行う義務
2020年6月1日、「職場におけるパワーハラスメント対策」が義務づけられました。
大企業は2020年6月から下記の具体的な防止措置が求められています(中小企業は努力義務期間を経た2022年4月1日から)。
● 職場におけるパワーハラスメントに対する方針・規定を明確化し、労働者への周知・啓発を行うこと
● 労働者からの相談・苦情に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備
※ 相談窓口の設置および労働者への周知
● パワーハラスメントに係る事実関係の迅速かつ正確な確認および適正な対処
※ 再発防止に向けた措置まで行うこと
● 上記とあわせて講ずべき「個人情報保護」措置
● パワーハラスメントを防止するために企業が取り組むことが望ましいとされている措置
・ 相談窓口の設置(パワハラ・セクハラを含む)
・ コミュニケーションおよびマネジメント研修
・ 職場環境および組織風土の改善
客観的にみて、業務上必要かつ相当な範囲で行われる、適正な業務指示や指導については「職場におけるパワーハラスメント」には該当しません。
相談窓口の設置と利用率
2019年10月に、一般社団法人日本産業カウンセラー協会が公開した「2019年度働く人の電話相談室」によると、相談者の性別は、女性:60.58%、男性39.42%と、女性の相談件数が男性の相談件数を上回っています。
また、年齢別では20代:5.18%、30代:12.23%、40代:19.42%、50代:29.64%、60代12.09%と、ちょうど山のような構図が見えてきます。
相談内容は、職場の悩み:36.77%、メンタル不調・病気の悩み:16.08%、自分自身に関する悩み:11.64%、キャリアに関する悩み:11.39%、家族に関する悩み:9.88%の順です。
やはり1日の大半を過ごす職場に関する相談が多いですね。
このことからも、企業が自浄作用を持つことは必要不可欠であると考えられます。
従業員に相談窓口を活用してもらうには
経営企画部担当者や人事担当者の多くが、相談内容を「より働きやすい環境の整備」や「事態を未然に防ぐ」を目的に活用したいと考えています。
ただ、せっかく社内で相談窓口を設置しても相談件数が思うように増えない、といったご相談を多くいただきます。
原因は「人事に相談することで自分の昇進・給与査定に響くのではないか」「自分が話した情報がどこまで秘匿されるのか」といった心理的不安が挙げられます。
そのため、社内で相談窓口を設置する際には下記内容を労働者に向けて社内周知することが重要です。
【周知するべき項目】
・ 担当先
・ 匿名性の確保
・ 個人情報の取り扱い
・ 相談内容の取扱いフローの明確化
・ 相談窓口でどのような対応をされるか
相談窓口設置に向けて、事前準備と事後措置
以上を踏まえ、企業は以下の点に留意しながら職場改善に取り組んでいくことがのぞましいと考えられます。
● ハラスメントが起きない職場環境作り・意識改革の実施(未然の防止)
● ハラスメント発生後の適正な措置(事実確認~適正な対処)
● ハラスメント相談窓口担当者の研修(二次被害を起こさないために)
<参考>
厚生労働省「職場におけるハラスメント関係指針」
厚生労働省あかるい職場応援団「パワハラ対策7つのメニュー」
総務省消防庁「相談担当者のためのテキスト」
一般社団法人日本産業カウンセラー協会「2019年度「働く人の電話相談室」相談内容集計表」