労働基準関係法令違反リストから学ぼう!
- 2017/6/8
- 衛生管理者
ブラック企業とは?!
先日、厚生労働省から、一般的には「ブラック企業一覧」と呼ばれる「労働基準関係法令違反に係る公表事案」が公表されました。
よく耳にする「ブラック企業」という言葉ですが、その定義は何でしょうか?
厚生労働省が運営するWEBサイト「確かめよう労働条件」のQ&Aには次の記載があります。
Q:「ブラック企業」ってどんな会社なの?
A:厚生労働省においては、「ブラック企業」について定義していません。
しかし、一般的な特徴として、
① 労働者に対し極端な長時間労働やノルマを課す
② 賃金不払残業やパワーハラスメントが横行するなど企業全体のコンプライアンス意識が低い
③ ②③のような状況下で労働者に対し過度の選別を行う
などと言われています。
※また注釈には「厚生労働省では、ブラック企業という言葉は使わず、その問題点を端的に表す表現として「若者の使い捨てが疑われる企業等」と称して対策を展開しています。
具体的には「過重な長時間労働の改善や、パワーハラスメントの予防・解決に向けた取り組み等を実施しています。」と示されています。
内閣府が主導する施策であるアベノミクス第2ステージでは、「日本再興戦略改定2015」の柱のひとつとして、個人の潜在力の徹底的な磨き上げとして「長時間労働是正による労働の“質”の向上」を挙げています。
また、長時間労働に起因する従業員の自殺をマスコミが大きく取り上げていることもあり、とかく「ブラック企業=過重労働企業」といったイメージをもちやすいのが現状です。
このQ&Aにも「過重な長時間労働の改善」が第一項目として記載されています。
違法な長時間労働だけが問題ではない
しかし、労働基準関連法違反は、長時間労働やハラスメントだけではありません。
現時点で公表された事案は334件あります。
公表された事案を見ていくと、
・工事現場において、高さ約4mの足場上で手すり等を設けることなく、労働者に作業させた事案(労働安全衛生法第20条、労働安全衛生規則第563条 違反)
・2件の労働災害について、「事務所敷 地内で脚立から転落して怪我をした」 と虚偽の報告を行った事案(労働安全衛生法第100条、労働安全衛生規則第97条 違反)
・無資格の労働者にトラクターショベルを運転させた事案(労働安全衛生法第61条、労働安全衛生法施行令第20条 労働安全衛生規則第41条 違反)
・労働災害により4日以上休業したにもかかわらず労働者死傷病報告書を提出していなかった事案(労働安全衛生法第100条 労働安全衛生規則第97条 違反)等、長時間労働以外の違反による事案も多数公表されています。
なお、36協定の延長時間を超える違法な時間外・休日労働事案(労働基準法第32条 違反)は31件あり、賃金未払いに関わる事案(労働基準法第24条、労働基準法第37条、最低賃金法第4条 違反)は145件、となっています。
<参考となる法律一覧>
※労働基準法
※労働安全衛生法
※労働安全衛生規則
※労働安全衛生規則施行令
※最低賃金法
リストに載ると企業側に大きなダメージも
このリストは毎月更新され、状況が改善された場合などを除き、1年間という長期間にわたり厚生労働省のホームページに掲載されます。
労働基準関連法令は、従業員の健康・安全を守るために、非常に重要な法律です。
そのため、違反を犯し、過失を公に公表されることで企業側が受けるダメージは大きく、
過去に企業名を公表された大企業では、新卒採用者の激減や、職場環境改善のための店舗の閉鎖、それに伴う経営赤字など、大きな経営ダメージを受けています。
少なくとも事業者側に今求められているのは、今回公表されたリストにある法令違反にあたる行為が行われていないか確認し、そして法令順守を徹底することです。
ブラック企業リストに載るか載らないかは、事業者次第です。